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Fighters  作者: 秋本そら
Contradict
25/33

25.何故

「——教えて。どうして貴方はあのシナリオを書こうと思ったの?何故私を生み出そうと思ったわけ?」

 小百合が問う。今小百合が知りたい、一番のことだった。そして答えは創造主の智子にしか分かり得ないことでもあった。

「どうしても何も……貴方は元から私の中に存在していた、ただそれだけよ」

 智子はさらりと答える。

「貴方の中に?私が?」

「ええ」

 戸惑う小百合に智子はうなづく。

「仲間が、あの空間が好きな私と嫌いな私がいた。もし嫌いな私のような人が現れたら、そう考えて書いたシナリオが、あれよ。あの空間が嫌いな私が、貴方」

「……確かにそれなら、単純明快ね」

 そうでしょう?と智子は笑う。

 でも、と小百合は食ってかかる。

「どうして?どうして私はここに存在するの?貴方の想像上の存在でしかなかったはずの私が」


「貴方はどうして生まれて来たのか——現実に存在する人になったのか」

 智子は後悔しながら、口にする。

「それは多分……2か月前に、私が神社にお参りに行った時にお願いしたから」

「は……?」

 小百合もすっとんきょうな答えに絶句する。

「純粋に仲間を、あの空間を好きでいたかった。だから私は願ったの。仲間やあの空間を嫌いな私を、追い出してくださいって」

「そしたらその願いが……叶っちゃったわけ?」

「……そう。本当に叶うなんて、思ってなかったのよ。私は基本的に無信心者だから」

「まあ、普通そうよね……」

 小百合は呆れ返った。

「中野小百合。シナリオを書いた時から、貴方の根底にあるのは私の心。それに中野小百合という人物を肉付けしたの。きっと髪は短くて茶髪だろう、背丈は同じぐらいだろう、戦いをこよなく愛するような人で、音楽がとにかく嫌いな人だろう……とね」

「……」


(なんて身勝手な……!)

 小百合は、憤っていた。

 しかし智子は気づかない様子で尋ねてきた。

「今みんなはどんな感じなの?」

「……音楽室を出たみたい」

 小百合は基本的にはどんな異能でも操れる人物だ、そのぐらい簡単に見ることができる。

「なら……そろそろ始めましょうか。ずっとお喋りしている場合じゃ無くなってきたわね」

「そうね……」

 そう言いながら小百合は、音楽室を出た18人にささやかな贈り物をした。もちろん、皆が不利になる贈り物だ。そして時間稼ぎのための贈り物であり、自らの欲求を満たすための贈り物でもあった。


「……ところで」

「何よ?」

 智子の声に、小百合が突っかかる。

()()は持っているのよね?」

「勿論」

「今使ってもいいのよ?」

 智子は挑発するような声で、でも懇願するような、もしくは諦めているような目で、言った。

「……嫌だね。あれは貴方を傷つけて、とどめを刺すためだけに使いたいんだ」

 その言葉を聞いた智子は、ふっと笑った。

 その目は、諦めの色を帯びている。

「……やっぱりそうか。それも()()()()だね……」

 その言葉を聞いた小百合の頭の中で、何かが切れた。

「うるさい!」

 智子に向かって電撃が撃たれる。

 智子はそれを一歩下がって避ける。


「手加減は一切無しだ」

 冷淡な表情で智子は冷たく言い放つ。

「望むところね」

 智子も真剣な目で、小百合を見つめた。

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