18.合流
「やっと見つけた。ずっと探していたの。貴方達——うちらの味方をね」
「——ありさ先輩!」
その人物を見て、波が叫んだ。
そう。そこにいたのは、ありさだった。
「どうしてここに?」
「中野ってやつに強制的に呼び出されたの。全く、ひどい話だよね!」
ありさは憤りを露わにし、
「……まあ時間もないし、なんでうちらがここに来たのか話さないとね」
そして話しだした。
突然強制的に小百合に呼び出されたこと。
呼び出されたのは自分も含めて4人であること。
その時に呪いとも言えるような魔法をかけられたこと。
その呪いのせいで自分たちは吹奏楽を忌み嫌うようになったこと。
そして楽器を壊そうと音楽室に来たこと。
その時1年生の別働隊と戦うことになったこと。
その時に自分の呪いは解けたこと。
他の3人の呪いは解けておらず、今は3人が何もできないよう、そばにあったガムテープで拘束していること。
呪いを解くためには楽しかった思い出を思い出させなければならないこと。
そのために自分は1年生本隊と2年生を探しにきたことを。
「——なら早く音楽室に行きましょう!」
彩が言ったが、
「待ってください!」
異議を唱えたのは文香だ。
「なんでよ、文香!」
朝が突っかかると「だって」と文香は言う。
「智子……智子がいない」
そう言われて、ようやく他の人は智子がいないことに思い出したり、気付いたりした。
「本当だ!」
「どうしよう……」
「智子は本棟のトイレに行ってから戻るって言っていましたけど……もし、怪我とかをして動けなくなっていたら……」
誰も文香の言葉に答えるものはいない。
「……でも探しているうちに拘束が解けて、楽器が壊されたら?」
春奈の声だった。
「たしかに……それも怖いね」
同意したのはひなだ。
いや、ひなだけではない。
他の人たちも春奈に同意していったのだ。
文香は頭を抱えたくなった。智子の安全など誰も分からないのだ。文香は今すぐにでも智子を探しだしたい気持ちでいっぱいだ。
「落ち着いて、文香ちゃん」
そんな文香を見て、波が提案した。
「まずは音楽室に行こう。それが第一優先事項。うちらのやるべきことは、まずはその3人を味方に引き入れること。そして、中野ってやつを倒すこと。3人を味方に引き入れたら、その後中野を探しながら、智子も探そう」
「……はい……」
「みんな、行こう!」
「はい!」
ありさの声に皆が応え、音楽室へと向かった。
そうすべきなのは、文香も分かっていた。
(でも……胸騒ぎがする)
異能も何も関係なしに、ただ純粋に、胸騒ぎがしていたのだ。このままではいけないと、何かが耳元で囁いているような気持ちだった。
(智子……どうか、無事でいて。
そして早く、ここにきて……)




