15.作戦会議
そして、音楽室では。
未だに時は止まっており、時が止まっている地点は少し遡るが、2年生の動きで言うと本棟4階に着いた頃、1年生本隊の動きでいうと本棟1階階段前で話し合いを開いている頃だった。
君代が打楽器を移動させきっていないことを思い出し、問いかけた。
「ごめん、亜子。もう大丈夫だったら楽器も運び切ってないし、もう一回お願いしてもいい?」
「……いいよ。なんとかなりそう」
「ちょっと待って」
その時、ありさが止めに入った。
「今は私が時を止めているし、しばらくは体力も持つから今のうちに運んだらどう?亜子ちゃんがわざわざ隠す必要もないでしょ?」
「……たしかに!じゃあ、今のうちに運びますね。
なるべく早く終わらせるので、お願いします」
君代が元気よく答え、打楽器を運んでいく。
「これ、ふと思ったんですけど……ここにいる3人だけ、時を止めることも可能ですよね?」
そう聞いたのは、詩乃だった。
「できるけど……体力が持つ限りは、だね。
もし3人だけの時を止めておくなら、うちの体力が持たなくなったときのための対策も考えないといけないと思う。うちだって異能を使えば体力も消費する」
「なら……前もって動きを封じるしかないですかね……」
鈴が呟く。
それを聞いた詩乃が手元の蔓を見る。
それを見たありさは付け加えた。
「もし動きを封じておきたいなら、異能ではない何かで封じてからにしないと異能の持ち主が疲れるし、何よりあの子の異能が「異能の無効化」だから、私の体力が持たなくなった時に、いつその異能が無効化されるか分からない」
あの子、と言いながら遥——さくらのことをちらりと見た。
詩乃の腕と一体化していた蔓が消え、詩乃が深呼吸をする。ずっと異能を使っていたからか、少し疲れが出ているようだ。
「今なら、縛り付けておく必要はないですよね。少しでも、休んでおかないと……」
「うん、そうすべきだよ」
詩乃の言葉に、亜子がうなづく。
鈴が辺りを見回して、あ、と声を上げた。
「これ……使えるんじゃない?」
打楽器梱包の際に使う、ガムテープだった。
「少し心苦しいけど……これで、動きを封じるしか……ないかな」
「うん……」
その場にいる4人——亜子、鈴、詩乃、ありさは、時が止まっている敵3人の動きを、ガムテープで封じた。これで時を動かしても3人は動けない。
4人の作業が終わった時、君代が戻ってきて、
「終わりました!」
と元気よく告げる。
「もう時を動かしても大丈夫だね?流石にそろそろ限界かな。あと、亜子ちゃん」
「はい」
「ごめん、負担をかけちゃうけど……3人に幻覚を見せてほしいの。ガムテープで同じように縛られているうちの幻覚を。そうしたら……うち、外に出てみんなの味方を探しに行くよ」
「いいんですか?」
君代が尋ねるとありさはにっこりと笑って、
「いいの。それぐらいしかできないじゃない?
だからみんな、3人が楽しかった思い出を思い出せるように……あいつの呪いが解けるように、頑張って欲しいの。お願い」
「——分かりました!」
4人は声をそろえて言っていた。
「——じゃあ時間を動かすよ?
亜子ちゃん、お願いね」
「はい!」
そして、再び時は動き出したのだった。




