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僕はキミに「さよなら」を告げる  作者: さくら 美羽都
13/29

~想い出 4~




僕は、ふと疑問に思った。

どうして彼女は、僕に声を掛けたのか。

どうして彼女は、僕に動画を勧めたり、動画作成に付き合ってくれるのか。

考えれば考えるほど、分からない。

どうしてなんだろう……

僕は、ある日の動画作成の時に思いきって聞いてみた。

「あの、さ……」

「んー?なに?また、どこか気に入らない箇所あった?」

「いや、そうじゃないんだけど……」

「じゃあ、なーに?」

「どうして、僕なんかに声、掛けたのかなって……」

「“なんか”って何?」

「えっ……」

「柚原くん、自分のこと見下げるのやめなよ!柚原くんは“ピアノ”っていう素晴らしい、良いモノ持ってるのに“僕なんか”って見下げて……」

「だ、だって……僕は冴えてないし」

「だってじゃないっ!」

「あ、はいっ……!」

彼女が怖い。僕が言い終わらないうちに、被さってきた。

「いーい?柚原くんは“ピアノが弾ける”っていう、素晴らしいモノを持ってるんだから堂々としてれば良いんだよ?あんな素晴らしくて、繊細で綺麗な心奪われる音色は、他にないよっ!」

「めっちゃ、お褒めいただける……」

「ほんとのことだから!!」

「あっ、スミマセン……」

「もー!これからは、そうやってネガティブとか自分を見下げるようなこと言うの、禁止!ね、分かった?」

「あの……」

「なーに?」

「もし、言っちゃったら……どうするの?」

「もし、言ってしまった場合……」

「言ってしまった場合……?」

「うーんと」

「決まってないの?」

咄嗟(とっさ)に言っちゃったから♪」

「なんだ、それ……」

「あっ!そうだ」

「えっ、何?」

「もし、言ってしまった場合……」

「どうするの……?」

「デコピン&100円を回収しますっ!」

「100円、回収……!?」

「そうだよー!ネガティブ発言する度に100円、徴収するからねっ!どう?嫌でしょ?」

「嫌だ。貴重な100円玉……っ!」

「だから、くれぐれもネガティブ発言しないようにねっ♪」

「キミが怖い……」

「そうかな?あっ、そういえば思ってたんだけど」

「えっ、何……!?」

「どうして、柚原くんって私のこと“キミ”って言うの?ちゃんと名前、知ってるよね?」

「……」

「ねぇ、無視はよくないぞー!」

「いや、その……ネガティブ発言になるから、やめておこうと……」

「じゃあ、この質問だけはネガティブ発言OKだから、教えて?」

「それは……僕なんかが、人気者の一ノ瀬さんに名字で呼ぶなんて、おこがましいかなって……」

「どんだけ自分、底辺なの!?」

「スミマセン、スミマセン、スミマセン……!」

「はぁ……今から、ちゃんと私のことを名字か名前で呼ぶこと!分かった?」

「へっ!?名前!?」

「名字でもいいから。分かった?」

「ハっ、ハイ……」

「じゃあ、ちょっと休憩しよ!柚原くん、ずっとピアノ弾いてるから指とか手首、痛いでしょ?」

「いや、大丈夫だよ。休みの日とか気付いたら1日中、弾いてたこともあったし……」

「うわっ、それはヤバい!腱鞘炎(けんしょうえん)とか、なってない?大丈夫?」

「あぁ、うん。次の日は1日、ピアノ休んだから」

「そっか、なら良かった」

「あのっ……」

「あ、何かさっき聞いてたよね?」

「うん。あの、どうして僕に声掛けたのかなって……」

「話してみたかったの」

「僕と?」

「そう。いつも物静かで、窓際の席で本読んでるからさ。何、読んでんのかなって最初は気になってたけど、たまたま学校に忘れ物をして取りに帰ってる途中、ピアノの音色が聴こえて……何故か気になって、音楽室を覗いてみたの。好奇心でね」

「それで、ピアノを弾いてるのが僕だって分かったんだ」

「そう。最初は本当にびっくりして、その場から動けなかったの!だから、柚原くんがこっち向かなくて本当に良かった~!」

「もし、僕にバレてたらどうするつもりだったの?」

「ちゃんと説明して、謝るよ」

「真面目なんだな……」

「ひっどーい!私、真面目だもん!」

「ははは、そっか」

「笑ったー!ひどーい!」

「ははははは……」

「で、これからはちゃんと私のことを名前で呼ぶこと!分かった?」

「はい……」

「なら、よろしい!」

と言って、キミは機嫌が良くなった。

それからは、ちゃんと“一ノ瀬さん”と名字で呼ぶようになった。

でも僕は友達があまり居ないから、キミみたいにキラキラした眩しい人と、どう関わったらいいのか分からない。

それに、僕なんかと一緒に居るよりキラキラした人たちと一緒に居た方が、よっぽど充実した青春や学校生活が送れるのに。

あっ、ネガティブ発言をしてしまった。

でも、心の中だからバレないバレない。


「もしかして、ネガティブ発言した?心の中で」

「ひぃいいいいいっ!!!」

「あーーっ!やっぱり!!」

「え、や、な、なななんでそう思ったの!?」

「その反応が証拠だよ、柚原くん!」

「ハッ……!?」

「ふふん、かまかけてみたんだが……やはりそうだったか」

「わぁあああああ、スミマセンッ!!」

「はい、じゃあ100円!」

語尾に可愛らしい、ピンク色のハートマークが見える……

女って怖ぇーな……と思いながら、僕は貯金箱に100円を入れた。





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