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WORLD END―終焉の鐘の音―  作者: 成瀬瑛理
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第5章―死と恐怖― 1

 ――男が気絶したのはこれで何回目だろう。年配の看守の男の名はオーチス。彼はクロビスに疑いをかけられて、尋問する為に拷問部屋に無理矢理連れて来られた。異臭と血生臭い臭いが漂った部屋の中で、彼は拷問に耐えていた。


 オーチスが気を失うと、頭から冷えた水をギュータスがバシャッと浴びせた。冷たい水を頭から浴びせられたオーチスは、かろうじて意識を保っていた。彼の両手を鎖に繋がれて、背中を鞭で何度も打たれた。激しく鞭で打たれたオーチスの背中は腫れ上がり、見るも無惨な姿であった。背中は流血し始めて、そのまま地面にポタポタと血が流れた。オーチスは必死で自分の身の潔白を証明しようとした。しかし、クロビスは容赦なく彼の背中を鞭で何度も打ち続けた。


「なんたる失態だ……! 貴様のせいで私の面目が丸潰れじゃないか! 親父に何て説明すればいいのか答えろ、この役立たずの能無しがっ!」


 クロビスはオーチスに罵倒を浴びせながら背中を鞭打ちし続けた。オーチスは鞭に打たれながらクロビスに必死に訴えた。


「信じて下さいクロビス様、自分は決して囚人を逃がしたりはしていません! 何かの誤解です!」


「ええい、黙れこの役立たず! 貴様は看守の癖にまともに牢屋の一つも見張れないのか!?」


 クロビスは鞭をヒュンと高く振りかざして、思いっきりオーチスの背中を鞭で叩いた。あまりの痛みにオーチスは叫んだ。



『うわあああああああああああっっ!!』



 クロビスの仕打ちはさらに酷くなっていった。しかし、それを止める者は誰もいなかった。気を失う彼にギュータスは、再び冷たい水をバケツで頭から浴びせたのだった。なかなか白状しないオーチスにクロビスは痺れをきらした。


「生意気な奴だ、こんなに鞭で打ち続けてもなかなか白状しないとは……!」


 クロビスはそう言って腹を立てると持っている鞭を床に投げつけた。怒る様子の彼にケイバーはある物を持ってきた。


「またオーチスの野郎気を失ったのか? だったらこれで目を覚ましてやるか、きっと頭の中もスッキリするぜ?」


 ケイバーはにやけた顔でそう言うと、気を失うオーチスの側に近づいて、傷口に塩を塗った。体が燃える様な突き刺す痛みにオーチスは突如、悲鳴をあげた。


『やめろぉおおおおおおーーっ!!』


 痛みに絶叫する彼の側でジャントゥーユは叫び声に喜んだ。


「もっと鳴け! もっと鳴け!」


 ジャントゥーユは口からヨダレを垂らしながら痛みに絶叫するオーチスを側で見ていたのだった。クロビスは新しい玩具にニャリと笑った。


「ほう、これは良い! なかなか面白い……!」


 クロビスは新しい玩具に鬼畜の表情を浮かべた。そして、彼の傷口に塩を塗り込ませながら尋問を続けた。痛みで叫ぶオーチスとは対照に、彼はいたって冷静だった。


「何で牢屋の鉄格子が腐っていた? 囚人を逃がす為にお前がワザと腐らせたんじゃないのか? 手引きは誰だ、今すぐ答えろ!」


 クロビスはそう言うと傷口にさらに塩を塗った。オーチスは、激痛に身を震わせながら答えた。


「て、手引きなど私は知りません ……! 私は決して囚人を逃がしたりはしていません、どうか信じて下さい!」


 オーチスは必死にそう訴えた。するとジャントゥーユが、彼を拷問したい衝動に抑えられなくなり、熱々に熱した焼きごてでオーチスの脇腹にそれをいきなり押しつけた。皮膚を焼くような激痛にオーチスは苦しんでもがいた。その様子を壊れた人間のような表情でジャントゥーユは眺めた。


「イヒヒヒヒ……ウへへへ……」


 ジャントゥーユは口からヨダレを垂らしながら、苦痛の表情を浮かべる彼を眺めた。あまりの激しい痛みに耐えられなくなった彼は、尿失禁して完全に意識を失った。クロビスは気絶したオーチスに向かって舌打ちすると、ジャントゥーユの顔を見るなり、片手で顔をひっぱたいた。突然叩かれると、彼は怯える仕草でケイバーの後ろに直ぐに隠れた。クロビスは怒りを露にしたまま、ギュータスに次の指示をだした。


「鞭はもういい、コイツを椅子に座らせろ…――!」


 クロビスの命令にギュータスは無言で頷くと、立ったまま拘束されている彼の両手の鎖を外して椅子に座らせた。そして、ケイバーがオーチスの両手を椅子に備えてある輪っかの拘束手錠で両手をガチリと嵌めた。こうして、狂気が渦巻くような尋問はまだまだ続いた――。


 気を失ったオーチスは、座らされた椅子の上でハッと意識を取り戻した。気がつくと自分の周りに恐怖の4人の看守が囲んでいるのが目に入った。ケイバーは持っている林檎をひとかじりするとクロビスに話しかけた。


「なあ、こいつどうする? 口を割らないなら一層のこと手っとり早く腸を引き裂いて白状させるか?」


 ケイバーはそう言うと自分の持っているナイフを舌でベロリと、猟奇的な表情で舐めた。彼がそう話すと、ギュータスは側にあった斧を持った。


「おいおい、待てよ。そんなナイフなんかよりもこっちの斧で奴の首をスパッとはねるのはどうだ? 最近は御無沙汰だからな、この斧がはやく新鮮な血を吸いたくてたまらねぇんだよ。なあ、オーチスの野郎をこの斧で一思いに殺らせてくれないか?」


 ギュータスは鬼畜な顔を浮かべながら、クロビスにそう言ったのだった。


 ギュータスが斧を持ったまま、ウズウズしていると、ジャントゥーユが横から口を挟んだ。


「ギュータス……オーチス殺るなら……俺に爪を剥がさせろ……! 俺、オーチスの爪……欲しい……!」


 ジャントゥーユはそう言うと、今にも彼の爪を剥がすような雰囲気を出していた。そこで収拾がつかなくなると、クロビスは自分の爪を磨ぎながら3人の前で呆れて話した。


「フン、お前らの頭は殺戮のことしか考えてないのか? オーチスを白状させる為にも、少しは頭を使ったらどうだ?」


 クロビスが呆れた表情でそう言うと、ジャントゥーユは自分の頭を抱え込んだ。


「おっ俺……計算苦手、で……でも……爪欲しい……! うううっ……ど、どうすれば……!?」


 ジャントゥーユはそう言って自分の頭を拳で叩いた。ギュータスはそんなイカれた彼を見ながら、隣でバカ笑いをしたのだった。


「アハハハッ、やっぱりコイツ馬鹿だよな!? 前々から馬鹿だと思っていたがやっぱりコイツ馬鹿だぜ! アハハハハハハッ!」


 自分の隣で彼がバカ笑いをすると、ジャントゥーユは直ぐにムキになって言い返した。


「うるさい、俺は馬鹿じゃない……!」


 ジャントゥーユはそう言い返すが、ギュータスはケラケラと可笑しそうにまだ笑っていた。オーチスは椅子に座ったまま、まだ頭がボンヤリとしていた。自分の目の前では、2人の看守が言い争っていた。クロビスは自分の爪を磨き終えると2人に話した。


「ふん、オーチスが白状しないようであれば後は好きにしてもいいぞ…――!」


 クロビスは冷たく彼らにそう言うと、ケイバーにナイフをよこすように片手でジェスチャーしたのだった。


「そのナイフを貸せ!」


 ケイバーはクロビスに言われたとおり、ナイフをポンと手渡した。


「……ホラよ!」


 クロビスはオーチスの目の前でナイフをギラリとさせながら黙って見つめると、次の瞬間に左脚にナイフを勢いよく突き刺した。左脚を鋭いナイフで刺されたオーチスは、突然の痛みと激痛に叫んだ。激痛に思わず叫ぶと冷酷な看守4人はニヤニヤしながら笑ったのだった。


 オーチスの額からは異常なほどの大量な冷や汗が滲み出た。彼の中を支配したのは、それは『恐怖』だった。狂気が渦巻く空気の中でオーチスは、椅子に座らされたまま体をガクガクと小刻みに震わせた。左脚には鋭いナイフが突き刺さったままだった。左脚から血が滲み出ると、床に血がポタポタと滴り落ちた。顔を恐怖にこわばらせながらオーチスは震えあがった。そんな彼を4人は冷酷に笑い続けたのだった。クロビスはわざと彼の左脚に刺さっているナイフをさらに奥にグッと刺した。オーチスはあまりの痛みに椅子に座ったまま、叫び続けた。


 再び血が床にポタポタと流れ落ちると、ジャントゥーユはそれを人指し指につけてペロリと舐めた。


「……うまい!」


 そう言うとジャントゥーユは、再び指先についた血を美味しそうにペロペロと舐めたのだった。オーチスはジャントゥーユが自分の血を指先につけて旨そうに舐めている光景をみて、背筋を凍らせて「ヒィッ!」と思わず叫んだ。


「たのむ、もう許してくれ……! 私は囚人を逃がしたりはしていない……!」


 オーチスはそう言って訴えると、椅子に座ったまま体を小刻みにガクガクと震わせた。そんな言葉を彼は信じていない様子だった。クロビスは椅子をオーチスの目の前に置くと、冷酷な顔をしながら座った。そして、優雅に片方の足を組むと冷たく話しかけた。


「……私は知らない、知りませんでしたで、簡単に済むと思うのかオーチス?」


 クロビスはそう言うとオーチスの左脚に刺したナイフを片手で弄りまわした。鬼畜で冷酷な表情を浮かべるクロビスに、彼は全身が恐怖で震えあがった。


「責任逃れは出来ないぞオーチス! あそこのエリアは、お前が担当だろ!? 貴様は一体何を企んでいる! 今すぐ答えろ!」


 クロビスはそう良い放つとオーチスの左脚に刺したナイフをわざと抜き取ったのだった。その瞬間、ナイフを抜き取られると左脚の傷口からは大量な血が一気に溢れ出た。



「おい、素直に白状しないとお前の家族がどうなってもいいのか――?」



 クロビスの意味深な言葉にオーチスは顔が真っ青になった。そして、その言葉に自分の頭を真っ白にさせると慌てて言い返したのだった。


『たっ頼む、やめてくれ……! かっ、家族には…! 家族にだけは、手を出さないでくれ……!』


 オーチスは悲痛な叫び声でクロビスに訴えたのだった。しかし、彼は冷酷な顔をしながら言い返した。


「ふん、貴様の家族がどうなろうが私には関係い。今聞きたい事は逃げた囚人の行方だ! 私はこのタルタロスの責任者の息子だぞ!? 親父にこの失態をどう報告すればいいのか言ってみろっ!!」


 クロビスはそう言い放つと自分の右手の革手袋をはずして、彼の顔を躊躇いもなくバシッと叩いた。乾いた音が拷問部屋に響いた。オーチスは震える様に怒りを込み上げたのだった。彼が鋭く睨み付けると、クロビスは不敵な笑いを浮かべた。


「その目は何だオーチス。お前には囚人を逃がした疑いがかけられていることを忘れたのか――?」


 クロビスはそう言うと、彼の前で皮肉混じりに笑った。


「お前はあそこのエリアの担当なのに、不覚にも囚人を逃がした。例えお前が逃がしていなくても、今回の責任はお前にある。それについてはどう弁解する気だ?」


 彼がそのことを言うと、オーチスは自分の唇を噛みしめながら謝罪した。


「た、大変申し訳ありませんでした……! 今回の責任は私にあります……! ど、どうかお許し下さい…――!」


 彼がそう言って深々と謝るとクロビスはそこで突然、大きな声を出して高笑いをした。そして、いきなりオーチスの頭を鷲掴みしたのだった。


「馬鹿め、それで許されるとおもったか!」


 クロビスはそう言うと、ジャントゥーユにオーチスの爪を一つ剥がしてもいいと指示をだした。ジャントゥーユはそれを聞くなり、ニタニタと笑いながら爪を剥がす器具を持って彼に近づいた。


「ウへへへ……いいのかクロビス……? 俺、オーチスの爪欲しい……!」


 ジャントゥーユはそう言うと、オーチスの周りを怪しく歩いて爪を剥がす器具をカチカチ鳴らせて歩いたのだった。突然の仕打ちに対してオーチスは、身も心も恐怖に震えあがった。


『ヒィイイイイッ!!』


 恐怖に震えるオーチスの表情を見ながらジャントゥーユは、ニタニタしながら不気味に笑った。そして、わざとらしく鋭利な器具をオーチスの目の前でカチカチ鳴らせたのだった。クロビスは冷酷な表情をしながらジャントゥーユに一言話した。


「全部は剥がすなよ……!」


 クロビスからそう指示を受けると、ジャントゥーユは頷いた。


「ああ、わかった…!」


 オーチスは自分の身に起きる恐怖に震え上がると、その場で喚き声を上げ始めた。そんなこともお構い無しにジャントゥーユは事を始めた。オーチスは椅子に座らされて、身動きがとれないでいた。その場から必死に逃げようとしても逃げれずに、彼は絶望感に打ちのめされたのだった。


「一体何故です……! 何故こんな仕打ちをなさるのですか……!?」


 必死に訴えてくるオーチスに対して、クロビスは反応すらしなかった。ジャントゥーユは鋭利な刃先を爪の隙間にいれると次の瞬間、爪をベキッと剥がしたのだった。先が尖った鋭利な器具は歪な音をたてながら彼の爪を糸も簡単に剥がした。とてつもない痛みに彼は、椅子に座らされたまま絶叫して喚いた。


『うわあああああああああっっ!! やっ、やめろ……! やめてくれぇーーっ!!』


 オーチスは椅子の上で痛みにもがき苦しんだ。その様子をケイバーは林檎を食べながら見ていた。ギュータスは、もがき苦しむ彼を見るとそばでニヤニヤしながら笑った。そして、クロビスは冷酷な表情を浮かべながら、苦しむ彼を上から見下ろしたのだった。









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