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私立養成学園(凍結中)  作者: 森尾友彬
中原巴編
21/21

意識の違い(共)

 八月四週。


 今日は甲子園の準決勝が組まれている。今日の第一試合に聖王高校が入っていた。


「あれ? 太田は見ないのか?」


 間食を終え食堂を出ようとした所で湯村に声を掛けられた。振り向くと一部同級生と先輩達が席に着いたまま学内で生徒が使える唯一のテレビを見ている。


「勝つにしろ、負けるにしろ、どっちでもいい。次に俺達と当たったらこっちが勝ちたいからな」


 この後の練習は昼食後までが自由時間になっており、グラウンドに行こうとする部員の方が少ない位だ。


「お、太田も一緒に練習するか? 研究した所で俺達が上手くならない事には意味無いからな」


 奥野がトレイを台に戻すと出入り口に向かって歩を進める。


「奥野も練習するのか? 一人でやるより複数でやった方が効率良さそうだな。んじゃ、一緒にやるか」


「お、俺もいいか?」


 いつもは一人で黙々と自主練をしている門倉が廊下の壁に背を預けている。


「門倉、お前が珍しいな。いいぞ、一緒にやろう」


 三人が並んで廊下を進んでいく。


          ***


 水を飲みに外にある給水場で涼んでいると湯村達がやって来る。周囲には他の部員も居る。


「聖王は負けた。あいつが最後に打たれて勝負ありって感じだったわ」


 俺は一切の興味も無かった。が、湯村は話を続ける。


「所詮あいつも一年だったって事だな。ざまーみろ、だな」


 俺は湯村達とは違う意味で次の聖王高校との試合が楽しみだった。


「嬉しくないのか? あいつのせいで聖王が負けたんだぜ?」


 湯村では無い声が付け加える様に言葉を継いでいく。


「そんなに嬉しいか? 聖王が俺達以外に負けるのが」


「そりゃあそうだろ。あのいけ好かない奴が負けて、全国に無様な負け顔を曝したんだぞ? 見ていてスカッとしたぜ」


 小野道が背中側から声を飛ばす。


「そうか。なら、良かったな」


 野球部に入ってから数か月経ったが、小野道という奴がどうにも信用というか苦手だった。小野道を知る仲間からは話半分も聞くなと言われるが、そんな事お構いなしで話しかけて来るし、嫌な顔をしてもつゆにも気にしてはいないのだ。


「何なんだよ。お前達だけカッコ付けやがってさ。ダサいったらねぇぜ」


 罵声の混じったような声を背に受けても、何故彼らがあそこまでヒートアップするのか分からないのだ。

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