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Fighters  作者: 秋本そら
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14/33

14.謎

「これは……まずい」

 文香が呟く。

「まさか……血が止まらなくなるような薬がナイフに塗り込んであったとか?」

 智子がハンカチやティッシュを取り出しながら返した。文香は目を丸くする。

「何で分かったの?

 ……そうだよ。未来を見たら、いつまで経っても血が止まらない予知しか見えなくて」

 智子はしばし、目を閉じた。

 何かを思い出そうとするかのように。

「……ちょっと待ってて」

「どこに行くの?」

「ちょっとだけ外に。取ってきたいものがあるから」


「——お待たせ」

「……何、それ」

「草だよ。外に生えてた、薬草」

「……」

 智子は文香の傷口に、水で洗ったその薬草をあてがうと、その上からティッシュを当て、さらにその上からハンカチを使って縛っていく。

 文香はその時、この先段々と出血が治っていく予知を見、智子の言っていたことは嘘ではないのだな、と思った。


「——これで大丈夫。私、もう行くね。

 ここにいれば、2年生の先輩方とも合流出来るはずだから」

「ありがとう、智子」

「いいの。気にしないで」

 智子は文香に笑いかけた。

「それじゃ……またね。

 その怪我、きっと咲先輩が治してくれるよ」

 悲しそうな、笑顔だった。


 智子は別棟には行かず、本棟に戻っていく。

「待って、智子。どこに行く気?」

「……トイレ。本棟のトイレの方が近いから」

「そっか。早くみんなのところに戻りなよ」

「……うん」

 智子は今度こそ、本棟に戻り、角を曲がる。文香はただ、それを見ていた。


(智子……うちが1人になっちゃうから、あんなこと言ってくれたのかな。慰めるつもりで。

 2年生の先輩とすぐ合流出来るよとか、きっと先輩が怪我を治してくれるよとか。

 そんなの、分からないのに)

 文香は笑った。

(智子ってさ、周りのことを考えるし優しいけど、なんかさ、一旦思い込みが始まるとなかなか抜け出せなかったりとかさ、あとは空気が読めなかったりとかするよね)

 足の怪我を見つめてふと、文香は不思議に思った。

(不思議だよね。なんで智子は外に薬草があるって知ってたんだろう?ましてや、その薬草がナイフに塗られていた薬に効く薬草だなんて)

 不思議に思いながらも、どこかで納得もしていた。

(でも智子はね、休み時間といえば図書室にいるか、外で男子とバスケをしてるか、校内で大人しくしてるか、花壇で花や草を眺めているかだったし、あんなに花や草を見ていたらわかるかもしれないよね。図書館で花や草の名前だって調べてたかも。

 ……そういえばさ……)

 文香は、首をかしげる。


「——智子、トイレ長くない?

 早くみんなのところに戻らないのかな」

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