ニート異世界へ転生する
いわゆるFランク大学を卒業後,就職氷河期真っただ中,就活に失敗した俺こと宮澤佳依は,昼夜逆転,だれにも会わないからと風呂には入らず,趣味以外のことで,部屋から出ない.いわゆるくそヒキニート生活6年目に突入した.
子供部屋から出ない俺が一日にやることなんてたかが知れている.昼過ぎに起きて,アニメ見てゲーム,しこって寝るの繰り返し.ただそれだけだ.
夏のある日,新作ゲームが発売して,初回限定版を求めて俺は重い腰をあげてゲームショップへ行った.
「あついな」
普段引きこもっている俺にとって耐えきれない厚さの夏の日,意識がもうろうとしながらゲームを買いに来たことを公開していたその時,運転手はラリっているのか,車の外からでも聞こえる大きな声で発狂していた,その暴走した車は歩道へと突っ込み俺を轢いた.
意識が...なくなる....周囲の人々が慌てふためいていることだけがわかる.俺の意識は徐々になくな….俺の人生はなんて無意味なものだったのか,生まれてきた意味は果たして何であったのか.意識がなくなる最後にそんなことを考えた.
あれ,意識がある.俺は秋葉原で車に引かれたはずじゃ.意識が覚醒した.死んだはずの俺は草原にいた.
「ここはどこだ」
日本に暮らしていて,文化活動にいそしんでいるニートならみんなわかる.
「俺は異世界転生したのか」
しかし,見渡す限り草と木が生えている草原だ.建物らしき建物は見渡らないザ・草原に俺は目覚めたのだった.
「これからどうするんだ」
このような状態で,二年間,自室に引きこもっていたニートができることなんてない.と思ったが,俺の体は若返ったのか,長年のニート生活で培ってきた老廃物がすべて排出されたかの如く,野原を走り回れる程度には身軽になっていた.
「なんだこれ,俺の体が若くなってる」
手足を見る限り10年前,高校生と同等程度には,若返っていたのだった.
「これからどうすれば良いのか」
見渡す限り草原.何をすればわからない俺は,方向もわからず,とりあえず,前へと歩いた.
三日を過ぎたころ,俺は力尽きていた.
「腹減ったな,こればっかしは母に感謝しないとな」
自室に引きこもっているときも,毎日ご飯をつくってくれた.当時は,就職やバイトについていろいろ言ってきてうるさいと思っていたが,今更ではあるが,家族への感謝心で心は満たされた.
「また,死んでしまうのか」
腹が減って体力も尽き動けなくなった俺は,横になりそっと目を閉じた....
「ぱぱぁひとがたおれてるよぉ」
「これは大変だ」
気が付くと俺はベッドの上にいた.
「ぱぱぁおにいちゃんのめがさめたよぉ」
明らかに,日本語を話しているが,どう見ても,日本人には見えない金髪碧眼の少女,いや幼女が俺の横にいた.
「俺はどうしてここに,助けてくれたのですか?」
「目覚めたのか,体は大丈夫か?」
「倒れている人がいて,助けないやつがいるか」
屈強な男が俺に問いかけた.
「大丈夫です.あの,ありがとうございました」
「例には及ばない,ここに連れてきただけだからな」
どうやら俺はこの幼女と男に助けられたようだ.
「わたしメイファ,おにいちゃんなまえなんていうの?」
幼女に話しかけられた.6年も自室に引きこもっていたニート,日本では家族やコンビニの店員とすらもまともに話せなかった俺だが.なぜかすんなり言葉が出てきて.
「おれ,俺の名前は宮澤佳依」
「へんななまえのおにいちゃん」
ここでは,俺の名前は変な名前なのか.
「おにいちゃんのために,わたし,ごはんをつくったの.たべて」
そういって,メイファは俺に野菜のスープとパンを差し出した.
差し出されたスープに移った自分の顔を見てやはり,若返ったのだと確信した.
3日もご飯を食べていなかった,極限に腹を空かせていた俺は.いただいた食事を瞬く間に食べた.
食事をして,睡眠をとった俺は体調を取り戻し,ベッドから立ち上がった.
「この度は助けてくれて本当にありがとうございました」
再度,男と幼女にお礼をした.
「礼はいらないさ,兄ちゃんがもし困っている人を見つけたら助けてやんな」
なんて良い人なんだ,この感謝死ぬまで忘れない.
メイファはかわいい笑顔で俺を見上げて.
「わたしがみつけたんだよ」
「ありがとう」
しかし,これからどうすればよいのか,行く当ては果たしてあるのか.
男は冗談じみた口調でこう言った.
「兄ちゃんどうしたんだい,もしかして,記憶でもなくしたか」
「え,あ,はい.俺どうしてこうなったのかわからないんです」
男は驚いて.
「本当かい,それは大変だな」
この機会に,この世界について聞いてみよう.
「もしよければ,この世界のことを俺に教えてくれませんか」
「そうか,まぁどう説明するかな」
男は今いるこの街が,バーゼル・シュタット王国のローザンヌであること,この町は安全であるが,北のスラム街は危険であること,取引には通貨,バーゼル・シュタットフランが利用されていて,その通貨を利用すればある程度のものは購入できること.商業都市であるため,身分証がなくとも,宿泊施設に泊まったり,日雇いや下級職であれば働くことができること.等,生きる上で最低限必要なことを教えてくれた.
そして男は言った.
「この国,いやこの世界にはシューカツ制度というものがある,シューカツ制度で勝ち抜いたものこそ,特権階級として,悠々自適に生活することができる.シューカツで敗北した俺たち庶民はどんなに働いても最低限の生活を営むことしかできない.兄ちゃん今,何歳かい」