おひるね
<そろそろ体引き渡せよ~>
「やだ」
いつもの、アルとの会話。
もうこれが、日常茶飯事になってしまった。
<ちょっと借りるだけだって>
「ちょっとってどれくらいよ」
<んー、1ヶ月くらい?>
「全然ちょっとじゃないし……」
<ケチ>
「うるさい」
アルに体を引き渡すと、ろくなことがない。
今までそれで何度苦労してきたことか……。
<いいじゃねーか。俺が楽しかったんだから>
「勝手に私の思考を読むな!」
<こっちだって聞きたくねーよ!>
アルとシーナには、私の考えることが筒抜けになる。
だから変なことを考えてると、すぐに茶化される。
まあそのかわり、口を開かなくても一応会話は成立するんだけど。
なんで今は実際に口に出して喋っているのかというと、そっちのほうが疲れないからだ。
一人でいる時は、大概こうしている。
「あれ?シーナは?珍しく大人しいじゃん」
いつもだと、アルと話してたら会話に入ってくるのに。
<寝てる>
「へぇ~」
……。
……。
……ん?
「寝てる!?」
<そうだけど?>
「なんで!?」
<……え?逆になんで?>
「変でしょ!どう考えてもおかしいでしょ!」
え?なに?起きてる間に私の脳の一部が勝手に休んでるの!?
そもそも体が無いのに、寝る必要なくない!?
<お前さぁ、俺たちが一日中起きた状態でお前の頭ン中にいると思ってんの?>
思いっきり馬鹿にされたように言われた。……なんかむかつく。
「だって、アルたちに体乗っ取られる時間、そんなに長くないし」
<本体が寝てるときは俺らも意識ないけど>
「へぇ~。アルたちに体貸すと絶対寝ないから分かんない」
<だって、寝たらもったいねぇじゃん>
おかげで、戻ったときはすっごい体が重いんだけどね。
「いやぁ、15年以上生きてきて、初めて知った事実だわ」
<マジかよ……>
<ねえ、なんの話し~?>
「あ、起きた」
いつものごとく、シーナが会話にまざってきた。
「シーナ、おはよう」
<うん。おはよぉ~>
そして、またいつもの会話が戻ってきた。
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