~念願のデートで~
結局、僕は最後まで妃奈に言えなかった。
チキン過ぎるだろ、僕……
しかし、あの時に出来なかった念願のデートの約束をした。
だから、明日がすごく楽しみなんだ。
残りの日数、残りの時間を大切にして、妃奈との想い出をたくさん作るんだ。
そして……最後に言おう。
最後に……伝えられなかったことを、伝えよう───
期限まで精いっぱい生きて、最後まで笑顔で居ようと決めた。
そして、デート当日。
僕は念願のデートで前日の夜は、なかなか寝つけなかったけど、目覚ましで起きられた自分を褒めてやりたい。
僕は用意して、早めに出た。
デートが楽しみ過ぎて、居ても立っても居られなかった。
待ち合わせ場所に着いて、今日はどこに行こうかとスマホで検索しながら彼女を待っていた。
「ごめーん!待った?」と妃奈がやって来た。
「ううん、待ってないよ」と、デートあるあるの鉄板セリフを言う僕。
「どこか行きたいとこ、ある?」
「んー、実はね……」
「うん、何?」
「ノープランなのだ~♪」と笑いながら言う彼女に、何故か胸キュンしてしまった。
「じゃあ、カフェでお茶しながら考えよっか」
「うん!」
ということで、今はカフェに居る。
僕は妃奈に聞きたいことがあったのだ。
「妃奈さ……」
「うん?なーに?」
「妃奈って……彼氏、居ないの……?」
「え、なんで……?」
「あ、いやー、その……大学とかバイト先とかで彼氏……居ないのかなって。居たら、僕と逢うのはマズいよなーって思っ……て」
妃奈の顔を見た時、僕は酷くびっくりした。
だって、泣いていたから。
「え、いや……泣かないでよっ」と慌てる僕。
「だって、酷いこと言うんだもん!」
「えっ?ひ、酷いこと……?」
「そうだよ!彼氏は、大一だけなのに……」
僕は、その言葉を聞いてはいけなかった。
だって今、僕は心底嬉しい。
欲しかった言葉。
キミは今でも、僕のことを想ってくれていた。
そのことが、どれほど僕に幸せをもたらしてくれているか……計り知れない。
でも、それと同時に申し訳ない気持ちが僕を襲った。
だって、僕は……死んでいるから。
今は神様のお陰で、こうして生き返っているけれど、本当は死んでるから……
僕は期限が終わると、死後の世界へ帰らなくちゃいけない。
だから、嬉しいけど……苦しい。
「ごめん、あんなこと言って……」
「ううん。私も過剰に反応しちゃったから……ごめんね?」
「いや、妃奈は悪くないよ」
「そう……かな」
「うん。僕は、てっきり新しい彼氏でも居るのかなって、思ってたからさ……居たら、彼氏さんに悪いし。でも、居ないみたいだから、こうして逢っても大丈夫そうだな」
「みたい、じゃなくて居ないの!」
「もう~、ごめんってば」
でも、僕は彼女に残酷な話をしなくてはならない。
僕が生きられるのは期限付きだということ。
そして、期限が切れる時に僕は再び消え去ってしまうということ。
だからこそ、妃奈が悲しまないような別れ方をしなければならない。