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色違いnoあらかると  作者: 桜乃 葉
第1章
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第22話

あれから数日。


「部長。頼まれてた分の仕事終わりました…」

「じゃあ次はこの資料の整理を頼むよ」


オレは何故か新聞部で働いていた。


「ここって新聞部ですよね?なんでこんなに未分類の書類がたくさんあるんですか…」

「新聞部にとって情報は生命線だからね」

「だったらきちんと整理してくださいよ…」


その生命線はゴミグズ状態で放置されていた。


「そもそもオレが呼ばれてまで片付けしてるのに広のやつはどこに行ったんですか?」

「用事があって休んでいるよ」

「それもう三日連続で聞いてるんですが…」


ここのところ、広は『用事』と言って連日部活を休んでいる。

そのためオレが代わりに呼ばれ、いい迷惑をしている。

本人に問いただしても、はぐらかされるばかりだ。

部長には説明してあるのか、部長からはなんの話もない。

オレが広の代わりに部の手伝いをして家のことが出来ないため、生活に支障が出かねなかったが、のあと李華はここのところ毎日帰りが遅く『夕飯なら大丈夫』とか、あまつさえ『自分でやる』などと今まででは考えられないようなことを言い出し、本気で精密検査を受けさせに行った方がいいのではないかと思っていたほどだ。


「なんだい?何か悩みでもあるのかい?」


部長が珍しく心配してそんなことを言ってくれたが、今の話をそのまましたのでは二人にバレた時が怖い。


「いや~こないだ変な人に会っちゃいまして」


とりあえず別の話題でお茶を濁すことにする。

綾さんには悪いがネタにさせてもらおう。


「変な人?君の周りには変な人しかいないじゃないか」

「確かにそうかもですが…」


否定できない。


「で、次はどんな変人が加わったんだい?」

「はぁ…変人集団みたいに言わないでください…簡単に言えば痴女ですかね…」

「新種か、良かったじゃないか」


別にオレは変人採集している訳ではないんだが。


「とにかく!!モデルみたいにキレイな人ではあるんですが強引というか」

「新種か、良かったじゃないか」


オレは美人採集もしていない。


「綾さんっていうんですが、仕事でこっちに来ていたみたいで」

「綾?慎弥くん詳しく聞かせてくれないか?」


予想外の部長の反応だったが、オレは綾さんと会った時の状況を話した。


「なるほどな…少し待っていてくれるかい?」


そう言うと部長はどこかに電話をかけ始め、しばらくすると相手が出たようだ。


「くたばれ」

-ブツッ-


「えっ!?」


部長らしくない子供っぽい暴言と、言うだけ言って即ギリする態度に開いた口が塞がらない。


「慎弥くん。もう絶対に綾とは関わるな」

「もしかして知り合いですか?」


さっきの電話と『綾』という呼び方からはそうとしか考えられない。


「不本意だが親戚だ」


部長は心底嫌そうな顔を見せた。


「親戚って…あぁでも確かに」


考えてみればクールな感じや強引さ、顔だって親戚だと言われれば確かに近い部分もある。


-♪~~♪~♪~~-

-ブツッ-

「君が何を言いたいのかは敢えて聞かないが、忠告はしたからね」


部長はそう言いながら、さっきから鬼のようにかかってくる折り返しの電話を切りまくっていた。


「じゃあ何かあったら相談しても?」

「断る!!」


部長の心からの拒否にオレは大きな不安を抱えたまま無言で仕事を続けた。


*******


「疲れた…」


家に帰ると同時にオレはソファーへと座り込んだ。

だが、それに反応する人物はいない。

のあと李華は今日も帰りが遅く夕飯を用意する必要もない。

最初は『楽でいい』なんて思っていたが、それも続けばむなしいだけだ。

余計に一人でいることを意識してしまう。


「なんだか、こういうの久しぶりだな…」


かつて、自分の責任ではあるが、中学で動画の件がバレた時はこんな感じで一人でいる時間が当たり前だった。

当時は嫌がらせは結構あったし、陰口なんて日常茶飯事だったこともあり、一人きりであることを選んだ。

そのおかげで勉強ぐらいしかやることがなかったために、近場にあっても偏差値の高めだったことから、地元民でも受験人数が少ない杜下高校に入れたのだから悪いことばかりではないのかもしれない。

それでも一年の頃は同じ中学から進学した奴らに秘密をバラされないかビクビクしていたし、他の高校に行った奴らには会うと今でも白い目で見られる。


「(『盗撮した』なんて言ってるやつが本当は撮影していないどころか、本人は女装して映っているなんて誰も気づきやしないよな)」


のあが転校してきてからは、にぎやかなことが多かったし、学校でも以前よりは居づらい感じはなくなっている。

それだけに一人でいる状況に寂しさを感じているのかもしれない。


「こんなのは慣れてると思ってたんだけどな…」


-みぃ~-


感情に浸っていると、えるがすり寄って来た。


「悪い悪い。お前がいるもんな」


撫でようと手を伸ばすと、えるはそれをすり抜けて下へと降りた。


-カランカラン-

「…………………」


降りたえるは、こないだオレが買ってきたネコ用食器をぺしぺしと叩いていた。


「悪かった……お前にはゴハンやらなきゃだったな…」


慰めてくれる人物などいない中、オレは本日の唯一の家事である、えるのゴハンを用意した。





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