誕生日
9/30は五十嵐那奈の誕生日だ。単発でも書くかー
というわけで半年以上空いての投稿となります。
本編の投稿遅れてごめんなさい!!現在執筆中なんで気長にお待ち下さいm(__)m
というか本編でまだ9月まで行ってないのに先に誕生日ネタやるとは何事なのだ私
9月30日午後18時。
菅崎智は食堂の厨房で一人黙々と作業をしていた。学校から帰ってから一人で準備をしていたらこんな時間になってしまっていたのだ。夕食まであと1時間、時間がない中丁寧にスポンジにクリームを塗っていく。
「誕生日ケーキ作りなんて久しぶりだな。養護施設にいた時はチビたちのケーキを頻繁に作っていたけれど、ここに来てからはめっきりそんな機会なかったし」
そう、今日 は那奈の誕生日なのだ。知ったのは一週間前だが…
一週間前突然クソ女神が「来週那奈の誕生日だしサプライズしよ!」とか言い出した時はほんとにびっくりした。急すぎるしあいつの誕生日初めて知ったし…
まぁそんなわけでサプライズで誕生日ケーキでも焼こうという話になったのだ。学校から帰るまでに材料は揃えるから作るのは任せた!と俺に放り投げたあの女神は今どこで何してるんだか。
「…よしできた!まぁこんなものか」
いちごをのせ、チョコプレートにHappybirthdayと書いたシンプルなものだ。時間ない中頑張った俺を誰か褒めてくれ。
「ごちそうさまでした」
夕食後、そそくさと食堂を立ち去ろうとする那奈を引き留め椅子に座らせる。
「何でしょうか?無理やり席に座らせるなんて。自室に戻りたいのですが」
「まぁいいじゃないか。たまにはのんびり会話でもしようじゃないか」
「は、はぁ…」
よし、ガイアが引き留めているうちに…
「?停電でしょうか?」
突然食堂の明かりが消え那奈がつぶやく。
「私見てきます。女王様はここでお待ち下さい」
「あぁ大丈夫だよ那奈。座っていなさい」
ガイアが優しく返す。よしいくぞ
「ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデートゥーユー」
スタッフの歌と共にろうそくのついた誕生日ケーキを那奈の元へ運んでいく。その光景を那奈はぽかんとしながら見ていた。
「………これは…何でしょうか?」
「何って誕生日ケーキだよ。お前今日誕生日だろ?だからみんなでサプライズでお祝いしようって計画していたんだよ」
「たん、じょうび?とは…」
え、待って誕生日が何かもしかして知らないのか?いや流石にそれは…
「今まで誕生日祝ったことないのか?」
「誕生日とは祝われるものなのですか?このようなことは今まで一度もなかったので初めて知りました」
まっじかよぉ…そうすると疑問が生まれる。
「え、じゃあ今まで自分の歳とかどうやって知ったんだ?」
「とある人から『今日からお前は何歳だ』と言い渡されるのです。それで自分の歳を知ることができました。しかし、生まれた日を祝う風習は聞いたことがありましたがこのような感じなのですね」
…………知らなかった。那奈が今まで誕生日を祝ってもらったことがないなんて…
ならば…
「ならば、これからは毎年みんなで祝おう。生まれた日というのは、祝福されるべきなんだから」
「こんな私でもですか?」
「当たり前だろ!それよりも、ほれ!主役はこのケーキのろうそくを吹き消すというルールがあるんだよ」
「そ、そうなのですか?ルールならば守らなければなりませんね」
ろうそくの火が消え食堂が暗闇に包まれる。
直後明かりが点く。
「誕生日とは祝われるべき日なのですね、初めて知りました。……自分の生まれた日を祝福されるのはいいものですね。」
「そうだろ、ほらケーキ切るぞ」
ケーキを切り分けみんなで食べて、養護施設の時の誕生日会みたいで懐かしい感じがした。
「あ、そうだ。これ誕生日プレゼント」
そう言って小さめの箱を取り出し那奈に渡す。
「開けてみてもいいですか?」
「もちろん。何渡したら喜んでくれるかわからなくて結構悩んだんだぞ」
しゅるしゅるとリボンをほどき、箱を開けると中から出てきたのは水色の箱形の小さなオルゴールだ。
「前に街中歩いてて、アンティークショップのショーケースの中にあったオルゴール眺めてただろ?そういうの気になっているのかなって思って選んだんだ」
那奈はオルゴールを手に持ちゼンマイを巻く。
するとオルゴールから優しいメロディーが流れてきた。何の曲かはわからないが、那奈はオルゴールのメロディーに聞き惚れていた。
「ありがとうございます。女の子は皆オルゴールを持っているイメージがあって、少し気になっていたのです。こうしているの心が洗われる感じがします」
あれ?今……………
一瞬だが、目元が笑ったような気がした。
一切顔に表情を出すことがない那奈が、初めて…
「オルゴール、大切にしますね」
そう言って那奈はまたオルゴールのゼンマイを巻いていた。
「また来年もみんなで祝おうな」
食堂には優しいオルゴールのメロディーが響いていた。