表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

プロローグ:魔法屋、ガトールーク

白い壁の城を高台に抱いた、ロッキンラインの城下町。


この地ロッキンレイに、ひとりの青年が暮らしていた。


ガトールーク=リストクラッサ。


これが彼の名である。


年齢は、ついこの間23になった。


彼は、年老いた神官ジェニファントとともに暮らしている。

ジェニファントは、彼の育ての親だ。

ガトールークは孤児だった。

彼がまだ赤ん坊のうちに、ジェニファントが引き取ってきたのである。


彼の容姿は、不可思議だった。

若葉色の髪に、赤紫色の瞳。

長い前髪はピンで留める。

身長は並の男と比べてとても小さく、身体も非常に華奢である。

そこに童顔が重なって、女と間違われることもしばしばだ。

確かに人型をしてはいるが、彼を初めて見た人間には、彼を異形であると考えないものはまずいない。


加えて、幼い頃から変わり者であった。

興味を持ったものは何でも拾ってきた。

ジェニファントに怒られたこともあるが、彼はへこたれない。

木の実の種、虫の死骸、怪我した小鳥、魔物の卵、

─────見つけたらとにかく教会に持ってくる。


そんな幼いある日、彼が拾ってきたのは、一冊の、光魔法の魔法書だった。

くすんだ赤色の布の表紙に、金色で何やら刺繍された、分厚い本。

ガトールークはもちろん、古代文字なんか読めなかった。

中身の意味も分からない。

しかしそれは、彼の夢になった。


いつかこの本を絶対に読むんだ。

いったいこの古そうな本には、何が書いてあるんだろう?



────そして、今に至るのである。


彼は、小さな魔法屋を営んでいる。

裏口を出てすぐ教会があり、寝るときだけ帰るのだ。

それ以外は、滅多に来ない客のために店番をしながら本を読んだり、魔法屋の地下室で魔法の練習をしている。

それにも飽きると、集めた古典の中に出てくる気になるものを探しに、小さな冒険に出たりする。


あの光魔法の書は、もう全て解読した。

既に第一言語のように古代文字を読み解くことが可能だ。


彼はこんなことばかりに、自分の時間ばかりに意識を費やしているために、同年代の友人は数少なく、もう23なのに、嫁の来手もない。


しかし彼は、そんなことはお構いなしだった。


彼は幸せだった。

好きなことに囲まれて気楽に暮らしているだけで、彼の世界は輝いて見えた。


彼の日常は、不思議に満ちていた。


また、彼自身も────────。





挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ