4話 だばぁ無き人生との付き合い方
姉のゆた子が部屋に来たので、迎え入れた。
ゆた子は胸がでかくて可愛いので、増照は姉が大好きだ。
「うーん、落ち込んでると思うけど。自分の意にそぐわない能力だからって自分やそのふりかけさんを責めたりしちゃだめだよ。」
「ふりかけさん…。」
〔お呼びで?〕
「うっせハゲ引っ込んでろ。」
〔禿げてないのに〕
増照はうつむき…いや、俯きつつ視線は上、姉の胸を視界に捉えつつ考えていた。
「あたしの先輩もね、自分の能力が気に食わなくて落ち込んでたけど。でも、自分も役に立つんだって気付いた時から自分の能力とちゃんと向き合うようになったんだ。」
「右腕が銃火器になる人?」
「そう、銃火器になる人。」
「あれは!微妙じゃ!!!ないだろ!!!!!」
〔比べ物にならんね、こちとらマヨネーズも召喚できるんだ。こっちの方が強い。〕
「泣きそう」
ふりかけの価値観に混乱し情緒不安定になる増照。
「大体あの人なんの役に立ったのさ…」
「不良に威嚇射撃」
「比較すんなよカップ焼きそばと!!!!!
お前、お前カップ焼きそばを作るぞ!いいのか!不良ども!
次はお前をかやくにしてやろうか、へへへへへへ!!!」
「…。」
「…。」
〔…。〕
「弱ぇよ!!!!!!」
「それ言ったらあたしも弱いでしょ!」
「胸を自在にでかくできたり自在に足を早くしたり怪力なれたり太もものバランスをいい感じにしてニーソを食い込ませるような能力は!!!弱くないの!!!!!」
〔凄い欲望を感じる〕
この日何度目かの沈黙がまた訪れ、姉は顔を真っ赤にして俯いている。
しかし弟へもう一度向き直り、
「とにかく!どんな能力であれまずは理解を深めないとダメなの!夏休み残り1週間!宿題終わってるんでしょ!自分についてちゃんと理解して始業式迎えなさい!」
「その1週間姉ちゃんと添い寝していいなら」
「なんでそう…そういう話が出てくるかな…自分のことでしょ!」
「だってこんな微妙な能力やる気でないだろ普通!」
「じゃあ一線を超えないならよし!!」
「ヒャァァァァ」
こうして、1週間の添い寝を手にした弟は自分についての理解と己の欲を満たすことによる幸福を同時に手にした。
そして。
「カップ焼きそばに関してもう俺に不可能はない…。」
〔それはなにより!で、ついでだから。ふりかけの霊じゃなくて名前がほしいんだけど…。〕
傍に立つ幽霊が言う。
「じゃあ…オコノミで。」
〔それは…まあ、ふりかけだからお好みで…ってことかな…。〕
「決定な!じゃあよろしくオコノミ。」
不思議なコンビが、朝食のカップ焼きそばを食べ終え学校へと向かった。
波乱の二学期が始まる。
増照はカップ焼きそばだけで生き延びられるのだろうか…。