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僕はキミに「さよなら」を告げる  作者: さくら 美羽都
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~今の彼女と過去の僕~



「確か……ここだったはず」

僕は今、彼女が志望だった大学に来ています。

志望大って、女子大だったんだ。てっきり、共学だと思っていたから何か、意外かも。

「誰、待ってるんだろ?」

「声、掛けてみたら?」

「えー、恥ずかしいよ」

女子大生の会話が、こちらにまで聞こえてくる。

確かに、女子大に男が来たらざわつくよな。

妃奈に迷惑、掛けたくない。

けど、大学の近くに居ないと捜せないし……


悩んだが僕は一度、撤収した。

僕は自分で言うのもなんだけど、綺麗な顔をしていると思っている。

しかも女寄りの。

だから、カツラとか服装とか……どうにか女装すれば、大学に潜入してもバレないかも知れない。

怪しまれたら、上手く「大学内を見学している」と嘘をつけば、何とかなるでしょ!

そう思った僕は彼女が居そうな大学を後にし、女装をする為にあちこち探し回り、女装をすることにした。

彼女を捜す為なら、女装も厭わないぞ!

とりあえず、近くのネットカフェの鍵付きの個室ブースにて買ってきた服やカツラなどを装着し、化粧も動画を見ながら完成させた。

どのようになったのか、気になったので一度、お手洗いに。

お手洗いに行く道中、僕は迷った。

「こういう時って、男子トイレ?女子トイレ?」

僕はどっちで入ればいいんだ?

そこを全く、問題視していなかった自分に腹が立つ。

どうしようか悩んでいると、店員さんに

「あの、もしよろしければ女性専用コーナーがございますので、変更の際はスタッフまで、お声掛けくださいませ」と言われた。

ってことは、僕……上手く女装出来てる!?

そして、怪しまれないよう人が居ないことを確認すると、僕は女子トイレに入った。

等身大の鏡があり、僕はまじまじと見た。

「意外とイケてるかも……」

確かに、化粧は初めてしたから上手いとは言い難いけれど、女性には見える。

隅々まで確認した僕は、上機嫌でネットカフェを後にした。

さぁ、改めて彼女を捜しにいざ!女子大へ。


一か八か分からないけれど、怪しまれないようにバレないように捜そう。

しかし、今は午後の授業が始まっている。

放課後まで待った方が良さそうだ。

その方が捜しやすい。そう思った僕は、放課後まで適当に時間を潰した。

そして、放課後になり彼女の通っているであろう女子大の門の近くまで行き、出てくる生徒たちを見て彼女が出てくるまで待っていた。

すると、彼女らしき生徒が出てきた。

「もしかして、妃奈かも……」

そう思った僕は、妃奈に接触した。

「あのー……若葉 妃奈さんですか?」

「はい、そうですけど……どちら様ですか?」

妃奈はいきなり見知らぬ人に話し掛けられて、驚いている。

「あの、ここではちょっと……二人きりで話したいんです!」

「は、はぁ……?分かりました。じゃあ、どこかカフェにでも」

「ありがとうございます」

そして、人気(ひとけ)がだんだんなくなってきた頃、僕は彼女に種明かしをした。

「実は……僕、なんだ」

「僕……?」

「柚原 大一って……知ってる?」

「!?なんで、大一のこと知ってるの……?」

「だって、僕だから……」

「はぁ!?いい加減なこと言わないで!冗談だったとしても、言っていいことと悪いことがあるでしょ!?」

彼女は頭に血が上ったように怒っていた。

その迫力は凄まじかったけれど、僕は嬉しかった。

僕のことで、こんなに怒ってくれるなんて。

でも、僕は僕なんだ。嘘でも冗談でもない、正真正銘の僕、本人なんだ。そこは分かってもらわないと……

たまたま見つけた路地に彼女を誘い出し、僕はウイッグを外した。

「えっ!?嘘……」

「しーっ!あんまり大きな声、出さないでよ。化粧してるから、分かりづらいと思うけど」

「本当に、本当に大一……なの?」

「そうだよ、妃奈」

「でも……信じられない」

「うーん、どうしたら僕だと信じてもらえるの?」

「あっ……」

何かを思い出したかと思えば、急に僕の手を取り

「ちょっと来て!」

「えっ」

どこか知らない楽器屋さんに連れて来られた。

「ね、ピアノ弾いて」

「え、ピアノ……?」

「あなたが本物の柚原 大一だというのなら、今ここでピアノを弾いてみせて」

「分かった。曲は?何でもいいの?」

「あの時、私に告白してくれた……オリジナル曲」

「……あれは告白した時しか弾いてないし、だいぶ弾いてないから腕も(にぶ)ってるんだけど……」

「そんな言い訳して、本当は弾けないんでしょ?じゃあ、信じない」

「……分かった、弾くよ」

そこまで言われたら、意地でも思い出して弾くしかない。

妃奈に僕だと分かってもらう為に。

僕は落ち着かせて、ピアノを弾き始めた。


「どう……?」

「……」

えっ、黙っちゃってるけど……もしかして間違えた!?まさか!ちゃんと思い出しながら弾いたのに。

どこかで間違えたのかな。……いや、そんなことない。えっ、でもずっと黙ってるし……

えーっと、うーんと……

僕が頭の中でパニック祭りをしていると、彼女は───

「合ってるよ……本当に、大一なんだね」

「良かった……って、ぉわっ!」

妃奈は僕に抱きついた。泣きながら、僕に抱きついて

「どうして……大一がここに?」

「あー……えっと、妃奈の志望してた大学に行って捜そうと思って、最初に来たんだ」

「そうだったの。でも、なんで私を捜してたの?」

「えっと、それには理由があるんだけど……」

「お母さんに聞かなかったんだ?」

「あ……いや。だって僕が行ったら、パニックとか騒ぎが起きるじゃん。だから」

「そっか……」

「あ、そういえばここって……あのカフェの近くだよね?」

「うん、そうだよ」

「じゃあ、そのカフェに行こうよ!」

「うん、行こっか」

「そこで、ちゃんと説明するね」





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