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WorldDefender   作者: Reea
4/6

episode2“運命”を手にしたのなら

attention!流血表現が含まれます。苦手な方は避難をお願いします

制御室の大きなモニターには那奈と2つ首の犬のような、ゾンビのような生物が映し出されていた。アスファルトには人のものかあの化け物のものかわからない血痕が飛び散っている

と、ゾンビ犬が一斉に那奈に向かって走りだした。舌をダラリと垂らし舌先からはヨダレがだらだらと垂れている。ゾンビ犬にとっては獲物が自ら食われにきたようなものだとでも思っているのだろうか

『これより撃破開始します』那奈がそう言った途端地を蹴り一直線にゾンビ犬の群れに突っ込んでいった。そのあまりの速さにゾンビ犬も一瞬驚いたようだがお構い無しに那奈に噛みつこうと飛び付いたその時、飛び付いてきた内の一匹が剣によって真っ二つに両断された。ゾンビ犬は悲鳴を上げることもなく息絶え、両断された体が路上に左右バラバラで落ちてきた。死体はその後瘴気を放ち跡形もなく消えてしまった。その様子を見たゾンビ犬は怖気付いたよいにも見えたが再び那奈に飛び付く。

一匹、また一匹と那奈の剣捌きによって倒されていき、50体ほどは倒しただろうか。最後の一匹が那奈に背を向け逃げ出したが、那奈はその場から動かず、手元の剣を右後ろに構える。手元の剣がじわじわと青い光を放ち、剣をゾンビ犬の逃げた方向に振りかざした。すると剣から三日月形の閃光が放たれ見事ゾンビ犬にクリーンヒットした。閃光を受けたゾンビ犬はキャインと悲鳴を上げ体を痙攣させながら路上に横たわっていたがその内動かなくなった。

「撃破対象消失。もう戻ってきて大丈夫ですよ、お疲れ様でした。」『わかりました。これより帰還します』そう言うとモニターから那奈の姿が消え、制御室に現れた。瞬間移動って便利だな

「いやぁお疲れ様。少しずつ剣捌きも良くなってきてるし撃破も以前より速くなったな。やーえらいえらい」そう言ってガイアは那奈の頭を撫でるが那奈は無反応で、表情一つ変えない。「いえ、当然のことをしているまでで称賛に値しません」那奈のやつ神様直々に誉めてもらってるのによくそんなこと言えるな恐ろしいわ。言葉だけでも素直に嬉しいって言っておけよ…

「ま、こんな感じなんだ。そう難しいものではなかろう?力が覚醒すればお前にもできるようになるさ。というかなってもらわないと困るんだがな」

「いやいやいや難易度高くありません!?今はあのゾンビ犬くらいでもその内もっと強い奴らが出てくるんですよね!?ハードル高いですわぁ…というより俺いつ覚醒するんですかね。こういうのって大体前兆があったりするんですよね?なんか今のところ何ともなくって不安なんですけど…」「焦らずとも、覚醒の時は近い。お前にはわからなくとも私は把握しているから心配しなくていいぞ。それとも知りたいのか?」ニコニコしながら言ってきやがる…楽しんでるだろ絶対

「さて、もうこんな時間だしとりあえず風呂に入ってこい。私は食事を用意しておくから、風呂から上がったら食堂に来るといい」ふと時計を見ると午後5時を過ぎていた。いつの間にこんなに時間が経っていたんだろう

はい解散とガイアが手を叩き那奈は部屋に向かってすたすたと歩いていってしまった。研究員の人たちも思いっきり伸びをしている。

さて俺も風呂に入りますかー。部屋に向かって歩きだす。部屋は2日前に案内されたから場所は覚えてる…ただ研究所(ここ)広いからたまに迷子になるんだよなー

長く迷路のような廊下を曲がりなんとか自室に辿り着くと風呂場に向かい湯船にお湯を貯める。ここはボタンを押すだけで湯張りしてくれるシステム…などはなく蛇口をひねって湯貯めする形式なので面倒くさい。なんでワープシステム作れるのに風呂は蛇口式なんだ…

数十分後7分目くらいまでお湯が貯まったので入浴。うんちょうどいい湯加減である

水面に映る照明の明かりを眺めながらぼんやりと考える。先程の戦闘において那奈は剣を振り回すだけでなく妙な技も使っていた。あれがどういった仕組みで繰り出されているのか―――

――――――もしこのまま力が覚醒しなかったら、俺はここを追い出されるのだろうか、もし追い出されたらどうしようか。路上生活は嫌だなぁ…不安ばかりが頭の中で渦巻いてあく。やめやめもうこのことは考えないことにしよう俺はネガティブじゃない。ポジティブ思考でいこう


風呂から出て時計を見ると午後6時半前だった。うっそ1時間近く風呂入ってたのか、急いで食堂向かった方がいいかな

服を着てタオルを肩にかけたまま部屋を出て食堂へと駆け足で向かう。

食堂に着くと既に那奈が夕食を食べていた。今日はカレーらしい

「珍しく遅かったじゃないか。さては長風呂か?湯冷めしないように気を付けるんだぞ」そう言いながらガイアがカレーを持ってきてくれた。「そういやガイア…様って料理できるんですね。意外でした」「一瞬様付けするか悩んだな?別にガイアでいいぞ、今更だしな。まぁそれなりにはな。凝ったものは作れないが一般の家庭料理くらいなら」神様って料理できるのかと初めて知ったとき驚いた。だって神様って食べ物食べたり作ったりするイメージ無かったし。今度自分もキッチン借りて料理したいな

「ごちそうさまでした」那奈がぼそっと呟き皿を持って席を立つ。皿、俺のより一回り小さいけど、あの量で足りるのか?まぁ見た感じ食が細そうだし。胃袋小さそう

「那奈、食事が終わったなら話がある。ちょっと来てくれ」ガイアがそう言うと那奈は流しに食器を置いたまま食堂を後にした。食堂、俺一人になっちゃったな…

一人きりの食事なんて久しぶりだ。いつもだったら養護施設の子供たちと食卓を囲んでいたから一人で食事をすることはなかった。


しばらく一人でカレーを食べていると那奈が戻ってきた。ガイアはどこかへ行ってしまったようだ。

「なぁガイアと何を話していたんだ?」「別に、あなたには関係のないことです。そういえばこの食堂のルールとして、一番最後に食べ終わった人が食器洗いをするルールになっているんです。皿洗い、お願いします」

そう言い終えるとさっさと食堂を後にした。えー何それ…この2日間自分で皿洗いしてたけどそんなルールあったか?あいつも自分の食器ちゃんと自分で洗ってた気がしたんだけど…まぁいいや自分の皿洗うついでだし。意外と神様の作るカレーは旨かった





〔菅崎智:午後10時、自室にて〕

明日の準備も終えたしもうやることないんだよなーでも寝るには早すぎるし…ベッドをごろごろしてても暇なだけだしなぁ。何で部屋にテレビ無いんだよ。明日文句言ってやろ

…ちと早いが今日はもう寝るか。早寝早起き規則正しい生活をってな

部屋の電気を消し布団に潜る。この部屋窓がないから電気消すと完全に暗闇になるからちょっと怖い。

明日は確かえーと、健康診断とかやるんだっけか。身長、どのくらい伸びてるかな

そんなことを考えている内に睡魔に襲われそのまま眠りに就いた





















突然背中に電流が走ったような痛みがして飛び起きた。時計を見ると午前2時を回った頃であった。なんでこんな真夜中に、と思ったその時急に身体が異様に熱くなる。熱い!まるで全身炎に炙られているかのようだ!!もはや熱いを通り越して全身の神経が焼き切れそうなほどの激痛に襲われていて必死にシーツにしがみつき痛みが治まるのを待つが、痛みは治まることなく更に増していく。あまりの激痛に涙が出てきた。もはや自分が今どんな状況でどんな体勢をとっているのか全くわからない。

「う、ぐ、ぐガアアアアァァァァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!」

もはや脳が痛みを許容できなくなり思考も覚束おぼつかなくなってきている。俺、このまま死ぬのか?そんなことがふと頭をよぎる

次の瞬間心臓をわし掴みされたような感覚がした刹那、そのまま体外へと引っ張られるような感覚が襲う。息ができない苦しい苦しい助けて死にたくないほんとに死んじゃうんじゃ
























プツンと糸が切れるように意識が途切れた








ふと目を覚ます。気を失っていたのが数秒なのか数分なのか、数十分なのかはわからない。目を開くと自分の荒い呼吸音だけが部屋に響き渡り、目の前には黄色い光を放つ宝石のような、綺麗な楕円形をした石が、真っ暗な部屋の隅々まで照らすほど輝きを放ち宙に浮いていた。これ、手にとっても大丈夫だろうか

そっと触れてみると指先が触れた瞬間見えない何かに繋がれたような感覚が全身を走ったがそれはすぐに消えてしまった、手元には未だ黄色く輝く石。これがワールドディフェンダーとしての力の覚醒なのだろうか

「ようやく終わりましたか。廊下まで声が聞こえていたのでとてもうるさかったですが、無事済んだようで」ふと横を向くと那奈がいた。手にはタオルを持っている

「とりあえずかなり発汗してるのでこれでもどうぞ、拭いたらシャワーでも浴びたらどうです」タオルを手渡しながらそう告げる。うわっ結構汗かいてるな。まぁあれだけの痛みがあったなか発狂してのたうち回らなかっただけ誉めて欲しい

「えーと、お前が来るほど五月蝿かったか、悪かったな。もう部屋に戻って、寝ていいぞ」多分あまりにも五月蝿いから文句でも言いにきたんだろう。そりゃこんな深夜に騒がれたらたまったもんじゃないしな、那奈には悪いことをした

「まぁ文句を言ってもいいのですが、事前に女王様から今夜あたり覚醒するだろうと伺っていたので、こうして部屋を訪れたまでです」「え、もしかして、今夜力が覚醒、すること知ってて、何も言って、くれなか、ったの?事前にわかってたら、こんなに苦し、まなかったんじゃ…」痛みは引いてきたがまだ荒い呼吸をしていたので途切れ途切れに言葉を紡ぐ

「いえ、特に鎮痛剤などを打っても意味はないので。何も知らないままの方が良いこともあるのです」うーん確かにこの手のものは事前に身構えてても耐えられるものじゃなさそうだし…知らなくてよかったかも

「それよりも、その手の中にある石。それはソウルストーン。あなたの魂を具現化したものです。その石こそがワールドディフェンダーとしての証でもありそして急所でもあります。例えば」そう言いながら俺の手から黄色い石を奪うとそのまま床に落とした。床に石が落ちた瞬間一瞬身体全体が地面に打ち付けられたような痛みが走った

「このように、この石が傷つけられればあなたの身体にもダメージが及ぶ。そして肉体へのダメージを受ければ受けるほどこの石にヒビが入ります。完全に石が割れれば最後あなたは絶命する。まさにこの石と一心同体、というわけです」石を床から拾い上げ着ていた寝間着の袖で石を拭いてから俺に差し出してきた

「普段は実体化せず魂が元ある場所、胸の辺りにしまわれています。しかし戦闘時にはあなたの武器のどこかしらに埋め込まれ表面化します。せいぜい武器を奪われてその石を傷つけられないよう努力することです」「そうか、教え、てくれて、ありがとう」まだ呼吸が落ち着かず不自然な所で言葉が切れてしまったがお礼を言う「無理に喋らなくても別にいいですよ、私も覚醒したときは同じような状況でしたから」「その時は、誰か近くにいたのか?」「いいえ、私一人で覚醒の儀を終えました。周りに誰もいなかったので。その点あなたは幸運です。女王様が予め勘づいていたこと、覚醒後何かあったときすぐに対処できるよう準備が整っていたこと。もしこれが研究所ではなく人目につく外であったなら混乱を招いていたでしょうし」言い終えると背を向けドアの方へ歩き出す。

「今晩はこれで失礼します」お辞儀をし、ドアを閉じて部屋に戻っていった。

――あいつはこれほどの苦しみを一人でずっと耐えていたのか、誰の目につくこともなく、目を覚ましたとき誰もいない孤独感と恐怖に…

那奈はこの数日間共に暮らしていて感情を表に出すことはなかった。無くはないが、初めて会ったとき頭を撫でようと手を伸ばしたとき怒号を挙げていたが、今思えばとても珍しいことだったのではないかと思う

――――あいつが笑ったところ、見てみたいな



ん!?何考えてるんだ俺。あんな人形みたいな、ロボットのような奴にこんなに感情向けるなんてどうかしてるぞ、うん

さっさとシャワー浴びて寝よう。明日も朝早いんだし

箪笥から替えの寝間着を取り出し風呂場に向かう。疲れがどっと押し寄せてきてこのまま寝たかったが汗びっしょりのまま寝るのは嫌だった

再び眠りに就いた頃には時計の針は4時を指していた




――――――少し前の話だ。深夜眠っていたら突然身体に激痛が走り飛び起きた。全身が炎に焼かれるような痛みに包まれ、そのまま心臓をわし掴みされたような感覚が襲い、気がついたら手には青く輝く何かが握られていた。あまりの眩しさに顔を歪めるが持っているものが何なのか確認したくて手の中を見つめる。そこには楕円形の青い石だけがあり、この小さな石からまばゆい光が放たれていた。

これは一体何なのだ。

汗の雫が頬を伝いフローリングに垂れる。

何故だかわからないが嫌な予感がするのだ。自分はまたろくでもないことに巻き込まれるのではないかと

確信はないが根拠のない自信が身体を覆うかのようだった。

また何かに巻き込まれたとしたら、今度は自分が誰かを傷つけるのではなく助けることをしたいと、そう思ったのだ

だとしたら私は今運命そのものを手にしているのかもしれない。そう思うと自然と手に力が入っていた






「那奈、食事が終わったなら話がある。ちょっと来てくれ」女王様に声を掛けられ私は食器を流しに置いて女王様と共に食堂を出る。

廊下を少し進んだ所で立ち止まるや否や振り向き様に話し始めた

「今夜、彼の力が覚醒するだろう。波長が大きくなってきている、おそらく深夜にはなると思うが。彼一人では不安だろうからあまりにきつそうだったら側にいてあげてくれないか。お前も経験したからわかるだろう?」「確かにそれはそうですが…」

一瞬口ごもる。確かに苦しいし、息もできなくて命の危機も頭によぎるほどであった。だからと言って男の部屋に入るなど自分からしてみればありえないことだ。丁重にお断りしたい

「命令としてお前に命じれば受け入れてくれるか?嫌なのはわかるがこれから長い付き合いになるんだ。頼む」…そこまで言われてしまっては断れない。命令だと女王様もおっしゃっていたし…

これは命令であると自分に言い聞かせる

「かしこまりました。後はお任せください」

「うむ、頼んだぞ」そう言って女王様は去っていった。制御室に向かうようだ

さて、あの男に皿洗いを任せて準備にとりかかるとしましょうか




菅崎智の力が覚醒したのは数時間後の事だった







夕方4時過ぎ。学校を終え研究所に戻ってきて部屋でくつろいでいた…はいいがやることがなくて退屈である

あ、そうだ。部屋にテレビがついてないこと言いにいこうかな。つーかテレビがロビーに一個あるだけってなんだよチャンネル戦争勃発するぞ

とその時警報音が部屋に鳴り響いた。なんだ襲撃か!?

『出撃要請!出撃要請!都内某所において謎の生命体に襲撃されていると警察に複数通報が入っている。怪我人も出ている模様。直ちに出撃を!』

遂に来ちまったよこの瞬間が!あーもう嫌だせめて昨日のゾンビ犬であってくれ!

部屋を出て制御室へと急ぐ。入ると既に那奈が戦闘服を纏って待っていた

「来たか、遂に初出撃だな。と、いうことでいきなりだが出撃するためのステップ1、変身だ」「すごい呑気だなガイアさんよぉ!えーと変身?どうやるんだ」「簡単だ、胸に手を当て意識を集中させるんだ。自ずと戦闘服を纏うぞ」

と、とりあえずやってみるか。胸に手を当てその一点に意識を集中させる。と自分の服装が変わる感触があった。目を開くと戦闘服に衣装替えしていた

「うむ、ステップ1クリアだな。さて次はいよいよ出撃なのだが」「もう時間がありません。不本意ですが今回は私が現場に連れていきます」「おおそうか、では頼んだぞ。少年――無事を祈るぞ」

えっえっちょそれ何て言う死亡フラグ

「行きますよ。向こうに行ったら何をすべきかは現場で直接教えます」

そう言って那奈は指先で俺の肩をつついてきた。次の瞬間目の前の景色が歪みどこかへ飛ばされたような感覚がした。

地面に足が着く感覚で我にかえるとそこは襲撃現場であった


【To be continued…】


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