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私立養成学園(凍結中)  作者: 森尾友彬
中原巴編
14/21

背番号、その後(共)

 練習後。


「クソッ。どうして俺が背番号を貰えなかった。それなのに亜原が選ばれているんだッ!!」


 寮の部屋に戻ってくると喜多岡先輩が荒れていた。まだ物に当たらない分ましかと思えるが、その分が間違いなくこちらに向かうだろう。


「オイ。太田、俺が選ばれずに亜原が選ばれたのは何でだ?」


 並んで立っていた二人の内、喜多岡先輩は俺を指名した。どう答えても宥める道は無いだろう。だったらどうすればましになるのか。


「喜多岡先輩よりも亜原先輩の方が上手かったのでは?」


 眼鏡の奥にある濁った瞳が俺をじっと睨み据える。その行為自体に恐怖は感じなかったが、次のアクションを思えば身が竦む。


「まぁ、そういう事だよな。うん、正論だな。だが、お前に言われて納得するのはムカつくだから一発殴る」


 ゴツン、ゴツンと俺だけでは無く湯村も殴られた。


「な、なんで僕まで……」


 やや恨めしい視線が俺を捉える。


「喜多岡、その辺にしておけ。もしお前が選ばれていたら、選ばれなかった三年にもっと酷い目に遭わされていたぞ。だから、これ以上は止めておけ」


「すいません。キャプテン」


 謝る相手が違うだろうと声を上げたかったが、それは止めた。


          ***


 翌朝。


 朝練は休みだった。前日はその理由が分からなかったが、朝に洗濯場に集まった同級生達の顔を見て悟った。


「同室の先輩達が選ばれた奴らは良いよな。こっちは朝まで愚痴と笑わせろって。無茶振りだぜ」


 同室の先輩が選ばれた部屋でもそれとは違った苦労があったらしく、顔がやややつれている者も居る。


「ハハハ、よう。元気だったか?」


 目を赤く腫らした山岡が皆より遅れてやって来た。


「ったく。参ったよ。先輩、ずっと泣いてさ。元気づけたりするのに一晩掛かってさ。で、やっと先輩たちが眠った」


 大なり小なりの被害を得た俺達はある種の結束感が生まれていた。それにもう少しすれば俺達も野球の練習に参加出来る。そう思えばあとひと踏ん張り。

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