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Fighters  作者: 秋本そら
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6/33

6.音楽室の戦い

 その頃、音楽室では。

「瀧、うちらはこれを壊せばいいんだね?」

「うん。邪魔者が来ないうちにやっちゃおうよ」

 音楽室に、あの4人が到着していた。

 音楽室には、沢山の打楽器が置いてある。

「そうだね。ねえ遥、この辺は割と炎で燃えそうじゃない?金属もあるけど、割と燃えそうなものも多いよ」

「そうだね。それじゃ瀧、お願い」

 炎を操る異能者である、瀧と呼ばれた男の人がうなづき、炎を放とうとする。

 すでに、掌には炎があった。


「——そんなことはさせない!」

 掌にあった炎が、一瞬にして消えた。

 4人が振り返るとそこには、君代がいた。

 君代だけではない。亜子や鈴、詩乃も一緒だ。鈴は手に水を纏わせていた。

「——成る程、水と氷を操る異能者か」

「面白くなってきたんじゃない?」

 瀧と、遥と呼ばれていた女の人がにやりと笑って言った。ほかの2人も君代達を嘲笑った。

「止められるなら止めてみたら?うちらのこと」

「どうせ無理でしょ?」

 しかし、亜子が冷たく言い放った。

「大丈夫よ、あなたたちは楽器を壊せない」

「だって、そこには楽器などないのだから」

 君代の声に、4人は楽器があるはずの場所を振り返る。

 ——さっきまで沢山あった楽器は、忽然と消えていた。


「——そんな馬鹿な!」

 リーダーシップのありそうな女の人が叫んだ。想定外すぎることに、他の3人は話せなくなっていた。4人は、驚きのあまり、動けなくなっていた。


 不意に、震えた声で、詩乃が呟いた。

「——私は、貴方達が許せないです」

 詩乃は、打楽器の担当者だった。詩乃にとって、打楽器は仲間だった。その大切な仲間を、4人は壊そうとしたのだ。

「あの楽器たちは、私の仲間なんです」

 詩乃は、密かに異能を働かせた。


「——蔓が巻きついてくる!」

 遥が叫んだ。

「本当だ……苦しい!」

 リーダーシップのありそうな女の人も、蔓から逃れようと身悶えした。全員が蔓から逃れようとするが、すでに遅く、蔓に縛り付けられてしまった。

「この蔓……一体、どこから?」

「……あの子だよ!あの子は草木を操る異能者だ!」

 詩乃の手や腕の一部が蔓と一体化して、そこから生える蔓が4人を縛り付けていたのだ。

「……こんな事をするのは……本当は嫌です。やっぱり……私はこんな戦争なんて、したくないんです。でも、楽器が壊されるのは、耐え難いです。私の仲間だから、というのは勿論、大切な思い出まで消えそうで、そんなことはないと分かっていても……怖くて。楽器との思い出も……楽器を通して繋がった、人々との思い出も」

 小声ながらも、詩乃は語った。

「楽器を通して、私は優菜先輩と出会って……優菜先輩は厳しいけど、優しくて……楽しかった思い出が、沢山あるんです。私のもっと上の代の方も、沢山思い出が、あると思うんです。辛いことも、楽しかったことも」


 4人のうち、リーダーシップがありそうな女の人が、動きを止めた。

「本当に……そう思っているの?」

 その言葉は、明らかに今までと口調が違うものだった。

「——はい」

 詩乃は、小さいながらも力強い声で、答えた。

「——そう……だったんだ」

 その女の人から、力が抜けた。

 涙が一筋、頰を伝って、落ちていく。

 そして、その女の人から、黒い霧が散った。

「ごめんね、()()()()()……」

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