河童
初投稿作品です。
拙い文章だとは思いますが、ご了承下さい。
ある夏の日の放課後。
私の目の前で、ある議論が交わされていた。
「だーかーらッ!実際に目撃者がいるんだって!」
「でもそれは、作り話の可能性が高いのも事実じゃないかい?」
「でも、幽霊だって現実にいるのですし……河童もいてもおかしくないのでは?」
『幽霊と、妖怪は別』
「同じようなものではないでしょうか」
ここは、清風高校の部室棟3階にある、「超常現象研究部(通称、超研)」の部室。
最上階の一番はじっこにあり、他の部活からも忘れられているこの部活には、私を含め5人が所属している。
この部活の部員達を一言であらわすのは、とっても簡単。
変人。
奇人。
はずれ者。
つまりは、そういう人たちの集まりだ。
さて、そんな変わった人たちが今、何を話しているのかというと───―
「河童は絶対いるって!」
「ただの伝承にすぎないと思うんだけどな……」
……まあ、こういうことを延々と議論しているわけです。
……ってか、
「長い!いつまで議論してるのよ!?」
そう。彼らがこの議論を始めてから、もう5日目。
正直さ、河童とかいてもいなくてもどっちでもよくない!?
自分でもよく我慢したほうだと思うよ?
この5日間、授業が終わってみんなが部室に集まると、最終下校時間までずーっと河童河童河童……。
とうとう昨日なんか、河童に『やあ』って話しかけられるシュールな夢まで見ちゃったじゃないの!
おかげで、今日は1日中寝不足状態だ。
「だってよぉ、春馬も瑠衣も譲らねえんだもん」
口をとがらせながら反論するのは、この変人だらけの部活の部長、カイト。
対して名前を呼ばれた瑠衣君は、無表情でそっぽを向いた。
春馬君の方は反面ニコニコしたままだけど、一歩も引かずに言い返す。
「妖怪は、やっぱり信憑性薄いからね」
「夢がないんだ春馬は! 幽霊と話せるくせに、河童を信じないなんて!」
「僕は、実際に見たことのあるもの以外信じないことにしてるんだ」
それって、幽霊とかオカルトを信じない人のセリフでは……?というツッコミはさておき。
春馬君は、性格的には結構普通なんだけど、「幽霊が見える」というちょっと他の人とは違う体質のおかげで、たまに普通の人と感覚がずれている時がある。
<アハハッ、それ言っちゃあ、お仕舞だろ。お前だって同じようなモンじゃねぇか>
「うっ……」
いきなり、ちょっと低めの声が私の脳内に響いた。
私の別人格その1、アルだ。
「?どしたー?」
いきなり固まった私を見て、みんなの視線が集まる。が、いつものことなので、すぐにみんな無関心になった。
いやぁ、今のは痛かったよ。
グサッときたね。
<そろそろ自分がおかしいって認めろってーの>
あーあー!なーんにも聞こえません!
<ぜってぇ聞こえてんじゃねーか!>
聞こえないったら聞こえない~♪
<うがー!! うぜぇ……!>
<アルうるさい~>
脳内喧嘩をしていたら、シーナが突然割り込んできた。
2人がギャーギャーやり始めたので、無視する。
「いいなぁ。俺も多重人格だったり、幽霊見えたりしたらなぁ~」
「あげたいぐらいだわ……」
どうしてこんなのがいいのか分からない。
そもそも、元をたどれば「私」のはずなのに、なんでこんなに性格違うんだろ……?
するといきなり、春馬君が手をパンッと叩いた。
「さて、それでは河童議論の続きを始めようか?海人」
「おう!」
「え?ちょっ……ええぇ!?」
他の2人の目も、なんか生き生きしてるように見えるのは気のせいでしょうかっ!?
ってか、絶対楽しんでるよね!? 今度、夢で河童が踊りだしたら、あなたたち責任とってくれるんですか!?
トントン
「……?」
ふいに肩を叩かれ振り向いてみると、そこには無表情のまま、タブレット端末の画面をこちらに向けてくる瑠衣君の姿があった。
『どんまい☆』
…………。
……結局この河童議論は、それから10日ほど続きましたとさ。