その5:そ......そんな〜!
ガタン......ゴトン
今俺は、馬車の後部にある荷物を入れる荷台に体育座りしている。効果音で電車と思った人は残念でした!異世界に電車はありません!もちろんテレビもねぇ、ラジオもねぇ......某英訳するとレッツゴー?になる人の有名な歌が脳内再生される。
でもこれ、結構ぎゅうぎゅう詰めなのにかえってそれが落ち着く......これも猫人族になった影響?猫は狭い所を好むって聞いたことはあるが。
「大丈夫かい?」
すると、従者席と荷台を遮っていた布をめくって凛さんがひょっこり顔を出した......いきなり顔を出されるとビックリするんだけど、まぁいい、許そう!!美人は正義なのです!
「はい。ちょっと窮屈ですけど、逆にそれが落ち着くってゆうか......」
「そうかい......まっ、辛くなったら言ってね」
「わかりました。ありがとうございます」
なぜ俺が、こんな窮屈な荷台に詰め込まれているかと言うと、凛さん曰く目立つからだそうだ。
何でも、ここは島国|(?)らしく、この島には猫人族がほとんどいないそうだ。
俺の様な種族は『亜人』と呼ばれている。まぁーぶっちゃけ、人間族以外は亜人と呼ぶそうだ。
そして、この国では猫人族は珍しいらしい......珍しいを通り越してほとんどいないらしいが......隣の大陸には沢山暮らしていると、凛さんは教えてくれた。
ついでに地図も見せて貰えると言うので、見たら何とビックリ!そう、前世の世界地図にそっくりなのだ!
しかも、この島はまんま日本。俺の中の、転生した異世界=中世ヨーロッパという常識が崩れ去った瞬間だった......orz。
おっと!話が逸れたな......それで、そんな珍しい種族を奴隷として欲しがる上級貴族(大名)が沢山いるらしい。いつの世も、そんな輩がいるもんだなと俺は盛大に溜息をついた。
一応、この国にも亜人はいるらしい。
猪人族や狐人族などが代表例だ。
驚いたのは、凛さんも亜人らしい。
雪人族......それが凛さんの種族だ。特徴は暑さに弱い、肌が恐ろしく白い、氷魔法が得意 等々......そのまんまだなおい!!
おっと、また話が逸れたな。脱線率100%特急とは私のことだよ!
......ゴホン
スノーヒューマンは、普通は雪山の奥地に集落を作りそこに住んでいて、そして滅多に人里には降りてこない。そんな少数種族の雪人族である凛さんが、どうして商人なんかをやっているのか聞いてみると。
「ただの家出だよ」......と、寂そうに笑って誤魔化されたが、俺も深く聞こうとは思わなかった。
そんなやり取りをし終わって、ぼーっとしていると、目の前に置いてある、積荷の木箱の中から変な音がする。
ピキッ......ピキピキ、
うん。間違いなく変な音がする......耳が良くなったからか、木箱の中からでもハッキリ聞こえる。気になって恐る恐る木箱の蓋を開けると、そこにあったのは卵だった。
ニワトリの卵よりも少し大きい程度の卵。
そこから顔を出したのはネズミ......いやハムスターの様な動物だった。ただ普通のハムスターと異なるのは、その背中に生えた翼だ。
そう!竜の翼がハムスターから生えているのだ......なんとゆうアンバランス......って!?
「わひゃああああ!!!」
そんなドラゴンハムスターが、いきなり肩に飛び乗り。しかもいきなり、頰ずりをしてきたのだから驚いてひっくり返ってしまったのは仕方ないと俺は思う!
「どうしたの!......あっ」
クールで落ち着いた印象の凛さんが、珍しく少し慌てた様子で俺を覗き込んでいた。その視線の先には、
「いたたたた…......ほえ?」
「エリス、そのドラゴラット......」
凛さんが、今だに俺の肩に乗って頬擦りしている竜ハムスターを指差す。
「積荷の木箱から変な音がしたので、開けて見たらこれが......」
竜ハムスターを指差し、事情を説明する。すると凛さんは......眉間に指を当てて、深々と長い溜息をついた後、ぽつぽつ話し出した。
「それは今回の商売の目玉商品にしようと思ってた『グレー・ドラゴラット』だよ......」
え......マジ?目玉商品?!
「孵化するのが、思ってたよりずっと早かったみたいだね」
そうか、不慮の事故だった訳だ!OREWARUKUNAI!
「それで......どうします、これ?」
肩に乗ったままのそれを指差す俺。
「生まてしまったものは仕方ない......エリスに懐いている様だから、あなたが責任を持って育てて」
そうだよね~、仕方ない仕方ない......って、何ですと〜!!
「え!?なんでですか?」
某厚切りさんのネタを言いたくなる......。
「その魔物は、生まれて最初に見たものを親だと思う性質があるの」
な、なんだと......!見た目でハムスターで中身は鳥......その名は!......はぁー、いかんいかん現実逃避してしまった。それで、
「ち、ちなみに......気になるお値段は?」
そこ重要!だって俺、無一文だもんよー!みてください私の財布!逆さにしてもお金が落ちてこない優れものですよ!え、なんでかって?それは私が無一文だからです!
「大金貨1枚」
ほぅ!......で、
「すみません、通貨の基準が良く分からなくて......」
「ああ、そうだったね。この際ついでだから教えておくよ」
凛さんが言うには一番下から、
鉄貨=1円
銅貨=10円
小銀貨=100円
大銀貨=1,000円
小金貨=10,000円
大金貨=100,000円
白金貨=1,000,000円
と、なっている......やっちまったぜ、チクショー!!
当然、無一文の俺が払える額じゃない。
「ちなみに普通の家一つが、大体大金貨2枚で買える」
な、何ですと〜!つまり、俺に懐いてるこれが約小さな家一つ分あるって事か!?そんなバナ......馬鹿な〜!
俺の心の叫びは、誰にも聞こえる事なく響いていった。