桜庭悠の一日(アル視点)
今回は悠の視点ではなく、アルから見た悠の話です。
学生の朝は早い。
朝の5時半にセットされた目覚ましにより、俺は意識の底から引きずり出された。
「ふぁ……」
悠が目覚ましを手探りで止め、そのまま動かなくなる。
……。
……。
寝てんじゃねぇか!
<おい、起きろ!>
<うるさいよぉ。シーナ起きてるもん>
<テメェじゃねぇよ!>
そんな会話をシーナと交わしても、悠は一向に起きる気配がない。
<あぁ……めんどくせぇ……>
俺に体があるのなら布団でも引き剥がしてやるのだが、残念ながらそれができない。
<さっさと起きろやぁ!!>
これが、俺の日課だった。
「では、始め」
教師の言葉で、一斉に生徒がプリントを裏返す。
今日は数学の小テストだったらしい。
(アル~)
開始から5分ほど。
俺の予想通り、悠が俺に助けを求めてきた。
<なんだよ。それくらい自力で解けっての>
(そこをなんとか!)
<お前が解かなきゃ意味ねぇだろ>
(アルだって私の一部だから、私の力で解いたことになるもん)
<はぁ……>
俺はため息をつくと、悠の目線を通してテスト用紙を見た。
<4番の問題は因数分解すれば解ける。7番は、図形を分解して考えるやつだな。あ、あと、2番は計算ミスしてる。-5+3がどうやったら2になんだよ、バーカ>
(うぐっ……ちょっとミスしただけじゃん)
そう言いながら、悠は俺のアドバイス通りに問題を解いていく。
何故かは分からないが、頭の中に入ってる知識量は同じはずなのに、悠よりも俺のほうが頭がいい。
まあ、頭の引き出しが俺のほうが多いってことだろうな。
なんたって俺、天才だし?
こうしてテストは終わり、また目まぐるしく授業が行なわれていく。
よくもまあ、飽きずに毎日机に向かってひたすら話を聞けるよな。
さて、シーナはずっと寝てるし、俺も寝るとしますか。
なんか先生が言ってることって、いい子守唄になるんだよな。
「────つまり幽霊ってのは、この世に未練を残した人や、突然死んで自分が死んだことが分かってない人の、思念のカタマリなんだ。だからそいつらを成仏させるためには、その未練を解消させたり、死んだことを分からせる必要がある!」
目が覚めると、部長の佐々木海人が部室にある黒板を前に、延々と語っているところだった。
どうやら今日は、幽霊を成仏させるレクチャーをしているらしい。
……そんな知識、どこで使うんだろうな。
佐々木海人は、オカルトに関してはものすごい知識量を持っている。(かといって勉強の成績はそこまでではないらしいが)
しかも一度語りだすと止まらないから、面倒くさい。
多分今日の部活動は、彼のレクチャーで終わるだろう。
藤堂春馬は相変わらずニコニコしながらその話を聞いているが、その裏でなに考えてんのか分かんねぇし、黒野瑠衣はまったく無視してタブレット端末をいじってる。
千条里香は何やら熱心にメモをとってる────と思いきや、なんと、内臓が引きずり出されて死んでいる男の絵を描いてやがった。うえぇ。何でそんなにリアルに描けるんだよ。お前いつか人殺すだろ、絶対。
そして悠はというと……今日の晩飯は何かな、などと全然関係ないことを考えていた。
まあ、せいぜい頑張れ、部長。
こうして学校が終わり、悠はいつものように家に帰ると晩飯を食べ、宿題をやり、テレビを見て、風呂に入り、布団に入った。
また明日も悠を起こすことから始まり、今日と同じことを繰り返すんだろうな。
本当に、退屈な毎日だ。
さあ、明日は何か面白いことが起こるだろうか。
そんなことを考えていたら、急激な睡魔に襲われた。
よし、もうゴチャゴチャ考えるのはやめよう。
明日が楽しいかなんて、明日にならなきゃ分からねぇんだから。