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清風高校3大ミステリーその1(後編)

「一言も喋らないで、高校生活って送れるものなの?」


 瑠衣君が逃げ帰り4人になった部室で、ふと私は気になったことを聞いてみた。


「意外と、なんとかなっているようですよ」


 そう答えたのは、瑠衣君と同じクラスの里香ちゃんだ。


「先生も黒野君が話さないこと分かっているので、授業中にさしたりしないです」

「すげー! 俺もこれから喋るのやめようかな……」

「今更遅いし」


 とは言っても、それって差別なんじゃ……?

 「話さないから当てない」みたいなことして、平気なのかこの学校の教師。


「でも以前、いつもの英語の先生がお休みのとき、替わりに影山先生がいらっしゃって」

「げ、影山」


 影山先生は生徒指導の先生で、授業中答えられない生徒を立たせたままにするなど、厳しいことで有名な先生である。 


「教科書の本文を、黒野君に読ませようとしたことがあります」

「それは……ピンチだね」


 春馬君があごに手を当てながら言った。


「黒野君は最初立とうとしなかったのですが、影山先生が少しイラついた声を出したので、しぶしぶ立ち上がりました」


 私を含め、3人とも興味津々で里香ちゃんの話を聞いている。

 里香ちゃんはそのまま話を進めた。


「どうなるのかとクラス全員の視線が黒野君に集まるなか、黒野君はおもむろにいつものタブレットを操作しだしました。先生は怒った表情になり、黒野君を叱ろうとした瞬間――――タブレットから、音声が流れ出しました」

「……は?」

「なんと、音声ソフトに教科書の本文を打ち込んで、タブレットに読ませたんです! 黒野君は何事もなかったかのように座り、そのまま何事もなかったかのように授業は再開されました」


 許すの?! そこ許しちゃうの?!

 本文が読めれば、人でも機械でもどっちでもいいんですか! それでいいんですか先生!


「すっげぇ……!」


 カイトが目を輝かせているけど、だからアンタは無理だって……。



「そもそもさ、瑠衣君はどうしてそこまでして声を出したがらないんだろうね」


 春馬君がポツリと呟き、みんなが「うーん」と唸り始める。


「声を出さないのではなく、出せないのではないでしょうか」

「でも、それなら普通学校に通わないんじゃないかい?」

「あ! あ! 生霊に――――」

「絶対違う」


 何でもかんでもオカルトに関係させるカイトの思考能力は、ある意味すばらしいと思う。


<絶対声を出したくない事情があるんじゃね? たとえば、メッチャ声が高いとか>


 それは……嫌かも。


<じゃあじゃあ、るいるいは実は女の子なんだよ! 声出すとばれちゃうから、出さないでいるの~!>


 アルの意見から飛躍して、シーナがとんでもないことを言い出す。

 ってかあなた瑠衣君のこと、るいるいって呼んでたんですか。


「声がすごく高いんじゃないかって、アルが」

「ああ、それはありえるかもね」


 シーナが自分の意見が公表されなかったことに抗議してるけど、無視。


 その後も何個か予想というか妄想というかが出たけど、しっくりくる理由が見つからず。


「もう、こーなったら直接明日本人に聞いてやる!」


 痺れをきらしたカイトがそう叫び、その日はお開きとなった。




 そして次の日、部室にて。


「もうお前の声聞きたいとか言わないからさー、なんで声出そうとしないのか、教えてくんない?」


 帰ろうとしていた瑠衣君をカイトが無理やり部室まで連行しこう言うと、瑠衣君は黙って端末を操作し、画面をこちらに向けてきた。

 4人の視線が集まる先にある端末に書いてあったのは、一言。


『ひ・み・つ』


 ……このときの瑠衣君のドヤ顔には、本気で殺意がわきました。 


 

ちなみに、ほとんどの先生は瑠衣君に弱みを握られているか握られるのが怖いので、授業中さそうともしないし、端末いじってても何も言いません。

パソコンが学校に持ち込めるのもこれが理由。


……本当何者なんでしょう、この人。

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