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26.戦力


 刀はあまりユステナスでは見かけない。


 大陸最東端に位置する島国、アマツ国発祥の剣だ。

 一般的な剣は両刃だが、刀は片刃が基本となっている。刀身は反り、美しい波紋がある。切れ味は剣とは比べものにならないほど鋭い。柄や鍔、鞘も意匠が凝らされ、芸術品としての価値も高い。


 アマツ国出身の刀を扱う武人を侍といい、アマツ国では冒険者に相当する言葉だ。


 アマツ国は長らく鎖国をしており、そんな中で国外に出奔し名を馳せた侍は少なくない。


 何度か侍には会ったことがあり、だいたい誰もが大雑把な性格で、刀を抜くと豹変していた。オンオフの切り替えが明確というか。


 これまで会ってきた侍たちの雰囲気とラウザントのそれは似通っていた。たまたまかなと思っていたが、今の一言で確信に変わる。


 ラウザントは侍か、あるいは侍を師と仰いでいるのだろう。親が侍なのかもしれない。


「時計回りに言ってってくれ」


「わたくしのスキルは<付与術師・特級>ですわ。同時にバフを付与できるのは四十二人です」


 ラウザントの隣にいた妙齢の女性、ナムタの母ユオリは口元に手を添えながら実に上品に言う。


 スキルは本来、他人に公開しない。


 十六歳になれば、新成人は皆都市の教会に連れて行かれ、託宣の神像に触れて自らのスキルを解する。

スキルはものによっては生命線だ。


 もしも邪悪なスキルだった場合、その人がどんなに邪な心を持っていないとしてもバレれば投獄は免れない。


 立ち会う神父は大人に仲間入りしたばかりの無知な彼らにスキル名を問い、大抵は真面目に返答してしまうが。


 まあ僕も申告して、大騒ぎになったわけだ。


 スキルを公言することは、弱味を晒すのと同義だ。


 それなのに彼女は何食わぬ顔で言ってのけた。


「次はオレだな。オレは<万能者・中級>。だいたいのことは並にできる」


 ズーエルも尻込みしていない。


 彼らはお互いのことを信用し切っているのだ。


 僕はルートレイに移り住んだことを誇らしく思うと同時に、恥ずかしくもなった。


 恐らくスキルを言わないのは僕だけだろうな。いや、ラウザントも言っていなかった。


「此方のスキルは<無限>なり」


 病人と見紛うような様相のパラセリ。スキル名の後に階級が付かないのは固有スキルということ。


 固有スキルとは、保有者が極めて少ない、ないし一人しか有していない激レアスキルだ。


 同時期に同じ固有スキル保有者がいたことは歴史上なく、オンリーワンのスキルである。


 <勇者>のスキルも当然固有スキルだ。


 パラセリのスキルは聞いたことがない。が、みんなはわかっているらしい。


「ワレは言うなれば水系統の魔術さな」


 ミュクスの一人称が聞き慣れないのは、それが獣人の――氷猫種の風習だからだろう。我という一人称を使う人はいないこともないが、ミュクスのイントネーションに違和感がある。


 先月くらいか、そんな細かいことを気にしなくなったが。


「アタイのスキルは<結界師・特級>さ。防御なら任せなさい」


 ドンと胸を叩いたのはミライエ。


「ボクは<飛空士・特級>だよ。荷物の運搬と上空の敵はきっとなんとかする」


「相変わらず弱気ねえ。アタシは<魔導士・上級>よ」


 プレシア夫妻は完全に夫が尻に敷かれている。


「自分は<法師・中級>だね。言うなればズーエルくんの上位互換といったところかな」


「いやいやレクシャアさん、そりゃひどいって。他にも言い方ってのが」


「ズーエルくんは自分の下位互換、と言った方がよかったかな」


 ズーエルが一方的にからかわれている。あんまり話したことがない人だけど、いい人そうな雰囲気があるギャップで、こう人をからかうような人だとは思ってなかった。ずっととっつきやすそうだ。


「拙者のスキルは<剣士・上級>」


「ワタシは<演舞者・上級>」


 リザードマンのランギュムントとラミアのキルナーマフマス。


 亜人はほとんどがスキルを持たない。それは彼ら亜人の身体能力が人間のそれよりはるかに高く、スキルによる補強なくして並のスキル保有者とであれば渡り合えるからである。


 にもかかわらずスキルを上級とはいえ持っているというのは、おそらく二人はそれぞれの出身の群れでは英雄的な立ち位置だったろう。


「私は<魔術師・特級>です!」


 アイリスはやはりそれほどの実力者だった。


 ちなみに、<魔導士>は完全に<魔術師>の上位互換だ。が、階級が特級と上級なら、やや<魔導士>が優勢といったところか。


「僕は光剣使いだよ」


 ほう、と周りからいくらか感嘆が漏れた。


 光剣とはその名の通り、光の剣。


 聖系統の魔術みたいなもので、剣に聖光を纏わせる。魔獣、魔族に対して特効を有し、<聖騎士>なんかが好んで使う。


「私のスキルは<加速・特級>です」


 最後にミーシア。てっきり彼女はスキルを公表しないものだとばかり思っていたが、予想外だ。


「まああとは各々で上手く連携してくれ。とりあえず備品の分散だ」


 万事屋の離れの地下室に大量に保管してある武具の運び出しが始まった。




テストのため明日から暫く隔日更新になるのでご了承くださいm(_ _)m

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