12.それぞれの役割
彩はあることを思いついた。
大きく手を動かして、結界で2年生5人を包み込んだ。
「こうすれば廊下を歩けるよ!1年生を捜せる!」
「彩、頭いい!」
「さっすが!」
波やひなが声をあげる。
「いや、そんなことはないよ」
と、彩。
「ほら、なら早く探しに行こうよ!」
と咲がいい、音也が
「結界だってずっと持つかはわからないだろ?彩の体力だって消費しちゃうだろうし。行こう!」
と言った。
5人は、歩き出した。
戦う人たちの中に1年生がいないか。
教室の中に1年生がいないか。
しっかりと確認するが、勿論いる訳がない。
2年生は知らないが、1年生は音楽室を目指しているのだから。1年生は本棟の3・4階には用がないのだ。
「いないね……」
咲がぽつりと言った。波も
「うん……」
と言うだけだった。
「次だよ!3階を探そう!」
彩が気を取り直すようにそう言った。
しかし、その時。
ふっ、と糸が切れたかのように、彩が倒れそうになった。それと同時に、結界が消え失せる。
「——危ない!」
ひなが彩を咄嗟に支えた。
5人は踊り場の物陰に隠れる。
「……ありがと、ひな。助かったよ……急に力が抜けちゃったから。体力使いすぎたかなぁ……。
……あれ?」
「どうしたの?」
怪訝そうな顔で、彩が尋ねた。
「ひな……何かした?」
「ううん、何にも」
ひなは首を振る。
「そう?
でも、ひなが支えてくれた時、なんか、抜けちゃった力が戻ってきたような気がしたんだけど……」
「えっ?」
ひなは目を丸くした。
あっ、と波が声をあげ、
「もしかして……ひなは体力を回復させられるんじゃない?」
「……それが、うちの異能?」
ひなはぽつりと呟くと、満面の笑みで言った。
「……そっか。それがうちの異能なんだね!」
しばらく休んだ後、
「もう大丈夫。また結界を張ることも出来そうだし、3階に行こうよ」
彩が言った。
「本当に平気?」
とひなが聞くと、彩はうなづいた。
それをみた咲は
「無理しないでね」
とだけ言った。
「——よし、じゃあそうしよっか!
彩、結界を張るのをお願いしていい?
ひなは彩がきつそうだったらサポートしてあげて。
咲はもし怪我人が出たら、よろしくね」
「任せて!」
2年生は、自然に役割分担をしていた。
波が場を仕切り、彩、ひな、咲——異能が分かっている3人は、はっきりと波に答えた。そこに、あくまでも慎重派——つまりはブレーキ役になってくれる音也が、一言付け加えた。
「みんな、無理しないでね。みんな異能があるとはいえ、限界があるはずだから」




