表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WORLD END―終焉の鐘の音―  作者: 成瀬瑛理
6/16

第4章―狂気の沙汰―

 その日、逃げた囚人の男は、とうとう見つかることはなかった。全ての部屋を看守全員が見回りして探しても男は見つからず、まるで雲隠れするような奇妙な事態だった。クロビスは椅子に座ると、机の上にあった書類を片手で払った。


バサッ!


 はたかれた書類が辺り一面に舞い上がり、はらはらと床に落ちた。


バンッ!


 クロビスは拳で机を思いきり叩くと、怒りをぶつけて怒鳴った。


『なぜ見つからない…!? こんなにさがしても見つからないのは、一体どう言う事だ……!!』


 クロビスがそう言うのも無理はなかった。要塞の様なタルタロスの牢獄は、外から簡単には侵入できない作りになっていた。中からも簡単には脱走は出来ない、迷宮のような造りでもある。


 長年勤めている看守ですら、たまに道に迷ってしまうような複雑な構造になっていた。さらに一ヶ所だけ重要な扉には、クロビスにしか開けれない扉があった。そこを突破しなくては恐らく外から抜け出すのは無理な話だった。クロビスの中では、直ぐに見つかると思っていた。だが、日が落ちて夜になっても見つからない不足の事態にクロビスは、自分の爪をギリギリと噛んだのだった。


  クロビスは怒りに満ちると、自分の部屋に飾ってある装飾品を手当たり次第に壊し始めた。そして、部屋をメチャクチャに荒らすと呟いた。


「ええい、この失態どうしてくれようか!? これでは私が親父に殺される……! ひょっとしらアイツはどこかの回し者かもしれない……!」


 クロビスは立ちながらブツブツと何かを呟いた。そして、不意に何かを思いつくと他の看守を部屋に呼び寄せたのだった。そして、ギュータスとケイバーとジャントゥーユを自分の部屋に越させるように命令した。まもなくして3人は他の看守に呼ばれると彼の部屋に訪れた。ケイバーは部屋に入って早々に尋ねた。



「俺達を呼んでなんの用だ。みつかったのかよクロビス――?」


 ケイバーがそう言うとクロビスは3人に言った。


「さっきの看守に尋問を行う、お前達は拷問部屋にさきに行ってろ!」


 クロビスがそう言うと3人は頷いて返事をした。


「拷問かぁ? へっ、久しぶりに腕が鳴るぜぇ……」


 ギュータスはそう言うと狂気染みた笑いをした。ジャントゥーユは、口からだらしないヨダレを垂らしながら話した。


「拷問……拷問……グヘヘヘ……俺、拷問……好きだ……! 叫び声聞きたい……早くやろう……!」


 ジャントゥーユはそう言うと、誰よりもさきに拷問部屋へと向かって行った。その後をギュータスが追いかけに行った。


「おい待てよ、お前だけさきに抜け駆けは許さないぜ!」


 既にギュータスとジャントゥーユは、あの看守を拷問する気満々だった。2人が先に部屋を出て行くと、ケイバーは不意にクロビスに尋ねた。


「――ところでリオファーレの姿が見えないが、奴は来ないのか?」


 ケイバーが何気なく尋ねると、クロビスは不機嫌な顔で答えた。


「アイツは来ない、私がそうしたんだ! それにヤツは好かん! アイツを見ていると私がイライラするんだ! それにさっきみたいにアイツにまた邪魔されたらこっちがたまったもんじゃない!」


 クロビスは感情的になりながらケイバーにそう言うと、グラスに赤ワインを注いで一口飲んだ。そして、再びイラつくと持っていた飲みかけのワイングラスを壁にめがけて投げつけ割ったのだった。


「チッ、あの偽善者め……! いつか思い知らせてやる……!」


 彼はそう言うと、帽子を被って警棒を持った。ケイバーはカッカするクロビスを見ると、後ろからわざとらしく抱きついてきた。


「まあ、まあ、そんなカッカするなよクロビス。チャンスはいくらだってあるんだ。いつか2人でアイツをしめようぜ?」


 ケイバーは悪意に満ちた顔でそう話すと、クロビスはゆっくりと後ろを振り向いた。


「俺はアイツの真っ白な肌を引き裂いて、全身の皮を剥いでやりたいぜ。そしたらきっと楽しいだろうな」


 ケイバーが楽しそうに話すと、クロビス一言言い返した。


「一つ貴様に言っておく、アイツは私の獲物だ。つまりお楽しみは1人で十分だってことだ。解ったか?」


 クロビスはそう言うと警棒で、ケイバーの顎を上にクイッとあげて自分の力を示した。


「無駄口は済んだかケイバー? 私に馴れ馴れしく触ると、その指を全部へし折って後悔させてやるぞ!」


 クロビスが自分の権力を誇示してそう言うと、ケイバーは大人しく彼から離れた。そして、両手をポケットに突っ込んで一言返事をすると、足早に退散して部屋から出て行ったのだった。



「フン、異常者め……!」



 クロビスは蔑んだ目で言葉を吐くと、彼に触られた肩を手で軽くはたいた。そして、警棒と鞭を腰に装備してから自分の部屋を出て行った。ひろい廊下にはカツーン カツーン と、恐怖の靴の足音がタルタロスの牢獄の中に響いたのだった――。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ