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その28:準備 前編

 エリスが桜木城を脱出した頃。

 王座に座ったオウカは一人の忍を、醜悪な顔つきで憎々しげに睨み付けていた。


「此度の失態を、貴殿はどう感じておる?佐助サスケよ」

「はっ!此度の脱走を許してしまったのは、私の失態でございます……。ですがそれは、王の安全を確保するためでありましてーーー」

「ほぅ……貴殿は余のせいだと申すか。では何故、部下に追えと命じなかった?」

「そ……それは」

「まぁ、良い。だが二度目は無いぞ?もしも次、同じ様な失態をしたならば……、妻と娘の命は無いと思え」


サスケは呪う……、大切な身内を守れなかった自分自身を…… 己の力不足を……。

唇を噛みしめながら答える。


「御意……」


 ◇◼◇◼◇◼


「おっ。上手に焼けました」


 満点の星空の下、パチパチと心地良い音をたてて焚き火が燃えている。火の粉が弾けては空中で消えていくのを見てると、ついつい時間を忘れて眺めていたくなる。


 そんな焚き火で、某狩ゲーではお馴染みの肉を回す機械を完全再現し。こんがり焼けた肉を片手で高々掲げているのは、もちろんエリスである。


 焼いた肉に豪快に食べている野性味溢れる姿は、本人の容姿も合わさり、何とも違和感がある。


 もうお分かりかもしれないが、今現在エリスがいる場所は王都の城壁外である。

 狙われる事が分かっていて、相手のお膝元に留まる様な馬鹿な真似はしない。

それに、自分のせいで起こる争いに周囲が巻き込まれるのを避けたいのもあったが。魔法の実験や、他人に見られたら困る物があるからだ。


 もちろん城壁の外は安全とは程遠い。

 街道の安全はある程度守られているが。逆にいえば、街道以外は盗賊や魔物が出没する危険領域なのである。

 なので当然エリスを狙い、襲ってくる魔物がいるが。全て骨の髄まで燃やし尽くされている。


 だが、ただ魔物を殺しているのではなく、魔法の実験も兼ねているのだ。その結論は、イメージと魔力。


 世間で言う初級魔法の【フレイム】も、マッチをイメージすれば小さな火に。火炎放射機をイメージすれば巨大な炎に。

 魔力を注げばそれだけ強力になる。

 それら二つを合わせる事で、より強力な魔法が完成するのである。


 俺の魔法発動までの大まかな設定は、仕様魔法のイメージ→威力(魔力量)→範囲→発動 この3つである。なお、俺の場合はこの3つを一瞬で演算できる。

 この世界の人間の場合は大体詠唱が加わるが、元地球人である俺は、ゲーム・アニメ・漫画でそこらのイメージは完璧である。


 そのため、この世界では極めて難しいとされる無詠唱魔法を、本家以上の威力で使えるのだ。


 それともう1つ。


 この世界には、知っての通り魔法や魔術がある。その力を道具に応用できないか? と考えるのは自然な事だろう。

 そんな魔法や魔術が籠められた物を『魔道具(アーティファクト』と言う。


 アーティファクトにもランクがあり。

 普通ノーマル希少級レア特質級ユニーク伝説級レジェンド古代級エンシェント神話級ゴッドの順となっている。


 どうして、いきなりアーティファクトの話をするのかと言うと。例の臨時報酬....で、アーティファクトの材料になりそうな素材を大量に入手したから、自分でも造れないか? と、思ったのがきっかけだ。

 戦の準備として、備えはあった方がいい……、備えあって憂いなし。


 そんな事を考えていると、背後から何者かが飛びかかってくるーーー、


「おっと」


 俺の【索敵魔法サーチ】の範囲に入った時点で奇襲なんて無意味だ。


余裕で回避して身構えれば、そこにいたのは某ドラ◯エでお馴染みのスライムだった。しかし妙だな……普通魔物は、敵意や殺意を持って襲ってくるのだが、このスライムからは敵意が感じられない。

 ちなみに『索敵魔法』はその名の通り、効果範囲に入った存在を感知する魔法である。


「んっ……」


 理由がわかった。

 こいつは多分、俺を襲おうとした訳でなく、逃げて来たんだ。すると、


「GYAOOOOOOOOOOOOOOーーーーー!!!」


 咆哮が聞こえた方向を見ると、此方に向かって突進してくる巨大な猪がいた。

 見た目はドス◯ァンゴを大きくした感じか……。


 スライムを見れば表情こそわからないが、恐怖と絶望が混ざったような雰囲気だ。


 さてさて、どうしたものか……でも、ちょうど肉が欲しかった所だ。

『アイテムボックス』に食品は入っているが、極力使わずに残しておきたい。

 そして何よりーーー、


「俺に敵対したな?」


 キュウを喰らって手に入れた力……『竜力』で全身を強化する。全身が赤黒いオーラに包まれる。

左目が紅く染まるのを感じながら、右手を猪に向かって突き出す。

 ドドドドと土煙を上げながら、猪が凄まじい勢いで衝突してきたが、俺は1ミリも動いていないし、ダメージもゼロである。慣性の法則もへったくれも無い力だな……。


 逆に猪は、反動で気絶したのかバタン!と、白目を剥いてその場に倒れた。


「よし」


 そして、俺は何事も無かった様に猪の解体を始めた。

 首を切り落として、血抜きをし、部位ごとに解体バラしていく。

 もちろん、前世の経験あってこそできる芸当だ。

 昔じっちゃんが、軽トラで跳ねた鹿の解体を手伝ったのを思い出すなぁ……その後、軽くトラウマになったが……。


 そうして過去を懐かしんでいると、スライムが近寄ってきた。

 いかんいかん、存在を忘れていた。

 どうやら俺と敵対する気は無いらしい。


 スライムと言えば、ちょうどやってみたい事があった。

 スライムは全ての細胞が筋肉であり脳であると、何処かのWeb小説で解説してたな。

 その話を信じるなら、このスライムを手懐け、利用できれば、俺の能力はさらに上がるだろう。


 そのためには"従魔契約"をしなくてはならない。

従魔契約とは、魔物を隷属化する契約の事を言う。

 まぁー、契約と言っても大した事じゃない。


 手っ取り早いのは、呪文を唱えて名前を付ける事だ。ただし条件がある。

 その条件は、対象が自分より弱い魔物に限られる……っと、言う事だ。

 対象が契約を受け入れなければ効果を発揮しない

 今回はその条件を満たしているから、契約は簡単だ。他にも方法があるらしいが、今はいいだろう。

 確か、.に聞いた呪文はーーー、


「我に従う道を選びし魔物よ。名を『スニル』とし、我と契りを結びたまえ。我の名はエリス、汝を従える者なりーーー従魔契約!!」


 ……その瞬間、俺とスライムの体が淡く光った。

魂と魂が繋がったような不思議な感覚……どうやら、従魔契約は成功したようだ。


「さて……疑問は残るが、これからよろしくな」


プルンと頷くスライム。

 後に、このスライム……スニルがとんでもないチートの原因になるのだが、この時の俺にそれを知るよしも無かった。




まいど、四葉です!


終わらせると言っておきながら、終わらない王都編……。

すみませんが、もうしばらくお付き合いください!

お願いします!


それと、活動報告でも言いましたが。

話のストックがあれ土曜日の18時に更新していきたいと思います。


それでは、また!

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