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僕はキミに「さよなら」を告げる  作者: さくら 美羽都
17/29

さよなら ~当日~




僕はあの日、妃奈にこのカフェに来るよう、一方的に頼んだ。

約束の時間は15時だと告げた。けれど僕は今、14時30分……このカフェに居る。

今日は夜になるまで、カフェの閉店時間まで居続けるつもりだ。

あれから逢ってないけど……妃奈は、来てくれるだろうか。

僕には自信がない。

僕たちは出逢って数ヶ月しか一緒に過ごしていないし、喧嘩だってしたか、してないか覚えていない。

それに、付き合ってるというよりも“友達”の方がしっくりくるというか……

僕の片想いなのかなって錯覚することもあった。

でも、時々「大一のピアノ、好きだな」って恥ずかしがりながら言ってくれるところに愛を感じるし、ちゃんと“両想いなんだな”って改めて思うんだ。

僕に恋愛なんて……って思っていたけれど、妃奈(カノジョ)は僕を暗い沼から引っ張り出してくれた。

明るくて眩しい世界へ、僕を連れ出してくれた。

妃奈と一緒に居るだけで楽しい、嬉しい、幸せだ。

ピアノの音色も、僅かだけど違って聴こえるようになった。

僕は今まで灰色だった人生が一瞬にして、彩り豊かな色彩の人生へと変わった。

そう言うと、人は「大袈裟だな」と言うかも知れない。

けれど、僕にとってそれほどのことだ。

それに、妃奈(カノジョ)は僕のピアノを見つけてくれた。

静かに、音楽室でピアノを弾いていた僕を。

妃奈には、たくさんの幸せをもらった。

僕は、あんまり喜怒哀楽が豊かな方じゃないけれど、喜びと笑顔をたくさん引き出してくれた。

僕は淡々と生きていた日常から抜け出して、希望を持つことが出来た。

たくさんの“ありがとう”を手紙にしたためた。

僕の想いが伝わるといいな。


妃奈との想い出や、手紙に込めた想い……

妃奈(カノジョ)は来てくれるのだろうか、と不安になる時もあれば「いや、大丈夫だ」と、何故か自信が湧いてくる……これの繰り返しでかれこれ30分は経った。

時刻は丁度、15時だ。

人が来る気配が、ない。

僕は注文していたハーブティーを飲んで、心を落ち着かせていた。

少し遅れるかも知れない。

きっと、大丈夫。





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