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その33:ある姫の戦い(side桜)

遅くなってしまってすみません!


 暗い部屋をぼんやりと照らす蝋燭の優しい光り……けれども、私の頭に浮かんでくる事はどれも暗い。


 私の名は桜、桜木桜。この桜木王国の姫である―――そう、胸を張って言えたの果たしていつまでだっただろうか?


 ◼◇◼◇◼◇


 幼き日の自分は父が大好きだった……亡き母の分まで、父に愛情を求めていた。


 ―――父は完璧だった。


 政治、経済、文学、武術……と、挙げれば限りがない。それほどまでに圧倒的な才能を父は持っていた。父は私の誇りだった……そう、半年前のあの日までは―――、


「ふあぁ~……、変な時間に起きちゃった」


 あの日は武術の稽古で疲れてしまって、早く寝た記憶があります。目が覚めたときの空はまだ暗く、二度寝しようにも目が冴えてしまい、仕方がないので厠に行く途中のことでした。


「あれは……父……様?」


 この時間はまだ眠っていらっしゃるはずの父様がなぜ……気づくと、考えるより先に体が動いていました。

 父様を騙しているようで気が引けましたが、好奇心には勝てませんでした……。


(薄暗くて、湿ってて……不気味な場所……)


 隠し階段は螺旋状になっていて、壁には一定距離毎に松明が取り付けられていて、暗い階段を照らしています。


(誰かに……見られてる?)


 ここに来てからずっと誰かに見られてるような気がしますが……気のせいでしょうか?そんな自意識過剰な考えを吹き飛ばすが如く、悪夢は訪れるのでした。


 ―――ゃあ。


「……えっ?」


 僅かに聞こえた声……それも女性の……胸騒ぎが一層酷くなり、階段を下りる足も自然と速くなります。


 ―――ゃぁぁあああ。


「この声は……悲鳴……?」


 下るにつれてはっきりと聞こえてくる叫び声(悲鳴)……そしてこの螺旋階段の終着点であろう、分厚い鉄の扉……心臓の動悸が激しくなり、呼吸が乱れ、立ってる脚には力が入らなくなってガクガク震える。


 異常に重く感じる腕にありったけの力を込めて鉄の扉を開く。私の力では、鉄の扉は重く少ししか開かなかったが、内部を覗くのには充分だった。


「っ?!」


 そこに広がる光景は、まさに地獄絵だった……隙間から香る濃厚な血の匂い、全身傷だらけの少女。そして、嗜虐的な表情をした父様……あまりにショッキングな光景に、悲鳴よりも先に意識が急速に遠くなっていく。


(父様様……なぜ……?)


 その思考を最後に、私は気を失った。


 ◇◼◇◼◇


 翌朝、私は不思議な事に自室(・・)で目が覚めた。不思議と言えば、倒れたはずなのにどこも痛くない……何故だろう?


「はぁー……夢か……」


 今にして思えば、あまりにも恐ろしい悪夢だった。もしあれが現実だったら……なんて考えたくもない。


 けれど……現実は無慈悲だった、


「……っ!」


 そう……あの事が悪夢だったら、どれ程嬉しかった事だろう。

 机の上に開きっぱなしになっている日記帳が、昨夜の出来事が夢で無いことを私に突き付けてくる。


 ◼◇◼◇◼◇


 それから私は、自室に閉じ籠った。


 父様に会いたくなかった……会ってしまったら、平常心を保てる自信がない。そんな私を、周りの人は反抗期が来たと思っているようだ。


 毎日薄暗い部屋で書物を読み漁る日々……そんな中で私は一冊の本に出会った。内容は、ある国の王子が城を抜け出して世界を旅する―――といったものだった。


 私はその王子に自分を重ねて物語に没頭した。一面が砂の大地、大海原での冒険、前人未到の迷宮ダンジョン攻略……やがてその物語は、私の憧れであり夢になった。


 ―――私も城を抜け出したら……、


「私にもこんな未来が……」


 そう考えるともう止まりませんでした。

 警備の隙を突いての脱走は、綿密な計画を立てただけあり、作戦は無事成功しました。そして振り替えるとそこには、私にとっては慣れ親しんだ桜木城(わが家)が建っている……しかしこの時ばかりは、城が牢獄に思えて仕方がありませんでした。


(さて……どこに行こうかしら?)


 脱走したは良いけど、その後の事を考えなかったのはご愛嬌。


(とりあえず、人気のない裏道を通って行きましょうか……)


 前を見据え私は歩き出す。

 ありもしない輝かしい未来を想像しながら……。


 ◇◼◇◼◇


「……んっ」


(何だろうこの感触……柔らかくて、暖かくて……甘い)


 唇に伝わる優しい温もり……ずっとこうされたかったような気がする。いつまでも貪っていたくなる感触……て、


(あれ?確か私は……)


「けほ……げほ、げほ!」


 意識が覚醒した途端に、喉から空気が込み上げてくる。


「大丈夫?」


 風鈴のように透き通った綺麗な声……そこでようやく私は近くに人がいる事に気がつきました。


「あ……貴女は誰!それに、さっきの男たち……は……」


 空気が脳に行き渡っていない状態で一気に喋ったので、酸欠で倒れそうになりました……が、


「んっ……?!」


 次の瞬間私の唇は塞がれていました……雷が落ちたと錯覚するほどの衝撃が私を突き抜け、体がビクンと跳ね上がります。


(あっ……さっきの感触と同じ……て、そうじゃなくて!)


「ぷはぁ!な……何をするんですか?!私の初接吻を……」


(初めてが同性だなんて……そ、そんなのダメ!!)


 顔が燃えるように熱い……これもきっと私が自意識過剰なだけ!


「ところで、大丈夫か?」

「大丈夫なわけ!……あれ?普通に息ができる」


 不思議……そんな事を考える間もなく、


「じゃあ私はこれで」


 やけに演技がかった動きで背を向け歩き出す少女……て、何を黙って見送ってるんですの!?


「ま……待って!」


 急いで呼び止める。すると少女は足を止め私の方を向いてくれた……やけにがっかりした様子なのは何故でしょう?


「何ですか?」


 やっぱり綺麗な声……。


「あ……貴女の名前を教えて欲しいの!」


 やった!言えましたわ!

 この少女(ひと)の顔を見ると不思議と緊張してしまいますの……何故でしょう?


「名前?エリス」


 ◇◼◇◼◇


 ぴちょん……ぴちょん。

 雨漏りの音が木霊する暗い城の地下牢獄……松明の灯りがゆらゆらと周囲を照らしている。


「ここですの……」


 目の前には、無骨な造りの冷たい鉄格子があり、中にはまだ幼さの残る少女が焦点の定まらない虚ろな瞳で私の事を見つめている。


「だ……れ……?」


 掠れた声だが確かにそう聞こえた。


「私?……わ、わたしは桜……貴女は?」


 馴れない一人称に違和感を覚えるが今は置いておこう。


「い…と……な」

「いとな、イトナ……糸奈―――」


 そう……この娘が。


「行こう糸奈。この国を……いえ、国王を―――、」

「こ…く……おう……を?」


 相変わらず虚ろな瞳のまま首を傾げる糸奈。そこから少し間を置き。


救う(殺す)為に……!」












感想、評価、ブクマをよろしくお願いします!

誤字雑字の報告も大歓迎です!


◇◼◇◼◇


まいど、四葉です。

前も同じ事を言った気がしなくもありませんが……いや~、小説を書くのって難しいですね。

今回の話も少しごちゃっとした感じが……いえ、気にしたら負けですね。

次はいつ更新できるかなー……。


朗報:Twitter始めました!→https://twitter.com/indeizu?s=09


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