旅立ちの朝は辛い
俺の名前は塩釜賞多。冴えない高校生だ。一般的なリア充とは縁遠い学校生活を送っている。ところがある日、キキィィイイイイイイ!ドーーン「なんだ!??」。車。俺は轢かれた。気が付くと、目の前には見覚えのない緑青色の光景が広がっていた。数百メートル先には中世の町のようなものが広がっているが…?喉が渇いた。ここはすごく暑い。意識がもうろうとしてきた。よく見たらあたりに生えている草も見たことない形のものばかりだ。…大丈夫ですか?…。誰かの声がする。うまく返事できない。…喉が渇いてるんですね。これを食べてください。…そういって声の主は何かを渡してきた。…現地の植物だろうか。ジャガイモのような形をしている。ほおばってみると、味もジャガイモに近い。「エリックジョンゲルですよ。」あどけない笑顔の町娘だった。「異世界から来たかたですね」
それから俺はその町娘セイラの家に世話になり、魔術師としての才を見出され、それからはもうめちゃくちゃに魔術を練習した。この世界においての名前ももらった。スラッタ・エリックジョンゲル。「エリックジョンゲルを食らうもの」という意味だ。俺はこの名前を誇りに思ってるし俺の命を助けてくれたセイラやエリックジョンゲル、魔術の才を見出し教鞭をふるってくださったライラス老師、俺を温かく迎えてくれた村の若者たち、中でも、ウルベスター兄弟やアラン、フィックスはもう兄のような存在だ。みんな、サンキュな。
そろそろ俺は自分の役目にきづいていた。この街を出て、くそったれな魔王軍を倒さねばならないことを。町娘セイラは名残惜しそうだった。町を出るときには盛大なパーチーが行われた。町のみんなが総出で来てくれた。たくさんの食物とエリックジョンゲルが並べられた。みんな、センキュな。みんあのためにも俺は期待に応えなくちゃいけない。そして俺には期待に応える力がある。…それに気づいたのはつい最前だった。この世界の魔術とは物質のエネルギーを借りて、さまざまな自然現象をかたどる技術だ。そしてその威力は借りることのできる物質のエネルギーで決まる。俺の場合その物質はエリックジョンゲルだ。俺はエリックジョンゲルが俺のグルメ細胞と適合したことを感じた。そして俺は本来エリックジョンゲルが持つエネルギーの3~4倍のエネルギーを取り出すことができるのだ。俺はみんなの笑顔を取り戻さねばならぬ。二度と魔王軍にこの村をけがさせやしない。俺は皆に見送られて村の入り口を出た。エリックジョンゲルを片手に持ってほおばるシルベスター兄弟の弟、ゴワノフスキー・シルベスターの目が獣のようにギラついていたのには気づいていた。
違う世界に転生したら魔術師だった件~Dawn of dark night~ 第一話 旅立ち篇 完