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色違いnoあらかると  作者: 桜乃 葉
第2章
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第57話

「あれ?思ったより大丈夫そう…」


テーブルに載せられた四品の料理を見ながら紗菜ちゃんが小声で言った。


「『大丈夫そう』って何が?」

「いえっ!?一人一品ってことだったので…時間が『大丈夫かな?』って思っただけで!!」


紗菜ちゃんの言うようにそれぞれが一品ずつを担当し、紗菜ちゃんがロールキャベツを、白崎先輩がスープ、李華ちゃんがサラダ、私がパスタを作った。

料理上手の紗菜ちゃんが割り振りをしたとはいえ、ほぼパスタを茹でるだけで終わった私にとっては消化不良だったが、時間優先だったので仕方のないところだ。


「朱音先輩って料理慣れしてるんですね。手際もいいし勉強になりました」

「まぁ作ることも多いしね。それより紗菜くんこそウワサには聞いていたが細かいところまでしっかりしていて素晴らしかったよ」

「そ、そんな!?恐縮です…」


やはり料理をしている人は調理中にも観察するポイントがあるのか、二人の話にはついていけそうがない。


「ねぇ紗菜。私は~?」

「う、うん…李華ちゃんも頑張ってたよね」

「でしょ~」


実際、包丁を使う食材は紗菜ちゃんが切り、李華ちゃんの作業はレタスをちぎって皿に盛っただけだったが、紗菜ちゃんも『まぁ李華ちゃんは学校の調理実習でもこうですから…』ということなので問題はないのだろう。


「あっ!石川先輩はナポリタンを作ったんですね」

「えっ…それペペロンチーノだけど…」

「……だいぶ赤いですね」

「ハバネロパウダー入れたから。やっぱりハバネロパウダーってすごいと思うの!慎弥の風邪だって治しちゃったし!!」

「どんな奇病ですか…普通に薬と自然治癒力だと思います…」


紗菜ちゃんは不思議な顔で何かを言っていたが、やはり私の料理の完成度に驚いているのだろう。


「のあくん…ちなみに味見はしたんだよね?」

「よく『味見は太る』って言うじゃないですか。良いことじゃないってことですよね?」

「それは普段から作ってるからこそ言えることなんだが…」


私の返答に白崎先輩はいつもの冷静な表情を歪めた。


「うん♪やっぱり美味しいね」

「「「……………」」」


その後、始まった夕飯を食べながら私が言うと、三人は何故か口を開くことなくうつむいたままだった。


「あれ?みんな、どうしたの?箸も進んでないみたいだし」


私が自分で作ったペペロンチーノを食べながら続けたが、食事中にその返答が返ってくることはなかった。

それからは家事に慣れている紗菜ちゃんの指示で片付けを手早く終わらせ、各自が入浴を済ませると、揃って私の部屋へと集合となった。


「……………」

「「「……………」」」


だが私にとってもこの展開は予想外と言わざるを得ない。

とにかく空気が重い。

初めは女子会らしいトークということで誰からともなく『恋バナ』ということになったのだが、話題をスタートしてから誰も口を開かない。

そもそもメンバー的にムリはあった。

白崎先輩は言わずもながだし、李華ちゃんの性格も恋バナ向きではないだろう。

唯一、期待していたのが紗菜ちゃんだったが、よくよく考えれば人見知りの紗菜ちゃんが率先して喋ることはないだろう。

この時、私は思った。

『私達の青春って…』と。




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