新米守護霊~彼女との交渉~
深夜になっても妃奈の居場所が見つからず、僕は途方に暮れた。
これ以上は捜しても意味がないと思い、とりあえず今日は休んで翌日、再び捜すことにした。
守護霊だからどこで寝ようが自由だし、下界の人間とぶつかることも当たることもないので、とても快適で過ごしやすい。
僕は妃奈に逢えることを願いながら、眠りについた。
そして、翌日。
僕は早速、朝から妃奈を捜し始めた。
すると、いきなり「柚原 大一!」と呼んでいる声が聞こえた。
突然、呼ばれたので驚いたが、聞き覚えのある声だったので「はーい!僕はここでーす!」と叫んでみると、来たのは守護霊の教官だった。
「あの、どうし……」
「バッカモ~ン!!」
「ひぇっ!」
いきなり、怒鳴られた。何故だ、僕は何かしたのだろうか。
「何故、途中で退席したのだ!」
「えっ、退席!?」
「この後、順番に守護霊になりたい人物の居るエリアを教えるから、そこを重点的に捜すと見つかるぞって話をしたのに、順番になってもお前は来ないから神様に聞いたら、もう出たって言うじゃないか!」
「えっ!?そ、そうなんですか……」
「血眼になって捜したんだぞ!」
「えっ、あの……すっ、すすすみません!」
「全く……彼女に逢えるのが、とても嬉しいのは分かる。がしかし、浮かれ過ぎだ。きちんと守護霊としてのルールや話を聞いておかないと、後で「知らなかった」「聞いてない」じゃ済まない問題だって、あるんだぞ」
「はっ、はい。すみません……」
「はぁ。無事に見つかったから良かったものの……これが、違う教官だったら放置もんだったぞ。ちゃんと守護霊としての自覚を持て!」
「ひっ!?す、すみません……」
「彼女の住んでいるエリアは、もう少し向こうに行ったところだ」
教官に怒られ激励されて、僕は改めて妃奈を捜した。
すると、すぐに見つかった。昨日の苦労は一体、何だったのか。
妃奈はコンビニから帰るところだった。
僕は妃奈の後を追い、自宅マンションに入った。
そして妃奈が部屋に入り、しばらくして僕は妃奈に声を掛けた。
「妃奈……?」
「えっ」
驚いたように、妃奈はこっちを見た。
「僕が……見える?」
「えっ、えっ!?」
「見えて、ないの……?」
「あっ、えっ!?」
どうやら、妃奈はパニックに陥っているようだ。
「妃奈、落ち着けって!」
「嫌ぁーー!」
大声を出されてしまった。しかし、僕が見えているから、そんな反応をするんだろう。
僕は妃奈が落ち着くまで、黙って側に居た。
「あの……落ち着いた?」
「ひっ!?」
「あっ、ごめん……」
「……えっと、」
「何?」
「ほ、本当に……大一、なの?」
「うん、そうだよ」
「えっと、なんで……?」
「えっ」
「なんで、ここに……」
「あっ、それはね」
僕は妃奈に、神様から手紙を受け取ったこと、守護霊のこと、時間を掛けて守護霊になれたこと……たくさん話した。
そして、僕は妃奈に交渉した。
「妃奈の守護霊にならせてください」と───




