さよなら~キミの覚悟~
僕は、神様に聞き忘れていたことを聞きに行った。
「あの……神様」
「何だ」
「その……神様は、どうして妃奈から手紙を預かったのかなぁ、と思いまして……」
「あぁ、そのことか」
「はい、どうしても気になってしまって。だって、有り得ないじゃないですか。普通は」
「まぁ、確かにそうだな。“下界の普通”では有り得ないことだな。しかし、私は神様だから出来るんだ。条件付きで、妃奈から手紙を預かった」
「条件、付き……ですか」
「あぁ」
「その条件って、一体……」
「寿命を40年ほど、取った」
「はい!?」
「本来、妃奈は95歳まで生きられる。しかし、大一に……死んだ人間に何かを渡したい場合は、寿命と引き換えになるんだ」
「どうして、40年も……!?」
「これでも、かなり譲歩したんだぞ」
「譲歩したって……」
「人によって、寿命を取る割合は違う。本当はもっと取るつもりだったが……大一が怒るだろうから、“特別に”やめたんだ。感謝しろ」
「感謝しろって……そりゃそうですよ!妃奈の寿命を40年も取るだなんて!!」
「それには、ちゃんと理由がある。口封じの為だ」
「じゃあ、もし……誰かに言ってしまったら?」
「その時は……」
「その時は……?」
「即死だ。残りの寿命を全て取る」
「……それじゃあ、寿命を取る意味が無いじゃないですか」
「いや、意味はある」
「一体、どんな?」
「寿命を奪われたことで、自分が好きに生きられる時間は決まっている。だから、更に後悔しないよう自分の人生を全う出来ると思う。後、中には私の話を嘘だと思っている人間が、ベラベラと話したので約束通り抹消したこともある」
僕は、聴いていて言葉が出なかった。続けて神様は、こう言った。
「しかし、妃奈は寿命をもっと取っていいと言っていたぞ」
「はぁ!?」
「何故か?と聞いたら……“早く、大一に逢えるから”だと。想われて幸せだな、お前は」
「……」
僕は何も言えなかった。何故なら、少しは嬉しいと思ってしまったからだ。
妃奈には僕の分までもっと生きて欲しいのに、僕のところへ来ようとしている、その気持ちを嬉しく思っている自分が居る。
でも後、55年も生きられる。
……いや、正しくは後、55年“しか”生きられない。
急いで、守護霊試験に合格しなければ。
残りの寿命を全て、僕が必要なくなるまで妃奈を守ると決めたんだ。
妃奈が、どんな思いで神様と条件付きの約束をのんだのか。
確か、守護霊試験に合格して守護霊に付く人間が決まれば、その人間とだけは話せるらしい。(例外で、霊感のある人とも話せるらしい)
妃奈の覚悟を、僕は無駄にしない───




