~方法~
この沈黙をどうにかしなければ……
といっても、妃奈がずっと下を向いている為、表情が見えない。
たった5分、10分の短い時間でも1時間、2時間と長く感じる。
僕は沈黙が怖く感じた。手汗はすごいし、動機も激しい。
でも、言わないと神様にチャンスをもらった意味がない。
僕はキミに、どうしても伝えたかったことがあるんだ。
「あ、あの……」
「……」
「僕は……神様からもらったチャンスを、無駄にしたくない。後悔したくない」
「……」
「6日後の午後15時に、このカフェに来て欲しい」
「……」
「お金、払っとくからゆっくりしてね。じゃあ……また」
僕は妃奈に伝えるだけ伝えて、カフェを後にした。
実際に話すんじゃ、ダメだ。
方法を考えないと……
僕は、妃奈に伝えたかったことを伝える為の方法を考えながら歩いていた。
「あっ……」
僕は気付くと、公園に来ていた。
この公園は、一人になりたい時によく来た場所。
ただ、ぼーっとしてるだけなんだけど妙に落ち着くんだ。
僕はベンチに腰を掛けた。
「久しぶりだなぁ……」
僕は、妃奈に伝えたかったことを伝える方法を考えていた。
どうすれば、ちゃんと話を聞いてくれるのか。
どうすれば───
「大一よ」
「へっ!?」
「上だ、上」
「あっ、神様!」
「どうだ?久しぶりの下界は」
「すごく嬉しいです。飲み食い出来るし、ちゃんと“生きてるんだな”って実感するし……」
「そうか」
「それに彼女に逢えたんです。今でも僕のことを想ってくれていました……」
「何だ、喧嘩でもしたのか?」
「喧嘩……なんですかね……?彼女が、僕の伝えたかったことを言わせてくれないんです」
「それは何故?」
「伝えたかったことを言って居なくなるなら、言わなくていいと言われたんです。でも、言わなくても一週間経ったら消えるんだよ?って言ったら、黙っちゃって……」
「そうか」
「あの、聞きたいことがあるんですけど……」
「何だ」
「例えば、僕が生きた証として物や手紙って、僕が消えた後でも残りますか……?」
「さぁな」
「えぇ~!?そこは教えてくださいよ」
「残るかも知れないし、残らないかも知れん。それは、そいつが相手を想う強さによる」
「相手を想う強さ……」
「じゃあ。期限が来たら、迎えに来る」
「あ、はい。ありがとうございます」
神様は大変だなぁ。
毎日何十人、何百人と善し悪しを裁き、死後の世界の人間の懺悔や話などを聞いている。
僕には、とても出来ないことだ。
「相手を想う強さで残せるかも知れない」
ありがとう、神様。
僕は、ある方法を閃いた。
僕はこの方法で、彼女に伝えるよ。




