第47話
「ちょ…!誠二くん!!どこまで行くの!?」
誠二くんに手を引かれたまま、私達は施設の外まで出てきていた。
「……………」
「ね?みんなには外まで行くなんて言ってないし」
「……………」
私の問いかけに誠二くんは答えようとはしない。
いつもは仲良く話せていると思っていたのもあり、『何かあったのではないか?』と誠二くんとこのまま戻ることは躊躇われた。
そのうち、みんなを何度か連れて遊びに来ている公園の側までやってきた。
「公園で少しお話ししよっか?」
「うん………」
やっと誠二くんの声を聞けた安心感を得ながら、私は誠二くんを公園のベンチに導いた。
「ねぇ?誠二くんは誰かに頼まれて私を連れ出してくれたの?」
「違う」
「じゃあ何であんなことしたの?」
私が言うと、誠二くんは顔をしかめた。
「じゃあさ…紗菜はアイツにキ……キスされても良かった訳?」
「いや…あの~それはね…」
本音から言えば間違いなくOKだったのだが、誠二くんが恥ずかしがりながら、そのことを話す様子を見て、子供達への配慮が足りなかったのかもしれない。
「だってアイツでしょ?紗菜のこと傷つけたの…」
「それは…それは違うんだよ…」
確かに私は慎くんに距離を置かれ傷ついた。
元から人付き合いは苦手だったが、それによって一時期は更にひどい状態にもなった。
でもそれは私が自分のことで精一杯になり、慎くんが何を思ってそんなことをしたのか考える余裕がなかっただけ。
傷ついたつもりになって、本当に傷ついている人に何もしれあげられなかった後悔。
「慎くんは私を守ってくれていたの。でも間違ってた。本当はみんなで乗り越えなきゃいけなかったことだったのに…慎くんに全部押し付けて」
「そんなの分からないよ…」
「ゴメン分かりにくかったね。私ったら相変わらず話ベタで」
誠二くんは私が施設の手伝いに来て最初に仲良くなった子だ。
話ベタの私の話を辛抱強く聞いてくれてくれる優しい子。
だから今回も私のことを心配してこんな行動に出たのだろう。
「お姉さんなのに、誠二くんには迷惑ばかりかけちゃってるね」
「そんなことない!!紗菜は僕に優しくしてくれた!!紗菜は悪くない!!悪いのは全部アイツで…アイツで…」
「今は分からないみたいかもだけど、誠二くんにもきっと慎くんのこと判る日がくるよ」
優しい誠二くんには同じく優しい慎くんのことを悪く思ってほしくない。
人を悪く言うのは簡単だ。
それは以前、学校で『s2kr』のことで責められた私にはよく分かる。
だからこそ誠二くんには人の良い部分に目を向けてほしい。
「みんなが心配するよ。もうそろそろ戻ろっか」
「…………うん…」
少し迷いつつも、誠二くんは私が差し出した手を握ってくれた。
きっと二人なら分かり合って仲良くなれるハズだ。
だって誠二くんだって悲しい思い、辛い気持ちを知っているのだから。
そう思いながら私は誠二と二人、施設への道を歩き始めた。




