005
楽しい時間はあっという間に過ぎ、ファビオラは最終学年となった。クラスもそのまま二組に。もちろんシェリーも同じ。少し入れ替わりがあったが、ほとんど同じ顔ぶれとなった。
三年に進級してファビオラには、一つの懸案事項があった。妹ユリアナの入学である。姉の様に、ファビオラの付近をチョロチョロされたら困ると思っていた。しかし意外にも、ファビオラが築いてあげた友人と同じクラスになった様で、それなりに楽しくやっていた。
クラスが5組になったのも幸いした。それを聞いたファビオラは、もうちょっと頑張れよと思ったが·····。ずば抜けた容姿が相俟って、男子生徒から姫の様な扱いを受け上手くやっているらしい。5組だと高位貴族もいないし、そこまで社交にピリピリする必要もない。
入学当初は、三年の間でもめちゃめちゃ可愛い子が入学したと噂に上った。姉の時の様に比較されたくないファビオラは、一切知らん顔を通したが·····。
一年が使う場所には、近寄らない様に徹底した。一年が三年の教室に来るのは、ハードルが高いのか妹の訪問もない。拍子抜けする程、妹に関わる事無く学園生活を送る事ができ、ファビオラはホッとしていた。
シェリーの他にも、三組から上がってきた男子生徒と仲良くなり更に学園生活が楽しくなった。
新たに仲良くなった男子生徒は、シスト ウォーカーと言い子爵家の次男。茶髪で明るい赤茶色の瞳。ワイルドな面差しで女子生徒に人気。クラスのムードメーカーで、いつも誰かと喋っている。隣の席になって、忘れた教科書を見せてあげたのを切っ掛けに仲良くなった。お互い、同じ境遇の子爵家で気を遣う事なくざっくばらんに何でも話せる。
朝の登校時間。ファビオラは、いつもの様に本を読んで先生が来るのを待っていた。登校時間ギリギリに隣の席に歩いてくるシストに気がつく。
「おはよーシスト。今日もギリギリだね」
本から目を離して、シストの方を向き挨拶をした。
「あー、ファビオラおはよー」
シストは、欠伸をしながら眠たそうに席に着く。
「何だか、眠たそうだね。大丈夫?」
「あー、ちょっと昨日、友達と夜遅くまで話し込んでて·····。まぁー、大丈夫だ」
「なら、いいけど。居眠りして、先生に怒られても知らないよ」
ファビオラは、意地悪な笑顔を浮かべて揶揄う。
「なんだよー。その時は、怒られる前に起こせよ。なっ、ファビオラちゃん!」
と言いながら、笑顔でファビオラの背中をバシバシ叩く。
「痛いし!ちゃんとか気持ち悪い!」
ファビオラは、ぷいっとシストとは逆の方を向いて顔を背ける。頬がポッと赤くなる。
「なんだよー、怒るなよ」
シストはそう言いながら、今度は頭に手を乗せてポンポンと優しく叩いた。ファビオラの顔は益々赤くなり、バレない様にシスト側の腕を机に立てて手で顔を覆った。
教室の扉がガラッガラッと開き、先生が入って来て会話はそこまでとなった。
ファビオラの心の中は、ドキドキで爆発寸前。先生が来てくれて助かったー。こんな赤い顔なんて見せられない!
ファビオラは、また恋をしていた。恋とは、気づいたら落ちているものである。





