あるオッサンのたくらみ
コマンド「小説情報を見る」を覚えました。
まさかの読んで下さった方々が居る…Σ( ̄ロ ̄lll)
あまつさえブクマして下さっている方が!?
…み、身内か知り合い? 垢バレこわいけど読んでいただけるのは凄く嬉しかったです。
ありがとうございます。
2017/1/21、
気になったところをちょいちょい弄ってみました。おそらく読む人が気になるレベルでの改善は成っていないと思いますが。
「ぶちょー」
「んー?」
「…いや、あの…楽しそっスね」
「うーん? 楽しいよ」
上機嫌で応えながら手は止めない。
いつも通りシャツの袖を捲りあげ…さすがにネクタイは締めたままだが、適度に着崩した格好でパンに市販のタルタルソースを塗りつける。ソファーの後ろから覆い被さるようにして覗き込んでいる織谷の気配を感じながら、その姿を視界に入れないように淡々と作業を続ける…なぜなら、まぁ見たら絶対に吹いてしまうからな。
いつもなら人の財布でウキウキ買い出しにいく織谷が、めずしく昼飯をいらない言った土曜。俺たちは都内の端に辛うじて引っかかる市の片隅、従業員3名程の小さな小さな営業所に来ていた。こうした小さな拠点を週に1~2回廻りつつサポートするのも俺たちの仕事の一つで、入社8ヶ月程の織谷は俺にくっついて仕事をおぼえている最中な訳だ。
同期はとっくに一人立ちしてあちらこちらと飛び回っているのに、俺の下についてしまったことが織谷の不運か、彼の一人立ちは未だ見えない。通常半年ほどで終える引継ぎと研修だが、社内でも仕事を作り出す特殊ポジションに、長いこと一人で居過ぎてしまった俺の下に配属されてしまったが故に織谷の明日は見えない…というか、引継ぎ自体が終わるかどうかも定かでなく…
そもそもこの仕事量を一人でこなしていたのがおかしいのだと、人に引き継ぐ段になるまで気付かずにいた俺も相当の間抜けだ。
仕事を人に渡すのだって、整理してある程度のマニュアル化は必要で、そのノウハウを何の経験も無い新人に叩き込もうってのが間違ってると思うのだが、当の本人は飯喰い行く度に
「ぶちょーと一緒だと飯うまいからラッキー」
…にゃろう、かわいいこというじゃねーか。
いいんか、若人? 正直、スーパーの寿司がランチ用の最安値で無いくらいで誤魔化されてくれるなら助かる。
実際、長いことぼっちオジサンだった俺が、何とかうまくやれているのは織谷のかわいげによるところが大きい…23歳男子のかわいげとは…ってか、最近の男子って皆こんなにかわいいのか…って、いやいやいや。
そんな訳で年が明けて最初の週末、俺たちは溜まった仕事を片付けていたのだが、いざ昼飯の買い出しに出る段になり、織谷のヤツが小癪にも正月太りを気にして固形メイトで昼食を済ませたとか言いやがる。
「ありゃ満腹感が無いわりにカロリーあって、ダイエットには向かないんじゃないか?」
とか、
「本当にいらないのか? 手が離せないなら俺が買ってくるぞ」
とか、
親戚のオジサンよろしくウザい心配を一通りした俺を、そりゃもう硝子ハートにぴしりとヒビが入りそうなくらい釣れなく追い出した織谷が今、そわそわと応接セットの辺りを行きつ戻りつしながら
「うまそっスね」
で、ある。当然、織谷は自分の分が無いのを分かっているわけだが、どうにも気になって仕方ない様子だ。
俺は、まぁ笑いを堪えるのに必死で、震える手先を抑え2枚目のパンにタルタルソースを塗る。
応接テーブルの上にはローストビーフの切れっぱしやら、エビフライに野菜コロッケ、カットサラダに食パン、タルタルソースなどの食材がところ狭しと並べられ、所長が帰ってきたらカミナリ間違いない。
(一応俺のが偉いんだが…)
「…うまそっスね」
「うん。まぁ、うまいんじゃないかな」
ヤバい、顔がニヤける‥‥こいつ本当に面白いな。まぁ思った通りあんなブロック1つで足りるわけがない。心配しなくても、食パン4枚も一人で喰えるか。と、心のなかで呟きつつ、そっけなさを装ってタルタルソースを塗ったパンに、カットサラダとエビフライを挟み、もう1枚にはローストビーフの切れっぱしとサラダを挟み込む。と、後方の思った以上に近い距離から唾を飲む音が聞こえて…ダメだ苦しい。
堪えきれずソファーに突っ伏した俺の様子に、ようやくからかわれていることに気付いた織谷が、やや垂れた目尻に涙っぽいものを浮かべながら必死に吊り上げてみせ…って、もっとダメ。
タレ目が、タレ目が横一文字にしかなってない! 釣り上がってないぞ織谷!!
いい男なのになぁ…腹ぁ抱えた、、腰砕けたわ。
お読み頂き、本当にありがとうございました。