表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fighters  作者: 秋本そら
Protect
9/33

9.真実と嘘の境目

「で……なんでうちらがこんなことをしているのかってこと……話した方がいいよね?」

「お願いします」

 4人が声を揃えていうと、ありさは苦笑いをしながら話し始めた。


「えっとね……うちら4人は急にあの中野って人に呼び出されて——というか、強制的に体育館に連れ出されたというか——まぁそれで、その時に異能を与えられて、中野に楽器を壊せ、と言われたの」

 ありさの顔が、悲しそうに歪んだ。

「その時……うちらはきっと、洗脳されちゃったんだよね。

 吹奏楽をしていて楽しかった事とか、嬉しかったこととか……つまりはいい思い出を、思い出せなくなった。辛かったこととか、嫌になってしまったこととか、そういうことばかり思い出すようになって……それが憎しみに結びつくような魔法を、かけられたの。

 その時はそうとは気付かなかったから……楽器を壊すことしか頭になかった」

 4人はうなづき、理解した。

 決して悪いのはこの4人ではない。魔法をかけた中野なのだと……。

「多分うちみたいに、楽しかったこととか、嬉しかったこととかを思い出せたら……きっと中野の魔法は解けるはず。だから3人に……いい思い出を思い出してもらわなきゃいけないと思うの」

「……ってことは……」

「うまくいけば、残りの3人も味方につけられる、ってことですよね?」

「そう。

 中野のかけた魔法さえ解ければ……3人とも、味方についてくれるはず」

「……分かりました!」

 4人は顔を見合わせて、うなづきあった。

 突破口が、光が見えたのだ。


「……ところで、残りの3人の名前と、異能って、教えてもらえますか?」

 君代がありさにきくと、ありさはうなづいて答えた。

「1番端にいる女の人は、片桐さくら。異能は確か……異能の無効化、だったかな。

 真ん中にいる女の人は、篠山(ささやま)佳苗(かなえ)。治癒能力を使うの。

 唯一の男の人は、近藤大翔(ひろと)。炎を操る異能を持ってるよ」

「ありがとうございます!」

「ただし、本名がばれないように、呼び合う時はみんなの2つ上——だからうちらの1個下の名前を使ってるよ。片桐さくらは大山遥、篠山佳苗は関南々美、近藤大翔は永野瀧ってとこかな?」

「分かりました!」

「忘れないようにしないと……」


 4人が名前の組み合わせを繰り返し唱えて覚えようとしている時、ありさはふっ、と悲しそうな顔になって、呟いた。


「こんな嘘……やだな。

 やだよ、こんなことで嘘つくなんて……」


 誰も、その呟きを聞いていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ