その8:街に着く前にやる事
翌日
昨日猛威を振るった風邪は、すっかりその身を消滅させたらしい。
あの秘薬のお陰だな。
「お腹減った〜......」
風邪が治って気が楽になったからか、忘れていた空腹感が蘇ってくる。
すると何処からか良い匂いが漂ってきた。
屋根裏部屋から降りると、凛さんが鍋でお粥を作っていた。
この国の主食は、やはりと言うべきか米だった。
前世が日本人だった俺にしてみれば非常に有難い。
「おはよう、身体はもう大丈夫なの?」
「はい、お陰様で」
この通りですよ!と軽くジャンプする。
「でも今日1日無理は厳禁だよ?」
「わ、わかってますよ......」
釘を刺されてしまった......。
「ほら、お腹減っただろ?食べなよ」
木の器にお粥を入れて渡してくる凛さん。
「それとも、食べさせてあげようか?」
少し悪戯っぽい笑みを浮かべてくる......。
「お願いできますか?」
まさか本気にするとは!?って顔をしている。
ふっふっふっ......この俺をからかおうとは10年早いですよ凛さん!!
「まだですか?」
いたって真面目な感じで首を傾げる。
これで後戻りは出来ないぜ!
「わ、わかったよ」
どうやら観念したらしく、木製の匙でお粥を掬い。
フーフー、と冷まして俺の口元に運んでくれる。
「はいエリス、あーん」
「あーん!」
食べようと口を閉じた瞬間に引き抜かれてしまった。
目の前には、してやったり!といった顔をした凛さんがいた。
なんだと!?
最後の最後で逆襲を受けてしまったようだ......。
ぶー、と頬を膨らませてると。
悪い悪いと言って今度こそちゃんと食べさせてくれた。
この人絶対に悪いと思ってないよ......ジト目で凛さんを見る。
あ、お粥美味しい。
「その顔だとお気に召したようだね」
おっと、顔に出てしまったか。
仕方ないじゃないか、腹減ってたんだもん!
よく言うじゃん、空腹は最大のスパイスだって。
そんな事を考えている内に完食。
食後にと渡された果物をかじっていると、片付けを終えた凛さんが話しかけてきた。
「エリス、これからの事について話して良い?」
「もちろん!」
それは俺も気になっていた所だ。
「これから3日で街に着く、その前にエリスには護身として剣を教えたいと思う」
「剣ですか?」
コクッ、と頷く凛さん。
「まず、街の中といえど絶対に安全って訳じゃない」
そうだよな〜......奴隷がいるような世界だもんな。
「次にエリスの種族。
この国では猫人族は珍しいから目立つと思うの。目立つと注目を集めるし、何より危険。
奴隷商人からしたら格好の獲物だからね」
凛さんが言うと妙な説得力があるな......。
「まーエリスの場合は、種族抜きにしても美少女だから気をつけないとね」
マジか......。
「やっぱり容姿が良い方が価値が高いんですか?」
「そりゃそうだよ」
ですよね〜......。
「だからエリスには、街の中ではバンダナで耳を隠してもらうよ。
あと尻尾は腰に巻いて隠して。」
腰にって、サイ◯人かよ......。
確かに尻尾は俺の弱点だが......。
「わかった?とにかくあと3日で出来るだけ鍛えるからそのつもりで」
「わかりました〜.....」
耳がペタンと垂れる。
あーーー!!もう!
ウジウジしても始まらない。
やるからには全力でやってやる!
こうして俺の長い三日間が幕を開けた。
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