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7:探偵活動開始

「じゃあ、そろそろ行ってきます」

 一声そうかけ、僕は玄関部屋を後にする。

 扉一枚を隔てたリビングには、女王様とピクシーさんの二人がいた。どうやら転移用魔法陣の作成をしているらしく、リビングからは椅子やテーブルがなくなっており、代わりにでかでかと魔法陣と思わしきものが描かれていた。

 邪魔しては悪い気がするものの、エルフさんを殺した真犯人について知るためには二人の証言も必要である。特に、女王様はエルフさんが殺されていた部屋で眠っていたわけであり、重要な情報を持っている可能性が高い。

 どう言葉を掛けようか悩んでいると、ピクシーがきつめの口調で話しかけてきた。

「ちょっと、そんなとこで何ぼさっと突っ立ってんのよ。用がないなら邪魔だからさっさと部屋に戻りなさい」

「もちろん用事があるから部屋を出たんですよ」

 喧嘩腰で入られるとつい言い返してしまうのが僕の悪いところ。でも今回ばかりは少し役に立った。

「昨日は疲れていたので特に必要としていませんでしたけど、食料をわけてもらいたいと思って。さすがにお腹がすきましたから」

「トールキンが死んだ直後っていうのによくそんなことが言えるわね。普通こんなことになったら食べれるものも食べれなくなるでしょうに」

「いざ彼女を殺した犯人に襲われた時、空腹で動けずに殺されるなんて事態にはなりたくありませんからね。僕は皆さんほど強くありませんし、せめて万全の状態でいたいと思うのは普通の事じゃないでしょうか」

「……ふん。言っておくけど私はあんたが犯人じゃないって認めてるわけじゃないわよ。私たちクイーンを護衛してきた中にトールキンを殺すような人がいるわけないんだもの。犯人はあんたか侍のどっちかに決まってるんだから」

「僕には皆さんがどれほどの絆で結ばれてたのかは分かりません。でも、長時間共に生活してきたのなら、その分だけいろんな感情が詰まってるものだってことは想像できます。だから、皆さんの中に彼女を殺した犯人かいる可能性は捨てきれません」

「くっ……勝手に私たちのことを疑って、あの侍に寝首を掻かれればいいんだわ。もしあんたが本当に犯人じゃないっていうんなら、侍が犯人に決まってるんだから」

 もうそれ以上話したくないというように、僕に背を向けてピクシーさんが魔法陣作成を再開する。

 彼女にもいろいろと質問しておきたかったのだけど、この調子では話を聞くのは難しそうである。やはり喧嘩腰で対応してしまうのは不味かったか。少しばかり反省する。

 でも、このままここを立ち去る前に女王様に一つ質問しておきたいことがある。もっとも単純で、一番最初に聞いておかないといけない質問。

「女王様、一つだけお尋ねしてもよろしいでしょうか?」

「ちょ、あんた何クイーンと話そうなんて――」

「構いませんよ。何でしょうか?」

 再び怒りの感情を浮かべて僕を睨め付けてきたピクシーの発言を遮り、女王様は静かに首を縦に振った。エルフさんの死体を見た時と変わらず真っ青な表情。落ち込んだ雰囲気が全身から溢れているようで、見ているだけでこちらまで気分が沈むようだ。

 それでもなお見る者を魅了する、隠しきれない美しさと気品が漂ってくる。

 つい見惚れそうになった自分の頬を叩き、膝に床をついて畏まった。

「こんな質問をするのは大変無礼なことだと承知していますが、それでも是非聞いておきたいのです。女王様。女王様は犯人の顔や姿を一切見ていないのですか? 本当に、朝ハジメさんが女王様の部屋を訪ねるまでエルフさんが死んでいることに気づかなかったのですか?」

「……申し訳ありません。疲れていたせいか、何も記憶にないのです」

 いくばくかの沈黙の後、女王様はそう答えた。

 ここでの沈黙の意味が、ただショックを受けていて反応が遅れただけなのか、それとも心当たりはあるけれど何か話せない理由があるのか。僕の洞察力では分からない。ただ、即答しなかったという事実は、知っておいて損なことではないだろうと確信した。

「質問に答えてくださって有り難うございました。それでは、失礼します」

 立ち上がり、大きく一度頭を下げる。と、もう一つ聞いておきたいことを思い出し、今だ睨み付けてくるピクシーへと視線を向けた。

「トロルさんって、昨日と同じ部屋にいます?」

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