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とある学校の七不思議

鏡の中の私

作者: 頭 垂

とあるそれなりに真面目な少女がいた。


その少女は次の日に提出と言われていたプリントを学校の、自分の机の中に忘れてしまっていたことに気付いた。


夜の学校に行くと言うことには、少しの恐怖と罪悪感があったが、やらなければいけないと言う義務感と真面目な少女らしい責任感がそれに打ち勝ってしまった。


少女が恐る恐ると言った足取りで、夜の画工に侵入する。


入るときには特に何事もなかった。特に何事もなく、自分の教室に辿り着き、あっさりと宿題のプリントを回収することができた。


プリントを回収することができた安心感を抱きながら、廊下を歩いている。すると、ふとトイレのドアが気になった。


少女の通う学校は、四階建て。少女の教室はその三階にある。


各階に二つトイレがあるのだが、そのうちに入口側に当たる、三階の西のトイレが気になったのだ。


腕時計を確認すると、時刻は、夜の十時五十八分少し前。正確に言うのなら、十時五十七分三十秒ぐらい。


そんな時間のそこには誰もいるはずがないのだ。


だと言うのに、そのトイレの中に誰かがいるような気配がするのだ。


恐怖心と好奇心が少女の中に渦巻く。


今度も少女の好奇心が恐怖心を凌駕した。


少女が、トイレのドアを開けて中に入るが、中には誰もいない。


それも当然か。そう呟き、トイレから出ようとすると、鏡が目に入った。


その鏡の中にいた自分は、必死な表情で背後を指し示している。


もちろん少女はそんなことをしていない。鏡越しに見える背後にも特に変わった風景は映っていない。


少女はその鏡の中の自分を気持ち悪く思いながらも学校を後にする。


次の日。


少女はその話をとても仲のいい親友に話した。


「…………ってことがあったんだよ」


「えー? 嘘だー」


「本当だって」


「本当にぃ? 見間違いじゃないのぉ?」


「……そんなに言うのなら、今日も確認しに行ってやる」


「行っておいでよ」


そんな会話をしたので、少女は今日も夜の学校に忍び込んだ。


そのことを彼氏に言うと、彼氏は心配する言葉をかけてくれたが、引くわけにはいかない。これは女の意地をかけた問題なのだ。


明日は行かないことを確約させられたが。


その日も、三階の西側にあるトイレに行く。


腕時計を確認して、今が昨日と同じ時刻である十時五十八分であると言うことを確認してからトイレの中に入る。


トイレの中にある、鏡の中では今日も今日とて、昨日と変わらず必死な表情で背後を指さしている自分の姿がある。


「あなたは何を指さしているの? あなたには何が見えているの?」


そう少女は鏡の中の自分に問いかけるが、聞こえていないのか、そんな事よりも重要なことなのか、意に反さずに背後を一心不乱に指し示している。


「……意味が分からないわ」


そう言った後に時計の文字盤に視線を落とす。短針がちょうど長針と重なり、十一時になったことを教えてくれる。


十一時になった後、顔を上げて鏡を見ると、鏡の中の私は変な動きをしなくなっていた。


そのことに首をひねりながら、少女は帰路につく。


そのまた次の日。


「だから、本当にいたんだって!」


「本当に? だとしても、何処に?」


「この階の西のトイレ!」


「なら、今二人で行ってみようよ」


そう言った親友に促されて、二人で西トイレに行ってみる。


が、鏡の中には私の姿は映らない。


それを見た親友が、鏡を触ったり、いろんな角度から鏡を眺め見た後、馬鹿にしたように言った。


「いないじゃないの」


「いたんだって! 昨日の十一時ちょっと前! 十一時を過ぎた後には消えちゃうけど……。私見たもん!」


「なら、今日もう一度行ってみてよ。それで、本当にあなたがいたのなら、電話してちょうだい」


「え……でも」


私は途端に気まずくなって、口をつぐむ。


「? どうしたの?」


「……なんでもない」


「そ。なら、今夜よろしくね」


「…………うん」


そんな会話があったので、今日も結局来ることになってしまった。


帰り道で、一緒に帰っていた彼氏から「今日は行くな」、と言われた。


その場では、「うん」と答えたが、心の中で彼氏に謝った。


「今日で最後だから許してね」と。


昨日よりも、若干早く来てしまった。


腕時計は十時五十八分を指している。


その腕時計の時刻を確認してからトイレの中に入る。


鏡の中にいる自分は、自分と同じ動きをしているだけで後ろなど指ささない。


昨日までのことは本当に親友が言ったように嘘だったのか?


そう思いつつ、もう一度鏡を眺めると、私が一心不乱に私の背後を指さしている。


昨日までのことが自分の勘違いじゃないのだと確証が持てた私は親友に電話を掛ける。


『もしもし?』


「本当だったわよ! 本当に私がいたの!」


『……そうなの』


その後、二言三言話した気がするが、気分が高揚していて、覚えていられなかった。


もう一度、改めて鏡を見てみると、そこには誰も映っていない。自分の姿すらも。


首をひねりつつ少女は腕時計を確認する。腕時計の針は、今ちょうど十一時になったことを指し示していた。


それを確認した後、少女は帰るために、踵を返す。


振り返った先で少女は理解した。


鏡の中の自分が何を伝えたかったのかを。

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― 新着の感想 ―
[一言] ちょっと気になって読みました。 「…え!?続きは!?」って感じです。 幽霊とかドッペルゲンガーがいたってオチですか?
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