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僕はキミに「さよなら」を告げる  作者: さくら 美羽都
11/29

~想い出 2~




僕が放課後、音楽室でピアノを弾いているとキミがやってきた。

「邪魔しないからさ……たまに、聴きに来てもいい?」

「えっ、あ……うん」

「ありがとう!」

僕は恥ずかしいような、緊張したような気持ちになり、ピアノをいつものように弾けなかった。

たまに、という割りには僕がピアノを弾く時には、ほぼ毎回来ていた気がする。

僕は僕の好きなように、想うままにピアノを弾く。

僕はコンクールに出ないし、先生でもない。

ただ、ピアノが好きで弾いているだけ。

ただ、自分の世界に浸っているだけ。

でも、そんな僕の世界にも客人が一人。

僕の好きな人が、僕のそばで目を閉じて聴いている。

ここは、僕の世界の小さなピアノコンサート。

即興で弾いたりもする。

キミを想っているんだと、口で言えない代わりにピアノのラブレターを弾く時もある。

キミが僕のピアノのラブレターを「素敵だね」って言ってくれるのが、僕の幸せだった。

それから、僕は作曲に没頭した。

どうやったら、もっとキミに伝わるかな。

どうやったら“好き”って伝わるのかな───


友達という安全な位置で、変わらない毎日を過ごせる方が良いというのは分かっていた。

だけど、このままずっと片想いし続けて藻掻(もが)き苦しむぐらいなら、いっそのことフラれた方が良いと思った。

だから僕は、ある日キミを放課後の音楽室に呼び出して、伝えたいことがあると言った。

僕はピアノに想いを託した。

あの時、僕を助けてくれたこと。

いつの間にか、キミに惹かれていたこと。

僕の演奏に、どれも「素敵だね」「すごい!」

「良い曲」って褒めてくれたこと。


僕はキミが“好き”なんだ。

この気持ちが伝わって欲しい───

僕は夢中で弾ききった。

僕はピアノでしか、この気持ちを表現出来ないと思った。

演奏が終わり、キミを見ると……

泣いていた。






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