その4:旅の始まり
夜明けと共に目が覚める。
周囲は薄っすらと霧に包まれていて、樹々の間から射す木漏れ日が、何とも神秘的だ。
「少し肌寒いのは季節の影響かな?」
ここは異世界なので、そもそも四季があるかどうかわからんが……。
そんな事を考えながら、昨日焼いて残してあったサバマグロ?を朝食代わりして歩き出す。
かれこれ3時間歩くと、街道らしき場所に出た。
やっと森を抜けられたーーーひとまずその事実に安堵する。
するとナイスタイミングとでも言うべきか、人が来た。どうやら商人らしい。
なんかチョ◯ボみたいな生物に、馬車?を引かせている。
立ち止まって見ていると、向こうも気づいたらしい。目の前で馬車を止めて、俺を見下ろしてくる。
「ねえ君、こんな所で何してるの?女一人でいると危険だよ」
丁寧に注告してきた人は旅装束を身にまとい、大きめの麦わら帽子を深めに被った美女だった。
今の俺と同じ真っ白で陶器のような肌、腰まで届きそうな長い黒髪をポニーテールにして束ねている。
中でも俺の気を引いたのは、その人の目と髪の色。
黒
そう、前世で見慣れた黒目黒髪の日本人に似ている容姿をしていた。
そして言葉……まんま日本語。
そこはあれか、ご都合主義ってやつか?
「どうした?私の顔がそんなに珍しいか?」
「いいえ、すみません。綺麗な目と髪だったのでつい……」
「そうか、ありがとう。君みたいな可愛い娘に言われると嬉しいよ」
そう言って少しだけ頬を染めて、微笑むお姉さん。
ヤバい……めっちゃ可愛いんですけど!
「話は戻るが、君はどうして一人でこんな所にいるんだ?」
うーん、どう答える俺。馬鹿正直に話したらきっと『頭逝っちゃてるヤバい子』と思われる事間違いなしだよ!
「えーと、森に山菜採りに来てたんですけど。気がつくと、いつの間にか迷っちゃてて……」
よし!よくこの短時間で考え出したな、凄いぞ俺!
I am great!
「そうか、大変だったんだな……良ければ私が向かってる街まで一緒に来るか?」
「良いんですか!!」
よっしゃ〜!!渡り船とは正にこの事!
「ああ、見捨てると夢見が悪いからな。それに、これも何かの縁だ。縁は大事にしろと母に言われたのでな」
フッ、笑うお姉さんの顔はどこか寂しそうだった。
気のせいか?
「さて、そうと決まれば乗ってくれ。その前に、君の名前を聞いてもいいか?いつでも君ーーーって呼ぶのもあれだからな」
名前か〜、……前世の名前じゃない方がいいよな。
今俺は完全に女の子なわけだし。
それに一人称も直さないとな〜、……流石にオレっ娘は今の自分の容姿には合わない。
「はい。わ……私の名前はエリスっていいます!」
我ながら良いネーミングセンス!……だよね?
「エリスか……いい名前だな、私の名前は凛だ。見たら分かると思うが商人をやっている。少しの間だがよろしく頼む」
「こちらこそ!よろしくお願いします……凛さん!」
こうしてお姉さん、こと凛さんとの二人旅が始まった。
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