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私立養成学園(凍結中)  作者: 森尾友彬
中原巴編
15/21

鼻先

 六月二週、週末。


 取手先輩の占いもあって、中原さんに会えないかと広場に来てしまった。


「お? なんや、太田君来たんか? それもウチに会いに」


 中原は少しお道化る様な言い方が少し気になったが、事実なので頷く。


「う、うん」


「は?」


 言った本人が素っ頓狂な声を上げたので、やや熱くなりかけた頬が一瞬でそれを忘れた。


「だから、中原さんに会いに来たって」


 中原が顔を逸らす。


「ウチ、大き過ぎてみっともないで。それに他の子より全然かわいないし」


 俯いたままブツブツと言っている。


「そうか? でも、スマートじゃないか。別に太っているわけでもないし」


 中原は顔を上げる。目尻がやや下がっており、本人も悪い気はしていないようだ。


「フォロー、ありがとな。でもさ、服を買いに行ったりすると嫌でも思い知らされるのよ。普通の店じゃウチの着られる女物の服も無いし、制服だってそう。初めて作った特注サイズなんやて」


 足元の小石を蹴った中原の笑みは自虐を含んでいて、見ている俺も少し辛い。


「それにな。ほら」


 グイッと中原に詰め寄られる。突然の接近に俺は思わず半歩後退った。


「な? 後退りするやろ」


 一方的な決めつけにカチンときた。仕返しというわけでは無いが、中原の言葉を否定するためにズイッとにじり寄る。


「ヒィッ!」


「誰だっていきなり近づかれたらビックリするだろ? あ……」


 俺よりも背が高くても女の子なんだと再認識させられる。初めて会った時もこんな感じだっけ?


「ごめん。別に脅すつもりは無かったんだ」


 若干涙目になった中原が首をふるふると振る。


「いや、謝らんで。最初に私がやったから、ほんまゴメン」


 そのまま回れ右で中原さんは寮に向かって駆けていく。大きなスライドだが、足の回転は少し遅い。


「流石に何も言わずに鼻先に近寄るのはダメだよな。張り倒されても文句は言えないよな」

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