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僕はキミに「さよなら」を告げる  作者: さくら 美羽都
12/29

~想い出 3~



「えっ!?あ、あの……」

びっくりした。キミが涙を流していたから。

「あっ、ご、ごめんね!これは、そのっ……」

「あ、いや……これで、拭きなよ」

「あ、ありがとう……」

まさか、僕のピアノで涙を流すなんて微塵(みじん)も思っていなかった。

「少しは落ち着いた……?」

「うん……」

「あの、さ。なんで泣いてたの……?」

「感動したの!こんな素敵で、綺麗な音色を奏でる人が居るんだ、って」

「そう……かな?」

「そうだよ!小さい頃から、ずっとやってるの?」

「いや……」

僕は何故だか思い出したくもない、あの嫌で苦しかった過去を話した。すると、キミは怒って「最っ低だね!ホント、文句言ってやりたいよ!」って僕の味方をしてくれた。

「柚原くんには才能があるんだから、もったいないよ!演奏家として、今からでも遅くないんじゃない?」

「いや、僕は趣味というか……好きで自由に弾いてるから、仕事にしたいと思ってないんだ」

「そうなんだ……あっ!」

「えっ」

「そうだっ!YouTubeに投稿したらどうかな?」

「YouTube……?」

「そう!好きな曲やオリジナル曲を弾いて動画をアップすれば、動画を観てくれた人や柚原くんの演奏に惹かれて、ファンがどんどん増えるんだよ!」

「ファン……」

僕はキミから、そのYouTubeのことを色々と教えてもらう為に後日、僕の家に来てもらい必要なものを教えてもらった。

「へぇ、パソコンで編集するんだ……」

「そうそう!いらないところとか、ボツの部分はカットしてー、時間は……」

「色々と、大変だね」

「でも、楽しいよ?完成して流した時に「こうやって、動画は出来上がるんだ!」って勉強になるし」

「そうなんだ……色々、ありがとう」

「いーえ!」

「あの、さ……」

「ん?なーに?」

「この動画のアカウント名、なんだけど……」

「うん、柚原くんの名前そのまま使う?それとも違う名前にする?」

「えっと……違う名前に、しよう……かな」

「じゃあ、どんなアカウント名にする?」

「あの、さ。キミと二人での、アカウント名にしたいんだけど……ダメ、かな?」

「わ、私と……!?いや、別にいいけど……ピアノ弾くのも映るのも、柚原くんだけだよ?それなら、柚原くんの名前の方が良くない……?」

「あ、えっと……動画の編集はキミにお願いしたいんだ。それに、こうして僕に色々と教えてくれたり、きっかけを作ってくれたり……キミが言ってくれなきゃ僕はずっと、動画のことも何も知らずに誰かに聴いてもらおう、観てもらおう。じゃなくて、ただ一人で何もない日常を過ごして生きているだけだったと思う。だ、だから……お礼?というか、感謝してるから……二人で一つの名前で、やりたい……」

「柚原くん……」

「あ、いや。もし、嫌だったら編集も自分で頑張ってするから、だから、あのっ」

「嬉しい!」

「えっ」

「ありがとう!じゃあ、動画の編集は私がやるねっ!名前、どうしよっか」

「あ、ありがとう……」

僕たちのアカウント名は『ダブルフラット』になった。

音楽系の名前がいい!ということで、検索していると彼女が「『ダブルフラット』って、何か格好いい!!」ってはしゃぎ出して、ほぼ決定したようなものだった。

そして、僕たちは『ダブルフラット』という名前で音楽系?YouTuberとしての活動を始めた。

音楽系YouTuberとしての活動を始めると、僕たちの生活は一気に変わった。

僕と彼女は学校が終わると、僕の部屋で動画の撮影を始めた。

「すっごく良かったよ!」

「そう、かな……?僕としては、ちょっと……」

「気に入らないとこ、あったの?」

「うん……」

「そっか。じゃあ、もう一回やり直そ!」

「ごめん、ありがとう……」

「いーって!だって、これ柚原くんの動画なんだからさ!納得いくまで付き合うよ!」

「あ、ありがとう……」

曲によって短い・長いがあるけれど、僕が納得いくまでやり直そうと、根気よく付き合ってくれる彼女は僕にとって、女神だった。





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