11.難航する1年生探し
その頃、2年生は。
「1年生のみんなは……」
「……何処にいるの?」
——本棟4階にいた。
1年生は本棟2階から渡り廊下を渡って別棟2階に行く予定だったので、本来ならばそこは1年生が通る訳のない場所だ。しかし実際には、本棟は4階まである。2年生は最終決戦が何処になるかなど考えていない。ただ今頭にあるのは、1年生を何とか捜さなければ、という考えだけ。ならば今いる本棟の最上階、つまり4階から順に降りていった方が効率的ではないか、と考えたのだった。
幸いにも、狭く足場も悪いからだろうか、階段で戦いが起こることはなかった。急に火のついた矢や弾丸が飛んできたりはしたが。
だとしても幸いなことに、周りに気を配りながら歩いてはいたから、なんとか致命的な怪我をせずに済んだ。それに、2年生の中には咲——治癒能力者がいた。怪我をしても、咲がいれば治すことができる。
そして、2年生5人は無事、4階に着くことが出来たのだった。
しかし、2年生は踊り場で立ち往生していた。
一歩廊下に出れば、そこでは戦争が起こっている。自分達の中で異能が分かっているのは咲のみ(しかも戦闘力になりそうなものではない)だ。下手に動けない。しかし、廊下に出なければ1年生を探せない(もちろん本棟4階には1年生はいないのだが、2年生はそれを知る由もない)。
「1年生!いるなら返事してー!」
波が廊下に向かって大声で叫ぶ。当たり前だが、返事はない。しかも困ったことに、波が叫んだことによって敵を刺激してしまったらしく、敵から攻撃され始めたのだ。しかも、集中的に。
矢や弾丸が2年生めがけて飛んでくる。逃げ場は、ない。
「——危ない!」
彩が反射的に4人を庇い、他の4人も、彩自身も、目を固く瞑った。
(すぐに矢が刺さり、弾丸が胸を貫くだろう……)
が、いつまでたっても、矢は刺さらない。弾丸が胸を貫くこともない。
恐る恐る目を開けるとそこには、薄い水色の結界ができていたらしかった。矢や弾丸といったものが、跳ね返されていく。
「どうして……?」
皆がそう一度は呟いたが、すぐに理解した。
「——もしかして、これが……」
「彩の……」
「……異能?」
「……きっとそうだよ!」
「彩がうちらのことを庇ってくれたからだよ!」
いくら攻撃しても無駄だと分かったのか、敵はこちらにあまり攻撃をしなくなってきた。
「うちは……結界を張れるんだね」




