さよなら~僕に出来ること~
僕は妃奈からの手紙を大切に持ち歩いた。
そして、僕はあることを決めた。
「何だって?」
「ですから、妃奈の守護霊になりたいんです!」
「守護霊なんぞ、難関中の難関だぞ」
「それでも、合格するまで挑戦したいんです!」
「ふん……」
神様は考え事をしている。あまり良い顔をしていないので、僕は不安に駆られた。
「あの……神様」
「「誰でもいいから守護霊になりたい」なら、まだ合格出来る見込みはある。だが、特定の人物の守護霊になるには狭き門だ」
「あの……そもそも、誰でもいいから守護霊になりたいって人、居るんですか……?」
「あぁ、居るよ。生きている時に後悔したことがあるから、誰かの為に護ってやりたいとか。他にも、誰かの助けになりたいとか色々」
「そうなんですか。へぇ……」
「まぁ、でも大半というか、ほとんどは特定の人間の守護霊になりたいと言って、試験を受けるんだ」
「それで……」
「合格したヤツは、ひとつまみ程度だ」
「ひとつまみ、程度……」
「特定の人間を護る……それは、自分が必要なくなるまでだ」
「もし、その人にとって自分が必要じゃなくなったら……どうなるんですか?」
「その時は、こっちに戻って来るだけだ」
「それだけ……ですか?」
「他には、その護っていた人物が死後の世界に来るまで、下界へ様子を見ることも聴くことも許されない。護る人物によって、護る期間が違う。護る期間が短い人間も居れば、長い人間も居る」
「なるほど……」
「それに、守護霊の試験を受けるのは年に一度だけだ。今年がダメなら、来年まで受けることは出来ない」
「そう、ですか」
「よく考えて決めろ。ちなみに守護霊の試験は残念だが、今年は終わった」
「えっ!?」
「毎年、春ぐらいに行うらしい。日程が決まったら知らせる」
「そうなんですね、分かりました。ありがとうございます」
「あぁ」
それから僕は考えた。
年に一度しかチャンスがない。しかも、難関中の難関……
僕は他の人が守護霊について話していたのを聞いて、居ても立ってもいられずに神様のところへ来てしまった。
まさか、守護霊になるには試験に合格しなければならないなんて……知らなかった。
手紙の中で、妃奈は元気そうだった。でも、きっと僕を心配させないように書いたようにも見える。
僕が守護霊になれば、妃奈を護ることが出来る。
妃奈のことは僕が───
守る。けれど、守護霊の試験ってどんな感じなんだろうか。
あっ、そういえば神様にどうやって妃奈から手紙を預かったのか、聞くのを忘れてしまった。




