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色違いnoあらかると  作者: 桜乃 葉
第1章
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第3話

千坂家リビング。

ここで今まさに有罪(警察に通報)か無罪(しかし土下座までは覚悟)を決める裁判が執り行われようとしていた。

まさか自分の部屋に突入して罪に問われる日が来るとは思いもしなかった。


・被告人『千坂慎弥(オレ)

罪状『覗き(しかし故意ではない)』

・被害者『石川のあ(学校で話題のアイドル)』

被害『覗かれたことによる精神的苦痛(じっくり見るどころではなかったので是非とも減刑をお願いしたい)』

・裁判長『千坂李華(人選ミス)』

・弁護人『千坂李華(人選ミス)』

・検察官『千坂李華(人選ミス)』


「慎にぃが失礼なことを考えているみたいだから有罪で」

「ごめんなさい!!謝るから公平な判決を!」

「でも覗きなんて女の敵だし。あっ。でも慎にぃは昔から女の敵だったもんね」

「中学でのことは関係ねぇだろ。そもそも覗くつもりはなかったんだって。あそこはオレの部屋じゃないか」


中学の話題にされて紗菜のことを言われるのは避けたかったので、こちらから先にカードを切る。


「?????」


当然のことを言ったはずなのに李華の反応がおかしい。


「あぁ。慎にぃの部屋、もうないから」

「……なんで?」


妹の言っていることが理解できない。

高校入学を明日に控え、キャラ作りと称して髪を金に染めてきた(校則違反)李華だったが、実は偽者なのではないのだろうか?


「今日からのあさんも一緒に住むから」

「聞いてないんだけど…」

「夕飯は3人分って言ったでしょ」


それで気づけとは、オレの妹は無茶を言う。


「で、あの部屋は今日からのあさんの部屋だから」

さらには生活スペースまでも失ったようだ。

「オレは何処に住むんだ」

「刑務所」


李華は家族から犯罪者が出ることを躊躇しない強い子だった。

とりあえず弁護人が弁護しないので示談に持っていくことにする。


「のあさんだよね?まずはゴメン!わざとではなかったんだ」

「えぇ…そこは話を聞いていて分かったわ」


返答があったことに安堵したが、最初の印象が最悪だった為か表情は固いままだ。

しかし、さすがは現役アイドル。

アイドルなどに興味のないオレも、こんな人生の岐路でなければ見惚れていたかもしれない。

学校で紳士協定を結んでいた奴らの気持ちも多少だがわかってしまう。


「じゃあ、のあさん。今日から一緒に住むってのはどういうこと?」

「のあでいいわ。私の転校の条件に『一人暮らし禁止』っていうのがあって…」


話を聞くと、なんでも両親と所属事務所に転校の許可までは取り付けたが、最初は事務所から誰か女性社員を付けるという話だったらしい。

その辺りはトップアイドルとして事務所が彼女にどれだけ賭けているのかを感じた。

事務所としては彼女に辞められでもしたら一大事だし、かといって放任して何かあっては同じことである。


「誰か一緒じゃダメだったの?」


ここまでして貰えるのだって異例なはずだ、ワガママを続ければ業界で悪い噂だって立ちかねない。


「ワガママだってことは分かってる。でも私には自由に使える時間が必要で、だからお母さんの友人である、貴方達のお母様を頼ったの」


今の状況でオレにそこまで話す必要がないことを、のあは多分、分かっている。

先程までのやり取りを見ていれば千坂家における力関係は残念ながら把握しただろう。

正直、転校してまで何がしたいのかは全く分からない。

だが、のあにとって重要な何かの為に、ここまで来たことは理解した。


「じゃあ、のあに約束して欲しいんだけど」

「なっ、なに?」


のあの話を聞いて感情移入しすぎたせいか忘れていた。

彼女の下着姿を見たばかりということに。

そんなつもりは全くなかったが、彼女の目は『エロい要求をされるのでは』と怯えているようだった。

さらにオレは、危険人物がいることすら忘れてしまっていた。

さっきのオレと、のあのやりとりの聞き、李華がスマホを取り出し、番号を『1』『1』『0』と入力しているのを。


「おい李華。お前、どこに電話するつもりだ」

なんとしても通話ボタンが押されることだけは阻止しなければ人生が終わる。

「慎にぃ。これ以上は罪を重ねないで!!」

「何をそれっぽいセリフ言ってんだよ!お前に言われたって響かねーよ!!」

「じゃあ、やっぱり私を……」

「何もしねーから!大丈夫だから!!」


それから二人(李華は完全に悪ふざけだが)を落ち着かせるのに10分の時間を要した。


「じゃあ改めて。オレからは二つ。不慮の事故の件はお互いになかったことにすること。そして、オレを家から追い出さないこと。部屋は1階の和室を使うから」

「それは構わないけど、和室には私が行くわ」

「和室だと鍵がないし、いくら李華がいるとはいえ、鍵がかかった方が安心でしょ?」

「慎にぃがこう言うんですから使っちゃってください。実は慎にぃの荷物は既に和室ですから」


あぁは言っていた李華だが、刑務所以外にも部屋は用意してくれていたらしい。

本当は優しい部分が残っていたらしい。


「それと、さっき二人の約束ですけど、私は関係ないから慎にぃには罰を受けてもらいます」


そう言えば、無条件に優しい妹は見たことがなかった。


「そんな悪いよ」


のあはそう言ってくれたが、李華の中では決定事項だろう。


「そういう訳で慎にぃ。私はのあさんと上で罰を考えてくるから夕飯の準備よろしく」

「お手柔らかにな…」

「夕飯の準備までごめんなさい。えっと…」

「そういえば自己紹介してなかったね。オレは千坂慎弥。慎弥でいいから」

「慎弥?慎弥ってもしかして…」

「さぁのあさん行くよ」


のあは何か不思議そうな顔をしていたが、李華に連れられてリビングを出ていった。


その後は問題もなく、3人で夕飯を食べ、のあに家での決まりごとなどを教えた(ついでに広から李華に頼まれた伝言も)。

懸念事項であった罰の方も『明日、帰ってから、のあの買い物に付き合う』という罰にしては軽すぎるものでホッとした。


次の日の朝。

アイドルと一緒に登校するとマズイということで、のあが先に出掛け、今日からまた同じ学校の制服を着ることになった李華と家を出る。

途中、李華の金髪(叱られることは確定的)が周りから注目を集めたが、のあの転校があったばかりの学校にはインパクトが足りず、悔しがる李華というレアなシーンが見れたりもした。


家と学校。新しく始まった日常に期待を持てそうと思っていた頃。

オレにとって激動を呼びそうな出来事が起こったのは入学式の途中だった。


『新入生代表。望月紗菜。』


「えっ!………なんでここに」


ここにいるはずのない人物の名前が呼ばれたのだから。








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