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色違いnoあらかると  作者: 桜乃 葉
第2章
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第64話

曇り空から時折、太陽が覗く空模様。

色々なこと(大抵は佐伯さん絡み)が有りつつも迎えた児童養護施設でのステージ当日。

オレは朝から機材の運び込みの手伝いをしていた。


「兄ちゃん!!こいつは丁寧に運んでくれよ」

「わかりました!!」


搬入を取り仕切る親方と言うべき人から指示を受けながら、オレは指定の場所へ機材を運んで行った。

専門的なことが判らないからと力仕事を買って出たが、これはこれでただ運べはいいというものでもなく勉強になることが多い。


「お疲れ様です。慎くん」


あらかたの作業が終わり、休憩を取っていると紗菜からスポーツドリンクの入ったコップと労いの言葉を貰う。


「いや、そっちこそ外は暑かっただろ?」

「今日はまだマシな方ですよ。日差しも強くなかったですし」


紗菜は今回のステージの件を話すと、すぐに協力を名乗り出てくれて、舞台の完成まで園長達と一緒に子供達を連れて外まで遊びに行ってくれていた。

今頃、子供達は突如出現したステージに驚いていることだろう。


「李華は迷惑かけてなかっただろうな?」

「ふふっ子供達から大人気でしたよ。子供達の中心になって遊びからお昼ご飯の時まで先導していましたし」

「まぁあいつの精神年齢は子供達と一緒だしな。言わばボスザルみたいなものだろう」

「もう!そんなこと言ったら失礼ですよ慎くん!!」

「李華に?」

「もちろん子供達にです」

「「ははははっははっ」」


オレと紗菜は思わず吹き出し笑い合った。

李華に聞かれていたら面倒なことになりそうではあるが、今はネタにさせてもらおう。

とはいえ今日もなんやかんや言って手伝いをしてくれているし、夕飯くらいは李華の好物を用意してやってもいいかもしれない。


そんなことを考えている後方から視線を感じた。

『李華かっ!!』と思い恐る恐る振り返ると、そこにいたのは予想外の人物だった。


「(じぃ~~~)」

「あれ?誠二くん?」


オレの視線の先を追っていた紗菜が名前を呼ぶ。

こちらを覗き込むように見ていたのは、かつてオレの脛を蹴り、また『結婚式ごっこ』ではオレを助けてくれたヒーローでもある。


「どうしたの?何かあった?」


いつもそうしているのか紗菜は誠二くんの傍まで行くと目線を合わせて優しい声で尋ねた。


「紗菜…オレ…………やっぱりいい!!」

「誠二くん…!!」


誠二くんは何かを言いかけたが、オレの顔をチラッと見ると駆け出して行ってしまった。


「あれ?誠二くんが走ってったのって玄関の方じゃないか?」

「私、追いかけてみます。慎くんは残って石川先輩の方をお願いします」

「悪い。もうすぐステージも始まるから誠二くんをよろしく頼む」


紗菜には悪かったがステージの方の のあの様子も気になる。

それに誠二くんもオレより紗菜の方がすんなり話ができるだろう。


紗菜を送り出したオレはステージの暗幕の裏に移動すると佐伯さんに毎度の如くの確認をされ、そのうちにステージの開始時間を迎えた。


-ガラガラ……-

控え室にしていた部屋の扉が開く。

出てきたのは、のあ…いや、そこにいたのはアイドル『NoeRu』だった。


「慎弥、行ってくるね」

「お…っ…おう…」


普段と変わらぬトーンで掛けられた言葉にオレはまともな返答が出来なかった。

NoeRuの存在感はそれほどに圧倒的で、

今までは映像で観るNoeRuは のあの延長線上であると思っていたし、実際に特別な印象はなかった。

しかしどうだろう。

今、オレの前にいるのは全く別の存在にすら思える。

堂々としているその様は、まるで芸術作品のようだ。


-カシャッ-

突如、フラッシュと共にシャッターが切られた音がする。

いつからいたのか、そこには男性カメラマンがいた。

佐伯さんが『資料映像が欲しいのでカメラを設置したい』と言っていたし、それの一貫なのだろう。

それにしてもビックリしてしまったオレとは違い、NoeRuとして撮影されることに慣れているのか、のあは集中を切らすことなく流していた。


「NoeRu」

「どうもありがとう」


佐伯さんが慣れた様子でNoeRuにマイクを渡す。


♪~~♪~~

イントロが流れ始める。

その曲はオレが初めてここに来た時に子供達が聞いていた曲だった。

子供達はすぐさま反応しリズムに乗っている。

まさかこれから本人が登場するとは露ほども思ってないだろう。

佐伯さんが暗幕をずらし、人1人分が通れるスペースを作る。

そこを出るとNoeRuの特別なステージが始まったのだった。




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