2.1年生の異能
「——なんかやばいけど……」
「あの中野ってやつを止めないと!」
「……戦うしか、ないんだね……」
2年生5人がそう言い合う中、1年生10人の行動は少し違った。
「——とにかくみんな、自分の異能がなんなのか分からないと、何も出来ないよ!どうにかして異能を確認しなきゃ!」
そう文香が言ったからだ。
「うーん……でも、どうやったら分かるのかな……?」
鈴の問いに、朝がいつもの癖でポケットに手を入れながら、
「さあ……?」
と答えた。
と、その時。
「ん……?ポッケの中に、なんかあるよ?」
朝がポケットの中から何かを取り出した。
それは、紅いビー玉だった。
「何それ?」
智子の問いに、
「さあ……?さっきのビー玉かな?」
と言いながら、朝はビー玉をコンコン、と突いた。
すると、ビー玉が燃え上がって、消えた。
「わっ!」
朝は驚いたが、すぐに理解した。
「そうだ。これがうちの異能なんだ……!」
朝は炎を操ることができた。炎を出現させ、操り、消すこともできた。
朝のおかげで異能の確認の方法がわかった1年生は、ポケットの中にあるビー玉を次々に取り出し、突いた。その結果、次のような異能を持つことが分かった。
春奈は風を操る異能。
文香は未来予知をする異能。
留美は土を操る異能。
智子は電気を操る異能。
亜子は幻覚を見せる異能。
愛音は物を増やしたり減らしたりする異能。
君代は瞬間移動ができる異能。
鈴は水と氷を操る異能。
朝は炎を操る異能。
詩乃は草花や木を操る異能だ。
1年生は、文香を中心に作戦を立てた。
「——とりあえず誰かが音楽室とか楽器庫に行かないと!楽器が壊されたらおしまいだよ!」
「なら、うちが行くよ」
名乗りを上げたのは、君代だ。
「誰か一緒に連れて行けたりする?」
文香の問いに、君代は「ちょっと試させて」と言った。君代が近くにいた鈴に触れた時、文香が異能を働かせた。
「——大丈夫、行けるみたいね。鈴、誰かと手を繋いでみて」
鈴はさらに近くにいた詩乃の手を繋いだ。
「大丈夫、行けそう」
文香は力強く言った。
「ならうち、音楽室に行ってくる。鈴、亜子、詩乃、付いて来てくれる?」
君代には作戦がひとつ、あった。それを手早く3人に説明する。
「——分かった!」
「任せて!」
「ありがとう!それじゃ、行ってくる!」
4人は手をつないで、君代が異能を働かせた。その途端、4人は消えた。
「——あれ?先輩たち、いなくなってる!」
春奈が言った通り、いつのまにか2年生5人がいなくなっていた。
「もしかしたら先に中に入ったのかも」
「うちらも行こう!」
「うん!」
留美と文香の声に、その場にいるみんながうなづき、中に入ろうとした。
しかし、その瞬間。
「——みんな、下がって!……はやく、逃げて!」
文香の声を聞いて1年生全員が正面玄関から離れた途端、突然響く、ガラガラッ、という途轍もなく大きな音と共に、正面玄関前の屋根が崩れ、正面玄関が塞がれた。
「ああ、もう……ここから入れなくなっちゃった!」
留美が少し苛立ちながら言うと、智子が
「まあまあ、他のところから入ればいいじゃん?」
と留美をなだめた。
「智子の言う通りだよ。あっちから入ろう!」
文香が昇降口を指差しながら言い、その場にいた1年生6人はその昇降口を目指した。




