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きい、きい、と誰かが私を揺らしている。
正しくは私の横たわっている何かを。
ゆらゆらと揺らされながら、さっき見ていたのは夢なのだと気付く。
ならこれは夢の続きなのかしら?
私の横たわっているこの布団はものすごくふわふわしてどこまでも身体が沈んでゆきそうなのにとても肌触りがよくてここちよい、しかも昔一度だけ嗅いだ事のある高級な沈丁花の香りがした。
「もう、お目覚めで御座いますか?」
まだ、まだ目を開けたくない。
開けてしまえば夢は終わってしまう。このぬくい肌触りもステキな香りも。
親方にどやされてもいい、今日だけはこのままずっと寝坊していたい。
このまま目をあけてあの寒くてたまらない屋根裏部屋に戻りたくない。
「このままお目覚めにならないのでしたら、口付けてしまいますよ。」
耳元に悩ましい吐息とともにばっちり目を覚ましてしまうほどの悩殺ボイスに反射的に目をバチリと開ける。
そこはあの塗装のはげた屋根裏部屋ではなかった。
隙間風も、ネズミ達のカリカリと壁を齧る音も聞こえない。
「もうお目覚めになられましたね、私も嬉しゅう御座います。」
天井には大きな円状のステンドグラスとそこから垂らされた黒い鎖に吊られた籠状の寝台には色とりどりの刺繍の施されたクッションや絹であろう肌触りの凄いいい布団や毛布が敷き詰められて、私はその籠の中でいまのいままでまどろんでいたのだ。
そして、その籠を揺らしてる男はいまのいままであったことのないイケメンだった。
どんくらいイケメンかというと、薄い紫みを帯びた髪の前髪をさらっと右に流した長髪に、濃紺の瞳は長い睫に飾られこれだけでも十分珍しいのに、男とも女ともいえない中性的な顔立ちに、さっきの悩殺ボイス、そしてなによりもかによりも
耳がとがってて長い。
たぶんおそらくきっとまちがえなくエルフふふふふふf・・・
「あなた誰っ!?」
だが私にはこんなイケメンエルフの知り合いなんていない。
その人は私に魂まで引っこ抜きそうな笑顔でこう言った。
「貴方の犬です。」
グギューーーーーーーーーーーーーーーン!
そのとたん高らかになるラッパのように私のお腹の音が鳴り響いた。